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 2016年7月20日 しつこい

 といっても、拒絶しても断っても私に情欲の視線を送ってくるあなたのことではない。何ともならない痛みである。こいつ、ホントにしつこいったらありゃしない!

 まあ、多少は改善してはいるのだろう。5日前は、身体を少しでも反ると、大腿部の付け根が悲鳴をあげた。3日前はトイレで小便をするのが難儀だった。立っているだけで左大腿部の内側が痛む。目前にある水槽に手をついて身体を支える。その姿勢で左脚を患部が痛まないように曲げる。身体は前のめりだから、まあ、出るものも出にくいポーズをとらねば、排泄欲が満たせなかった。
 それに比べれば、身体も少しは反ることが出来る。トイレも、水槽に手をつけば出るものは出るようにはなった。

 が、だ。痛いのである。しつこいのだ、この痛み!

 昨日は、どう考えても

 「おれがやるしかなかんべや」

 という仕事が1件あった。よって午後でかけた。車にたどり着くまでの痛み、車を出て目的地まで歩く痛み。まあ、昨日のタイトルではないが

 「情けない」

 という格好をしなければしのげない痛みと闘いながらの仕事であった。
 情けない格好とは、まず、膝をやや曲げる。その格好で腰をやや前傾する。そして歩く。何のことはない。我等がご先祖であるお猿さんの2足歩行に限りなく近い形である。
 ああ、情けない。

 という訳で、本日は外出を控えた。何よりの薬剤は安静なのだろうという判断による。午前中は本を読み、午後は映画を見て過ごした。考えようによっては、大変にゴージャスな過ごし方である。平日なのに、仕事らしいことは何もせず、ひたすら痛みのないポーズをとり続け、趣味の読書と映画で時間をつぶす。雀の涙ほどとはいえ、このようなゴージャスな私の時間にも会社は給金を払っているのである。Thanks!

 というダラダラした治療を進めていた私に、朗報がもたらされた。

 「安堂さん、よさそうな物件が見つかりました!」

 と言ってきてくれたのは、不動産業のKさんである。桐生市の菱町に1戸建ての貸家が見つかったという。

 「見に行きましょう」

 いや、直ちに足を運びたいのはやまやまである。だけど、それはゴメン。実はこんな状態で、歩くに歩けない。申し訳ないがあなたが見てきて、手書きでいいから間取りを教えてもらえまいか。それを見て判断する。

 Kさんは夕方やってきた。見ると、4LDKの家である。ダイニングがやや狭く、リビングにテレビを設置する壁面がないという欠点はあるが、これなら何とか50インチのテレビ、オーディオシステムを含む家財道具が入り、子供たちが来ても対応できる。
 四半世紀ほど前に開発された住宅団地の一角で、築20年ほどとか。車は2台駐車できる。

 「動けるようになったら見に行く。とりあえず仮押さえしておいて」

 と御願いした。同時に、

 「動けるのは来週になりそうだから、それまでにもっと条件がいい物件を探しておいてくれるとありがたいのですが」


 と付け加えた私であった。

 どうやら桐生での引っ越し先が何となく決まったようである。あとはそこに住んで私が何をするのか、だ。
 ほんと、私に起業なんて出来るのだろうか?
 ま、そのうち結論が出る話ではあるが。


 先日書き忘れていた話を。16日に来てくれたH氏のことだ。
 H氏はテレビっ子である。いや、薄かった髪がますます薄くなり、

 「あれ、増毛剤を使っていたんじゃなかったっけ?」

 と顔を見るなり聞いた私に

 「やめちゃったよ。使っても増えないし、それに頭の皮膚がかぶれて来ちゃってさ」

 とおっしゃった方を「子」扱いするのは失礼だろうが、ま、ほかに適当な言葉を思いつかないからお許し願いたい。

 「安堂さん、よく本を読んでるね」

 と聞かれたので、

 「あなたは読まないの?」

 と聞き返したら

 「本はねえ、時間効率が悪いんだわ」

 と答えた人である。じゃあ、時間効率がいいのは? と聞くと

 「テレビに決まってるじゃない」

 とおっしゃった。NHKを中心にした教養番組、放送大学、そんなところで彼の今日の教養は出来上がっているらしい。
 もう15年ほど前の会話だ。

 かつて書いたが、彼は俊秀が集うことで知られる麻布学園のOBである。であるから、彼も日本を代表する知性の持ち主であるはずだが、その中身は、一億層白痴化のメディアとも言われたテレビであったかと、東京で働くようになるまでは「麻布学園」なるものの存在すら知らなかった私は感慨に耽ったものであった。

 そのH氏が、16日に酒を飲んでいたらおっしゃった。

 「あのさ、安堂さんがいってた塩野七生の『海の都の物語』を読み始めたんだけど、あれ、凄いね」

 はあ、あなたは本は読まないんじゃなかったっけ?

 「いや、そうだったんだけど、ふと、あんたが言ってたなあと思って読み始めたの。そしたら面白くてさ。あの。集団をまとめていく知恵の出し方って、尋常じゃないわ」

 ほーっ、あの頑なに読書をけなしていたH氏が読書の楽しさに目覚めたか。それはそれは。
 私も、多少は人様の役にたっているのかも知れない、と思ったのでここに記録しておく。

 うん、H氏にはいい本を沢山紹介してあげよう!



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