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 2015年3月28日 水素

 「ボス!」

 と呼びかける声がiPhoneから飛び出したのは昨日のことである。これは瑛汰だ。まだまだ変声期には遠い瑛汰の声は、ややもすると璃子と間違えるほど甲高く、女の子っぽい。

 「おう、瑛汰か。どうした?」

 最近の瑛汰は、用事がなければ電話をかけてこない。何となくボスの声が聴きたくなった、などという情緒はなくしたようだ。これも成長である。

 「あのさ、水素って何?」

 ん? 水素?

 「水素がどうかしたのか?」

 そりゃあ、確かに水素自動車は走り出した。でも、私ですらまだ見たことがない。瑛汰だってまだのはずだ。そのほかに水素っていってもなあ。瑛汰の暮らしには登場するはずがないが……。

 「あのさ、図書館で借りてきた本を読んでたの。そしたら、水素って出てきて、瑛汰、水素って知らないから、そこがわかんなくて」

 ああ、そうか。そういう質問か。
 しかし、瑛汰はまだ小学2年生。来月からやっと3年生だ。その瑛汰に水素を説明する? さて……。

 「あのね、瑛汰。瑛汰の回りには、いろいろなものがあるだろう。そう、瑛汰もそのひとつで、お前がいま持ってるiPhoneもあるし、本もあるし、本に印刷されているインクもあるし、ご飯もおかずも、机もいすもテレビも、とにかくいろんなものがあるよね」

 「うん」

 「こんなもの、何からできてると思う?」

 「うーん」

 「みんな、いろんなパーツが組み合わさってできてるんだ。そうだな、レゴでスターウォーズのファントムを作るときに、いろんな色の、いろいろな形のパーツを組み合わせるだろう。大きいのも小さいのもある。それと同じで、瑛汰も時計も電球も水も、いろいろなパーツが組み合わさってできてるんだ。そのパーツのことを元素、という。そして、水素、ってのはその元素のひとつなんだ」

 「ふーん」


 分かったのか、瑛汰? まあ、分からなくても仕方がないが。

 「で、元素は100ぐらいある。鉄とかアルミとか、炭素とか、色々あるんだ。そして、それがいろんな組み合わせになってものができる。例えば、酸素という元素がある。2個の水素と1個の酸素がくっつくと、水になる」

 「そうなんだ」

 「そしてね、水素と酸素がくっつくと、電気ができる。ほら、水素自動車、燃料電池車ともいうが、それができたって、瑛汰も知ってるだろう? あれは、車のなかで水素と酸素をくっつけて、その時にできる電気でモーターを動かして走る自動車なんだよ」

 「……」

 「今度は逆に、水があるとする。ここに電気を通すと、水が水素と酸素に分かれるんだ。でな、水素ってのはさ酸素とすごく仲良しで、すぐにくっつこうとする。急にくっつくと爆発するんだ。だから、用心して扱わないと危ないんだよ」

 さて、小学2年生の知識レベルで、これだけの説明で水素がぼんやりとでも分かっただろうか?

  今日電話をしたら、あのあと瑛汰は元素の周期律表を見つけ出し、ノートに書き写したのだそうだ。

 「あのさ、元素って全部で118あって、水素の他に鉄とか、ヘリウムとか亜鉛とか、色々あるんだよ」

 うーん、瑛汰。旺盛な知識欲には驚くが、まだそこまでする必要はないんじゃないかとボスは思うぞ。最近は元素っていう言葉は抽象的な概念になってしまって、具体的な物質は原子、分子って呼ばれている。ま、いいか。

 同時に通知表の報告も受けた。大変成績が良かったそうだ。結構なことである。

 四日市の啓樹も通知表を報告してきた。こちらも大変結構なものであった。
 だからというわけでもなかろうが、啓樹は読みたい本のリクエストをメールしてきた。

 すでに5巻まで読んだ「ガフールの勇者たち」の続き、「西遊記」全3冊、そして「林 修の『今読みたい』日本文学講座」。ふむ、読書傾向が少し高度になってきたな。
 啓樹は、国語の読解の成績が今一歩であったらしい。なーに、こんな本を沢山読んでいれば読解力は必ず向上する。心配するにはあたらぬ。


 という若いのがあとから追いかけてくる。私も勉強せざるを得ない。
 本日、

 「こんなふうに教わりたかった! 中学数学教室」

 という本がamazonから届いた。間もなく出る高校数学編も予約済みだ。まだ目を通してはいないが、啓樹や瑛汰の質問に答えるために学習を重ねるのボスなのである。



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