中欧編 IV : 迎賓館

 【10月8日】
 7日は、午前5時半起き。6時にラゲッジダウンして、7時にホテルを出てフランクフルト空港へ。

 ドイツの朝は遅く、8時をすぎても夜が明けない。真っ暗な中での移動。
 一方で、ドイツ人の朝は早く、真っ暗な中を職場に向かうサラリーマン、学校に向かう子どもたちが動き回る。自転車通学の子どもも多い。高校生か。
 「秋から冬にかけて、ドイツでは暗い中を出勤し、暗くなって帰宅する。陰鬱な時期」だそうだ。

 4時間ほどしか眠っておらず、空港に向かうバスの中では、ほとんどのメンバーが睡眠。だが、こちらはアウトバーンを走る車から目を離せず、起きっぱなし。時速100キロで走るバスを高速で抜いていく車も多い。目測で130キロ程度の車が多いが、時には「200キロ近く出ている」と思える車も。

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(解説)
日本の自動車メーカーに勤める中堅デザイナーの話。
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ドイツに留学したことがあるのよ。近くに住む大学教授と仲良くなった。
ある日、
「おい、ドライブに行こう」
と誘われた。注文していた新車が到着したのだという。BMWだよ。慣らし運転だ。
助手席に乗ると、すぐにアウトバーンに向かった。アウトバーンに乗ると、奴はこんなにでっかい(と両手を広げる。目測で、間隔は約30センチ)右足で、アクセルをペターッと床まで踏むんだな。時速はたちまち200キロ。アウトバーンに乗ってる間は踏みっぱなしだよ。
あんな車を作りたいよなあ。
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俺も、遅ればせながらデザイナー氏の興奮の一端を味わったわけです。ベンツやポルシェ、BMW。あこがれの車がアウトバーンを疾駆していく。もっとも、我らのバスの運転手の右足は、かかとを除けば床から離れており、従って時速100キロの安全運転に徹していたのだけれど。

 

 フランクフルト空港から2時間少々。午後1時15分、ルーマニアの首都ブカレスト着。時差が1時間。空港の周囲は見渡す限り、自然。空港ビルも建築途中で、飛行機までバスが寄ってくる。
 空港からはパトカーの先導で「迎賓館」
 町には車があふれている。ほとんどがポンコツとしか呼べない代物。洗浄もしてなく、汚いことこのうえない。よく走っているという感もする。

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(解説)
いよいよ、前回予告した「あっと驚く」特別待遇の本編です。

 

 迎賓館は、ルーマニア政府の国賓が泊まるところだが、今回は特別待遇。民間人が宿泊するのは、かつてなかったことらしい。ましてや、私のような名もなき庶民がこの施設を使うなんて空前で、おそらく絶後ではなかろうか。

 3つの建物があり、ラック1、ラック2、ラック3と呼ばれる。
 1は大統領級のための施設、
 2は首相級、
 3は議会の議長級
とのこと。
 年配の同行者は1に、そうでない参加者は2と3に泊まっているが、くじ引きで割り当てられた3の部屋でも、20畳ほどの寝室に、16畳ほどのバス、トイレルームが付く。ルームサービスを頼むにしても、電話などという野暮ったい器機は使わず、「召使い」を呼べばいい。一晩中待機している。

 いいことばかりではない。一言で言えば不便である。
 まず、インターネットやパソコン通信につなげない。
 全体の集合場所になったラック2から、部屋のあるラック3までは歩くのだが、途中に野犬がいる。

  「狂犬病のワクチンを用意してあるので、かまれたらすぐに連絡を」

  というのは、現地で世話をしてくれた人。

 

 

