中欧編 VI : マイケル・ジャクソン

 【10月10日】
 さて、今日も中欧を旅してもらいましょう。
 ルーマニアで書き残したことを少々。
 ここもパトカーの先導で、バスで移動。いや、実に速い。ちなみに、パトカーはフォルクスワーゲン・ヴェント。これが先頭に立ち、旧東ドイツと同じように、前に行く車を止め、横から出てくる車を押さえ、信号では反対車線に出て我々のバスをノンストップで走らせる。
 面白いことに、ルーマニアの先導者も、1カ所、道を間違えた。警察官は、どこも同じようなものらしい。

 

 

(解説)
パトカーの先導で突っ走るなんて経験は、2度とできないんだろうなあ。特権の甘さ、心地よさが懐かしい。一部の国会議員の先生方が不埒な行動にお走りになるのも、幾分かは理解できる気がするわけです。

 

 迎賓館。私の部屋は、どうやら「お付き用」だったようだ。ほかの連中の泊まった部屋はすざまじい。部屋にプールがあり、そこになんと体操用の吊り輪があったという部屋、この部屋だといわれてドアを開けると書斎。「ここで寝るのか」と思っていると、その先にさらにドアがあり、寝室が登場。さて、バス・トイレはと探すと、はるかに先に別のドア。

 「歩いても歩いても、トイレに行き着かない」

感じだったそうだ。

 

 

(解説)
私が泊まったのは、前にも書いたように、ラック3。そのお付き用の部屋となれば、迎賓館で最も貧相な部屋ということになる。だから、トイレットペーパーが堅くて不揃いだったのか?

 

 さらに、首相級が使うラック2の地下にはプール映画室鞍馬平行棒が用意された部屋もあったそうだ。いったい何に使ったのか。独裁者とは不思議なことをするものだが、ラック2は、チャウシェスクが自分の娘用に作ったともいわれる。

 

 

(解説)
吊り輪なら、「懸垂で上半身の筋肉を強固にする」という使い方(それも異様だが)が考えられるが、鞍馬や平行棒となると……
仲間内でウォッカをがぶ飲みし、平行棒の上を歩いて
「見ろ、俺の方が酒に強い!」
って競争した?
さらに勝負がつかないときは、平行棒の上で倒立し、先にゲロを吐いた方が勝負に負けて、ウォッカ1本を一気飲みする罰ゲームをしたとか?
いくらコマネチの国だからって、やり過ぎじゃあないの?!

 

 そんなわけでルーマニアを出て、ハンガリーの首都・ブダペスト。使った飛行機は、43人乗りのプロペラ機。たぶん、ルーマニアの国営航空で、世話をしてくれた若い人が、「そういえば、同じ型が昨年3月に落ちました」。若さとは、無神経の別名かもしれない。

 

 

(解説)
 そうか、このころからか。若い奴が敵に見え始めたのは……
 しかし、それにしても最近の若い奴は一体何を考えてるんだろうねえ。竹下通を歩いていると……
 惨めになるからやめましょ!

 

 実に優雅に飛び立ち、ブダペストまで、約2時間の旅。途中、食事が出る。機内食というのは評価以前の代物だが、驚いたことが2つ。

 “Tea or coffee?”

  と聞いてきたので、

  “Tea”

  と答えた。カップをよこせというから差し出すと、透明の液体がそそぎ込まれる。何のことはない、白湯を入れて、ティーバッグをよこす。
 驚くのはこれからだ。水がほしかったのでそのまま口を付けると、ぬるい! 正確にはわからないが、たぶん40度もないぬるま湯である。これで紅茶が出ると思っているのか。さらに、“Coffee”を頼んだ人へのサービスは、この白湯と、インスタントの粉末のはいったパック。

 

 

(解説)
♪お酒はぬるめの燗がいい〜肴はあぶったイカでいい…
 そういえば、肴は何にも出なかった。

 

 旧東側に来て、驚いたのは、機内で出てくる食事などに使われる食器は、すべて再利用可能なものだったこと。陶器の皿、カップに、ガラスのコップ、金属のナイフ、フォーク。「使い捨てをせず、豊富で安い労働力を使う知恵」と、感心させられた。しかし、ルーマニアだけは見事に裏切ってくれた。すべてプラスチック。訪れた国の中では最も貧しいのに、何を考えているのだろう。西側の国をまねするのが市場経済化でもなかろうに。

 

 

(解説)
金属製のナイフ、フォークは、ハイジャックをする場合の有効な武器になります。
陶器の皿、カップ、ガラスのコップは、割ってやれば武器になります。
そうか、使い捨ては安全のためだったんだ。
空の旅の安全を守る使い捨て文化、万歳!?

