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 2015年12月15日 やっぱり

 師走になったというのに、暖かい。ためか、だれも忠臣蔵を思い出さない。新聞には1行も出てこないし(というか、私が目にしなかっただけかも知れないが)、テレビで忠臣蔵の再放送をやることもない(というか、私が見なかっただけかも知れないが)。

 ねえ、

 「最後の忠臣蔵」

 とか、

 「四十七人の刺客」

 とか、今でも見る価値のある映画はあるのにね。もっとも、四十七人の刺客は、本の方が面白かったが。

 まあ、それはそれとして、私はついに決意した。これはもう、リベンジである。リカちゃんの洋服タンス、もういちど作る!

 前回の日誌をごらんになった方は

 「ああ、やっぱり」

 と、ご自分の見通しの正しさに頷かれたことであろう。うん、私という人間は、やっぱりそういうふうにしかできていない。納得できなければ、納得できるまでやる。誰が望んだわけでもないのに、そんなふうに仕上がってしまったらしいのだ。
 もっとも、会社の仕事は

 「終われば良し」

 ではあるが。

 という私は、洋服タンスをちゃんと作る方策を考え続けた。
 木工で最も大事なのは、木を正確に切断することである。このイロハのイが、一番難しい。

 まず、太田のジョイフル本田に出かけて、どの電動工具を使ったら木を正確に切断できるのか、電動工具の係員に聞いてみた。結果残ったのは、電動の糸鋸、それも切る木を置く台があり、その木を正確に送るためのガイドがついているヤツだ。

 「これ、卓上型で大きくありません」

 価格は1万5000円。

 もうひとつは、ドイツ製の充電型・小型丸鋸だ。

 「これにガイドをつければ、正確に切れるはずです」

 うろ覚えだが、確か1万円少々ではなかったか。

 迷いつつ自宅に戻り、ネットで検索してみた。木を正確に切る方法、である。糸鋸も検索したし、丸鋸も検索した。その結果浮かび上がったのが、小型の電動丸鋸である。それもジョイフル本田で見たヤツとは違い、これは台付きで、下から丸鋸が取り付けられ、刃が台の上に出ている。切りたい木を台に乗せて刃に押しつければ切れる、というタイプだ。木を送るためのガイドもある。うん、これはプロも使っている方式の、小型版だ。これなら正確に切れるだろう。
 約1万2000円。替え刃をつけて約1万8000円

 迷った。ジョイフル本田の小型丸鋸は最初に落とし、さて、糸鋸にするか、台付きの丸鋸にするか。結論は意外なところから出てきた。それは、続きをお読みいただければおわかりいただけるはずだ。


 工具とともに必要なのが、材料っである。良い木がいる。小口が綺麗で、厚みは1p前後にしたい。
 だが、これが意外と世にないのである。
 ジョイフル本田で材料を探した結果が、あの悲惨な作品であった。だが、この地方での木材探しで頼りになるのは、ジョイフル本田を置いてない。だから、もういちど出かけた。
 今回、合板は最初から外した。木口が汚いからだ。だが、合板を除くと、一番薄い板は1.3pの桐である。えーっ、1.3p? これ、分厚すぎる。

 2階の文具、工作専門店を回った。流石にここには、良い板がある。朴の木だ。厚みは1p。理想的である。が、高い。15p幅、45pの長さで約600円。使ってみたいが、これだと、リカちゃんの洋服タンスを作るのに、材料費だけで3000円ではおさまるまい。だが、まあ、趣味の出費と考えれば、これもありか。だが……。

 決断しないまま帰宅。何とかならないかと様々な手法を考えた。


 話は、表面上、飛ぶ。そして、すぐにつながる。

 今日、あのO氏に会った。ふとひらめいた。最近では飾り立てる前置きは省くようになったが、かつては「桐生市の元有力者」と私が形容した人である。人脈は広いのではないか?

 で、聞いてみた。

 「あなた、木工をしている知りあい、いない?」

 「どうして?」

 そこで、これまでの事情をご説明申し上げた。ついては、厚みが1pほどの、合板ではない木がほしいのだが、なかなかに入手困難なこと、障子や襖を作っている職人さんなら、そんな薄い板を持っているのではないか、という推測まで話した。

 「ああ。いるよ、そんな人」

 目の前に戸があれば、とりあえず叩いてはみるものである。ご紹介いただいた方は、我が家から1分も歩くと着いてしまう近くに倉庫、作業場、事務所を持っておられた。しかも、

 現代の名工

 になられた偉人だという。
 O氏はその場で電話をしてくれた。となれば、その日のうちにとりあえずご挨拶にいくのが人の道である。
 昼食を済ませて、1分足らずの散歩でその方を訪ねた。