(解説)
狂犬病ですよ、狂犬病!えー、おせんにキャラメルでなもんだ(?)。
冗談じゃないよ! 牙をむきだした犬がさ、よだれを垂らしながらウーッてうなって噛みついてくるヤツ。
広辞苑によると
「ウイルスによる犬の伝染病。狂暴化し全身麻痺で死ぬ。咬傷から人畜にも伝染、ウイルスは中枢神経に達し、痙攣および麻痺を起こして死に至らしめる。水を飲むとき、または水を見るだけで嚥下筋の痙攣を起こすため、恐水病とも呼ばれる」
ワクチンがあるかどうか問題じゃないだろッ! そんな暇があったら野犬狩りでもしたらどうなんだ?! ライフル持ち出してねらい打つとかさ。
現に、5、6匹の犬に取り囲まれて青くなった同行者もおりました。残念なことに幸い、ワクチンを使うまでには至りませんでしたが。

 

 部屋は、電気類のスイッチがドアのそばにしかない。
 水と湯と2つのコックをひねるようになっているが、ひねっても最初はなかなか出ない。もう少し回ると、大量に出る。

 

 

(解説)
ドアのそばにしかない眠くなっても、ベッドを出てスイッチまで歩かないと夜の闇が訪れない
大量に出る出過ぎて処置に困る

 

 タイル張りのバス、トイレルームには、便器とビデ。

 話によると、年配の方々が泊まったラック1では、湯が出なかった。英語が話せるスタッフが一人しかおらず、彼を呼んで事情を話すと、技術者を呼んでくれた。彼を残すと、英語使いは自分のポジションへ。ところが技術者は英語ができず、全く意志疎通ができない。再び150メートル離れた英語使いの控え所に走り、部屋まで来てもらっても、結局湯は出ないまま。風呂にも入れず、シャワーも使えない1日を送った人もいる。

 

 

(解説)
この日は暑かった。半袖のシャツで歩いても汗ばむ陽気。それなのにシャワーも使えないとは。
残念なことに、私は、蛇口から出るお湯を求めて広いラック1の中を走り回るお年寄りの姿をこの目で見る機会に恵まれませんでした。しかし、翌朝この話を聞き、思わず、
「これまで積み重ねた悪事の報いが一気に吹き出たのに違いない」
とつぶやいてしまいました。
だって、私の部屋は水もお湯もちゃんと出たんだもの。私と同じように善行を積んでいたら、このような理不尽な目に遭うわけがないではありませんか。
彼らも、冷たい水だけのシャワーを浴びるという手はあったわけですが……。ま、年も年だから、その際は心臓麻痺のリスクを覚悟しなければならなかったでしょうね。

 

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 ブカレストの町は、猥雑なエネルギーにあふれている。日本の戦後の闇市もこうだったろうというほどの雑踏だ。ポンコツ車が走り回り、人が行き交う。赤信号でも平気で横断。だが、夜は男女の2人連れの姿も。
 商店、路店には、比較的物資が豊富。ここの様子を見て「15年前の韓国と同じ」と言った同行者もいるが、15年後、この国はどうなっていることか。かつての日本にもあった粗野な飢餓感にはあふれているが、それは時と所と人材を得ない限り、高いところに上るエネルギーに変身することはない。生まれたとき、場所で、人間の運命は大きく左右される。日本人が幸せだという意味ではないが。

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(解説)
ブカレストの街を散策した。
デパートには、商品が少ない。空間ばかりが目立ち、がらんとしたフロアが何とも寂しい。たとえてみれば、やっとDVDプレーヤーを買ったのに、それだけで財布が空になってソフトが買えないようなものである。違うかな?
我々が見た中で、街で一番きれいで流行っているレストランは、マクドナルドだった。私は日本では美食家で通り、マクドナルドで食事をすることはまずないのだが、仲間に誘われ、ここで昼食。
ブカレストでは、マクドナルドが西側文化と近代化の象徴なのだろう。客には、きれいなスーツを着こなす、エリート風の男女が目立つ。
ハンバーガーにコーラ、ポテトフライのセットで、2万レイ強。昼飯に2万とは、と腰が抜けそうになったが、日本円に換算すると、300円少々。腰は何ともなかった。

 

 寝不足のためか、午後11時には寝る。
 8日は、6時45分に起床。7時に朝食。

 この項、続く 。

 


【初出2002年7月26日】
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