 

 ブダペストできいた話しだと、この使い捨ての使用済み食器を拾い集めて売る商売が成り立っているとのこと。売る商売が成り立っている以上は、誰かが金を集めて買っていることになる。でも、プラスチック製のナイフ、フォークは洗えば使えるとしても、紙製の皿やコップを、金を出して買ってなんに使うのか。

 

 

(解説)
この話を教えてくれた現地の日本人に、
「何に使うの」
と聞いたら、
「いや、そこまでは」
この様な知識のあり方を一知半解という。日常生活にも、ビジネスにもまったく役に立たない。相手にバカにされるのが落ちである。

 

 で、ブダペスト。
 ブカレストから飛んできた印象は、
 「中世から現代への飛翔」。
 ニューヨーク、ロンドン並とはいわないが、豊かな都市である。国の人口1000万人の2割、200万人が住むが、走っている車も美しく、近代的なビルが建ち、ハンガリー王国時代から残る王宮や寺院と不思議なコントラストを見せる。

 宿泊はKempinski Hotel 。マイケル・ジャクソンが、新婚旅行に使ったのだそうだ。

 「でも、その後、彼は、離婚しましたから、あまりよくないね」


と現地の女性通訳。

 

 

(解説)
ま、相手がマイケル・ジャクソンであれ、ポール・マッカートニーであれ、エリック・クラプトンであれ、お金さえ出せば同じホテルに泊まることはできるわけです。
そういえば私、先日、小泉首相とブッシュ大統領が会食した和食のお店に行きました。
味? うーん、まあこんなものかと。
料金? 日米の首脳が会食した店にしては、
「へーっ、この程度のものか」
話を戻すと、ポールさんが再来日するという噂があるようですね。ポールさんといえば、 「Freedom」という新曲を、WTCテロ後のコンサートで披露したりしていましたね。
♪We will fight
 for the right
 to live in freedom

なんて、“fight”と“right”で韻を踏んだりしてがんばってますが、この歌詞を聴いて、
「これって、John Lennonが歌った方がいいんでないかい?」
なんて思ったのは、俺だけかいな?

 

 女性通訳といえば、彼女がなかなか面白い。
 議会を説明しながら

 「金曜日の、午後は、テレビで中継されます。そのときだけ、出席率は95%。ほかの日は10%」

 「ハンガリーの人口は1000万人。400人近い国会議員は多すぎます」


 車が急ブレーキをかけると、

 「ハンガリー人は運転が下手。自分のことしか考えない」

 車の話しをすると

 「ハンガリー人は、車を洗いません」

 あそこの車はきれいじゃないかというと

 「偶然の、産物です」

 

 

(解説)
彼女、よほどハンガリーの現状に錨を感じているらしい。自分の国の恥を俺たちにそこまでさらしていいの、という気にもなるが、聞いてる俺たちにはこちらの方が面白い。おまけに、
「この通訳嬢のような国民がいるハンガリーって、なかなか面白い国じゃないか」
なんて思ってしまう。
もっとも、
「米国の企業はこうした進んだシステムを採用している。日本企業は、国際競争で一周遅れのランナーだ」
などと、自分の豊富な知識と勉強量を誇りながらわめいて、日本の経営者たちに恐怖心を植え付ける経済評論家や一部の経営者は考え物である」。
アメリカは偉い→日本は遅れている→アメリカに学べ
という論を振り回す方々を、私は「遅れてきたよこたて学者」と呼んでおる。英語(横書き)を、日本語(縦書き)に直せば学問になった時代は遙か昔のことだと考えておるからである。

 

