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 2015年8月22日 監視社会

 最初に、前回の続きを。

 前回、私は皆様に、フランスの人口学者、エマニュエル・トッド氏を中軸筆者とする

 「グローバリズムが世界を滅ぼす」(エマニュエル・トッドなど。文春新書)

 をお薦めした。
 お薦めした私は、突然のエマニュエル・トッド読者ではない。ずいぶん前に

 「帝国以後—アメリカ・システムの崩壊」(藤原書店)

 「経済幻想」(同)

 を読んでいた。多分、新聞の書評欄で見て関心を持ち、買い求めたのだったと思う。
 それだけでなく、お薦めした本を読む前に、近刊の

 「『ドイツ帝国』が世界を破滅させる 日本人への警告 」(文春新書)

 を興味深く熟読したのである。その上でのお薦めであった。

 なのに、だ。
 あまりに強くお薦めしたからだろうか。書き終えたら、もっとエマニュエル節にひたりたくなった。つまり、もっと彼の本を読みたくなった。そこでいつものようにamazonで検索、中古になって価格が下がったものに狙いをつけて2冊買ってしまった。

 「世界像革命<家族人類学の挑戦>」「藤原書店」

 「『アメリカ覇権』という信仰」(同)

 である。新刊で買えば2冊で5000円。それを、

 「ひょっとしたら、売れ残り?」

 という真新しい中古本を2000円少々で送ってもらった。amazonの中古本のシステムは、本好きには何よりありがたい。
 というわけで、皆様が私のお薦めに沿って「グローバリズムが世界を滅ぼす」を読み進めていらっしゃる(ことを希望します)間、私はこの2冊に目を走らせることになる。
 ともに、目薬を点しながら頑張りましょう! 


 大阪で、犬畜生にも劣る殺人鬼が逮捕された。殺された2人の中学生の関係者は悲しさ、空しさに押しつぶされそうに形ながらも、心の片隅でホッとした思いをされたことだろう。改めて2人の冥福を祈る。

 で、だ。
 この間の報道の熱心な読者ではなかったが、何となく腑に落ちないところがいくつかある。

 その1。
 いくら夏休み中だとはいえ、だ。中学1年生の2人が、何故に家に帰らず、夜中に繁華街をうろついていたのか? しかも、深夜になっても、家に戻る気配はまったく見せていない。
 これ、今時の中学生なら当たり前のことなのか? 我々の時代なら、それだけで

 「不良!」

 と決めつけられていた。
 いや、私の時代だけではない。父親としての私は、自分は午前様が当たり前の自堕落な生活をしながら、でも、子どもには深夜の外出は許さなかった。中でも娘どもには、大学生になっても

 「11時までには帰ってこい」

 と厳命していた。
 いや、悪いことをするのに時間は問わない。どこかの不埒な男と、つまり私のような男と、やばい場所にしけ込んでニャンニャンするのは真っ昼間だってできる。夕食を食べたあとでも、

 「11時までに家に着けばいいから」

 というやりかただってできる。
 だから、夜11時というのはあくまでシンボルなのだ。

 「人として、子どもとしての道を踏み外すことは許さない」

 という親からのメッセージであり、親としてのである。と私は考える。
 だから、殺された2人の親御さんには心からお悔やみを申しあげながら、

 「でもねえ」

 という気持ちが消せない。あの2人、家庭で何かあったのか?

 その2。
 街頭の監視カメラに残っていた車の画像が、犯人に導いた。

 「おお、やっぱり役に立つんだ」

 といわんばかりの報道を繰り返すのはNHKである。新聞はあまり熱心に読まないのでよくわからないが、大同小異の報道ではないのか。
 しかし、だ。私はゾッとした
 いまどきの権力というのは、市民のプライベートな行動をそこまで見張っているのか。いつの間に、我々は権力者に、この場合は警察であろうが、そのような行動を認めてしまったのか? 国民総監視社会は、本当に我々の見方か? 何よりも大事な市民の自由の対極にあるのもではないか?

 「いやいや、我々はそんなことは考えておりません。今回のような極悪非道な事件が起きたときにしか役立てません。皆さんの生活を覗き見して監視しようなどという下卑た根性は持ち合わせておりません、はい」

 面と向かって問い詰めれば、権力者は恐らくそんな言い方で煙に巻くのであろう。
 だが、だ。

 何が極悪非道か、を決めるのは権力である。私やあなたではない。
 そして権力にとっては、極悪非道とは今回のような殺人事件ではない。権力に楯突くことが、権力者から見れば最も極悪非道であることは、歴史を顧みれば明白なのだ。
 市民社会でいわれる「極悪非道」な事件は、このような、いつ権力の敵になるか分からない市民たちを監視する機器を設置する絶好の言い訳を権力に与えた。

 「おお、またいい事件が起きましたねえ。これで街頭の監視カメラをもっと増やせますよ。殺人犯を逮捕できたのは監視カメラのおかげだ、ともっともっとPRなさい」

 今ごろどこかで、ニンマリしながら部下に語りかけている権力者がいるのではないか?

 国民総背番号制に

 「プライバシーの侵害だ」

 という批判の声は聴く。だが、街頭の監視カメラに

 「プライバシーの侵害だ」

 と文句をつける人はあまりいない。
 でもねえ、国民総背番号制で明るみに出るのは、主に資産ですよ。これまでいろいろな手で資産を隠して脱税してきた金持ちどもが困るのです。我々サラリーマンの資産なんて、こんな制度がなくてもすべてが明るみに出ています。預金口座を名寄せされたって、まったく困らない。すべて納税した、というか、納税させられたというか、つまり税金を納めたあとの金なので、何処をどう調べられても全く心配はないのです。

 でも、監視カメラは違う。もっと我々の暮らしの奥の奥まで権力者に把握されてしまう恐れがあります。誰だって後ろ暗いことの一つや二つはある。それをすべて掌握されてしまえば、我々は永久に権力の僕になるしかなくなるわけです。

 というような報道、どこかやらない?

 警察しか持っていない情報を、犬の餌よろしく投げ与えられて

 「特ダネ!」

 なんて、もらった情報がパンくずに過ぎないことにも気がつかずに肩で風を切っている記者さんたちは、警察の最も便利な広報マンに成り下がったのであって、特ダネ記者になったのではない。

 警察権力の本質に切り込む記事を書く記者さんこそ、特ダネ記者というのだ、と私は思いますが、最近は、そのような記者さんは払底しているのですねえ。

 はい、いつもの天の邪鬼でした。



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