 「ああ、聞いてるよ。で、何したいの?」

 事情を縷々説明申し上げた。

 「で、厚みが1pほどの板が一番いいと思うのですが、そんな板、お持ちでないですか?」

 「わかった。削ってやるよ」


 え、削ってくれる? いや、最初からその厚みの板であれば、削っていただく必要はないのですが。

 「あのねえ、木ってのはもとは丸太なの。それを製材して材木にする。それにはいろいろな規格があって、必要な厚みの板がすぐに手に入る訳じゃない。だから、必要な厚みは削って出すの」

 おお、なるほど。世の中とは、そのように出来上がっているのであるか。

 「特にうちなんか、木を買ってきて、使うまでに乾燥させるからね。丸太で買うこともあれば、製材された材木を買ってくることもある。でも、十分に乾燥させないと使えないんだよ」

 あのう、削るとおっしゃると、やっぱりカンナかなんかで?

 「いや、ほら、この機械で必要な幅に切って、そうしたらこの機械に通して厚みを出すの」

 ああ、そうですか。それがプロの世界ですか。なるほど、工場にはあれこれ切削機械が並んでいる。

 「で、あんたの必要な厚みの板、作ってやるからさ。どれくらいいるのか、図面を持ってきな」

 はい、わかりました。本日はご挨拶に、とおもってお伺いしただけで、図面の用意がございませんので、改めて御願いに参ります。
 ところで、専門知識をお持ちの方にご相談したいことがあるのですが。

 「何?」

 木工の決め手は、正確な木の切断にあると思います。手引きの鋸ではなかなか正確に切れないし、丸鋸でも、正確に切るのは難しい。そこで、日曜大工用に、ガイド付きの電動糸鋸か、ガイド付きの台付き電動丸鋸を買おうか、と考えているのですが、どちらがよろしいでしょうか?

 「うーん、俺たち、そんなものは使わないけどね」

 いや、いずれも素人の日曜大工用の電動工具で、もちろん、プロの方、それも現代の名工に選ばれるような方がお使いになるものではございません。いずれにしろ、名工なんて夢の夢である素人が使って喜ぶ機械であることは重々承知しております、はい。

 「あ、そう。あのね、糸鋸は切った面が汚くなるんだわ。細い刃が上下に動くから、どうしても切削面に波ができる。それに比べたら、丸鋸の方が遥かに綺麗だよ」

 その一言で、私は決めた。テーブル付きの小型丸鋸を買う!

 ついでに聞いた。
 仕上げはどうされるんですか? 丸鋸で切っても、やっぱり木口は粗くなります。私は電動サンダーで磨くんですけど。

 「あれはダメ。だって、木口が丸くなるだろ。それじゃあ、木と木がピッタリくっつかなくなる」

 だったら……。

 「捨てる気の切れ端にサンドペーパーを貼るのよ。それで磨く」

 だって、サンドペーパーはしばらく使っているとツルツルになって使えなくなるじゃありませんか。そうなると、サンドペーパーを貼り替えるんですか?

 「捨てる。だって、ここには木に切れ端はいっぱい転がってるもん」

 なるほど。


 かくして名工の教えを受けた私は、自宅に戻るや、直ちにamazonでテーブル付き丸鋸を呼び出して、変えバチ一緒にポッチンした。明日届くことになっている。

 いやあ、しかし、現代の名工とご近所。

 「そういやあ、あんた、どこかで見たような気がするなあ」

 それはそうでございましょ。何しろご近所ですから。しかし、見覚えていただいていたなんて、この上なく光栄に存じ奉ります、はい。

 ひょっとしたらリカちゃん人形の洋服タンスをきっかけに、また素敵な友だちがひとり、できるのかも知れない。

 あ、これで私がリベンジに突き進むことは決まった。完成は、多分年明けになるはずである。
 待ってろよ、璃子。

 そういえば、夜遅くなって

 「ボス、やっと届いたよ」

 と璃子からFacetimeがあった。amazonから

 リカちゃん ドール VERYコラボ コーディネートリカちゃん

 リカちゃん キラかみ デコセット

 が届けられたのである。
 もうひとつのクリスマス・リクエスト、

 リカちゃん ドレス キラかみ ドレスセット キラデコプリンセス

 は、明日届く。
 そういえば、明日は、ボス手製の歪んだ洋服タンスも届く。

 「ママ、これ、歪んでるよ。戸が閉まらない!」

 と不満顔の璃子の顔が浮かぶ。

 璃子、待つのだ。ボスは名誉を賭けてリベンジすることにした。素敵なタンスを作るから、それまで歪んだタンスで遊んでろ!



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