 部屋も立派。バスとは別に、ガラスで仕切られたシャワールーム。ふつうは聖書とメモ用紙ぐらいしか入っていない机の引き出しには、ボールペン、蛍光ペン、はさみ、消しゴム、鉛筆削り、クリップ、透明テープが用意されている。すべて、ビジネスマンなら側に置いておきたいものばかり。経済改革を目指す都市、国を感じさせる。

 

 

(解説)
日本の一流ホテルはどうなっているのかな? 泊まったことがないからわからない。知っている人がいたら教えてください。

 

 そうそう、便器の高さが他の国と違う。米国、イギリス、ドイツなど、どんな国に比べても、少し高い。これは、座ってみると何とも気分が悪い。足が地に着かない感じというか。マジャール人はそれほど大きくはないのだが。

 

 

(解説)
巨人の国に流れ着いたガリバーの感覚。
ご自宅の便器の上に何かを置いて、座面を高くしていただくと、その時の俺のとまどいを体験していただける。
ただし、置いたものの据わりが悪くてウン運悪く事故が起きても、俺はいっさい責任をとらない。すべて事故自己責任で行っていただきたい。

 

 ホテルではインターネット、パソコン通信ともに、1発でつながる。これも現代国家の条件。
 ロビーには中2階があり、ピアノが置いてある。夕方になると、バイオリンとデュオで音楽を演奏していた。また、夜にはこの中2階で、テレビ局のパーティ。「業界人は、どこの国でも同じ臭いがする」とは、一行の1人の言葉。そういえば、市内をバスで走っていて、国営テレビ局の前を通りかかると、ガイドさんが

 「ここが、国営放送局です。国営だから、あまり面白くない。よくないね」

 

 

(解説)
日本の国営放送局も……、あ、あれって国営放送局じゃなかったっけ? でも、受信料義務化だの、受信料を払わない人を提訴するだの、ま、似たようなものになりつつあるが。

 

 昼食は日本レストラン。味はそこそこで、安い。鯖の塩焼き定食が900フォリントだから、約600円。うどんが650フォリントで約420円か。東京並、というより、東京よりも安い。日本食がこれほど安い国を、ほかには知らない。現地で会った日本人に

  「どうして」

  と聞くと、

  「え、そんなに安いですか。いわれてみればそうですね」

  何ともずれた返答。

 

 

(解説)
このレストラン、日本語に翻訳すると、確か「四季」という店名だった。滞在中、何度もお世話になった。

 

 夜はハンガリー料理。グンデルという、Hanako国際版にも載る有名レストランで、市内では最高とか。100年以上の歴史があり、体制改革後、米国の資本が買い取って、内装を修復、いまの形になった。ちょっとした宮殿のような建物である。
 最初は、もう一つのハンガリー料理レストランの予定だった。そのレストランは、いまだにハンガリー王国の雰囲気を残しており、音楽の生演奏もあって雰囲気は最高とか。

 

 

(解説)
突然レストランが変更されるには、それなりのばかばかしいサラリーマン哀歌があるのだが、ここは情報を出し惜しみしておく。

 

 出た料理は、前菜がフォアグラ、メインがラム。確かにうまい。ラムは3切れも出てやや多すぎる感はあったが、さすがにハンガリー帝国だ。ワインはハンガリー産。カベルネ・ソーヴィニオンを使ったもので、確かに香りは、あのブドウ独特のもの。が、いまいち深みがない。案内してくれた人にヴィンテー色ジを聞くも、答えてもらえず・・・。ま、これが2000フォリント、1200円で買えるのなら、お買い得か。

  「2000フォリントもするワインは、これぐらいです」

  おいおい、味は価格の問題とは違うのだが。

 

 

(解説)
味と価格はある程度正比例するが、絶対的に正比例するものではない。
高価なものを美味しく感じるのは、高い金を出したんだから、美味しくないはずはない、という思いこみに起因することがしばしばある。

 

 ホテルで1週間分の洗濯。久しぶりの入浴。洗い終わると、困った、干すところがない。仕方なく、床にバスタオルを敷き、そのうえに並べる。

 

 

(解説)
窮地に陥ったときに頼りになるのは、やはり知恵である。

 

 この項、続く 。

 


【初出2002年8月9日】
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