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 2014年6月1日 案ずるより

 産むが易し

 とは、すべてが順調に運んだ後で実感するものである。始める前、始めてしまって悪戦苦闘を強いられている最中は、そのようなことわざが脳裏に浮かぶことは、まずない。

 昨土曜日、群馬大学理工学部の先生に紹介された院生さんは、時間通りに我が家に来てくれた。10分ほど前、

 「これから出ますので、多分10分ぐらいで着けると思います」

 という電話を寄越すあたり、なかなかわきまえた若者ではある。大学院を出た後、研究生として大学に残っているK君であった。

 自転車で到着するや、彼は早速NASの設定に取りかかった。箱から中身を取り出し、説明書に目を通している。その間、私はNASHDD取り付けた。その程度の作業なら、私も自信を持ってできる。

 「ご覧の通り、うちにはMacWinもあるけど、どっちがいい?」

 「はい、僕はWinの方が使い慣れていますので」

 ウインドウズマシンは会社からの貸与物である。みだりにソフトをインストールするなと言い渡されている。が、構うものか。

 「じゃあ、そっち使って」

 こうして、作業は始まった。

 初期設定用のソフトをCDからパソコンにインストールする。取扱説明書によると、それが無事に終われば、NASの初期設定が始まるはずである。

 「あれっ、始まりませんね」

 おいおい、早くもイエローカードかよ。

 「どうしたの?」

 「この段階でNASが見えるはずなんですけど(パソコンがネットワークに接続されたNASを認識する、ということ)、見えないんです」

 確かに、ウインドウズ機の画面には、NAS接続されていない、というメッセージが出ている。
 はりゃまあ。2台目もおかしいのかよ。

 2人して、必死になって、行方不明のNASを何とかネットワークに連れ戻す、あてどのない旅が始まった。

 「これさあ、STATUSのランプが赤と緑の点滅をしてるんだけど、一体に何?」

 「ちょっと待ってください」

 彼がネットで検索する。

 1) NASのハードドライブのフォーマット中です。
 2) NASの初期化中です。
 3) システムファームウェアの更新中です。
 4) RAID再構築が進行中です。
 5) RAIDのオンライン容量拡張が進行中です。
 6) RAIDのオンラインレベル移行が進行中です。


 「って、書いてありますね」

 我が家の場合、ハードディスクは1つしか入らないタイプだからRAIDは関係ない。

 「うーん、このハードディスク、前のNASで一時動いたから、前のNAS用の何かを記録してるんだろうか? それを消しちゃうのかなあ」

 待った。点滅は相変わらず継続する。

 「これ、3テラもあるハードディスクだから初期化にも時間がかかるのかなあ?」

 さらに待った。西瓜を食べて待った。ランプは、相変わらずの点滅である。

 「なんかおかしいね。ランプを見るかぎり、いまだに初期化を続けている。LAN接続のランプは点灯しているから、LANにはつながっているはずなのにパソコンは認識していない。ねえ、何がおかしいの?」

 「何がおかしいですかね」

 「ハードディスクが壊れてる?」

 「その恐れもあります」

 「だったら、確かめよう」


 iMacに接続してるハードディスクを取り外し、中に入っているハードディスクドライブを、NASに入れたハードディスクドライブと交換した。サイズは同じだから、ネジをはずしてネジを止めれば済む作業である。それを再びiMacに繋ぐ。

 「これでパソコンが知らん顔したらハードディスクが壊れてるんだよな」

 「そうですね」

 「おっと、このハードディスクは認識できないのでフォーマットしますか、って聞いてきたぞ。待て待て、ここでフォーマットしちゃうと、Mac用のフォーマットになっちゃう、つまりNASでは使えないフォーマットになるよね」


 「そうですね」

 「困ったな。これじゃあ、ハードディスクが無事かどうか分からないじゃないか……。あ、そうか、Macがフォーマットしますか、って聞いてくるということは、ハードディスクとしては認識してるわけだ。つまり、ハードディスクは生きてるってことだろ?」


 「はい。僕もそう思います」

 ここまで確認して、3テラのハードディスクは再びNASに戻した。

 「おかしいですね。やっぱり、パソコンはNASを認識しません」

 おいおいQNAP、これ、我が家に来た2台目だぞ。最初が不良品で、2台目も不良品か?

 「だけどおかしいよな。NASLANのランプは点灯している。つまり、NASは、自分はLANにつながっていると思っているわけだ。それなのに、LANに接続しているパソコンからは見えない。いったい何が起きてるんだ?」

 「うーん……」


 彼は、大学の先生の申し出を二つ返事で引き受けて我が家にヘルパーとして参上した助っ人のはずである。私と一緒に

 「うーん……」

 と腕を組んで考え込む立場にはない。私が遥かに及ばない知識を動員して、

 「ああ、それだったらこうしてみましょう」

 というのがヘルパーとしての務めであるはずだ。それなのに、うーん……、か?

 「君は、何を勉強してるの?」

 「はい、水質の分析が専門です」

 「なるほど。で、ITやネットワークは趣味で?」

 「いや、それほど詳しくはないんです


 …………。

 あのー、私は、君だけを頼りに今日の日を迎えたのであります。今日こそは、QNAPNASを、何とかネットワークにぶら下げようと期待に胸を膨らませていたのであります。
 ん、膨らんでいるのは私の腹回りで、胸の肉は落ちてるぞ、だって?
 それは、余計なお世話というものです。

 それが、何、ネットワークに関する知識は私と五十歩百歩? 君、それって……。

 「おお、あった、これじゃないですかね。これ、メーカーの公式サイトの情報ですよ」

 先ほどから、ネットで何やら調べていた彼が言った。パソコンの画面をのぞき込むと、なるほど。NASが認識されないときの対応策が書いてある。

 「これ、やってみましょう。これしかないです」

 その手順は次の通りである。

 1)システムをシャットダウンします。
 2)HDDを全て抜き取ります。
 3)システムの電源を入れます。(起動までに3〜5分程度かかります。)
 4)QNAP FinderからNASに接続し、クイックコンフィギュレーションを起動します。
 5)HDDを接続します。
 6)セットアップを続行します。


 続く文章に目が点になった。

 「この操作でHDD内の全てのデータが消去されます。あらかじめご了承ください」

 すでにこのハードディスクには、手持ちの音楽データがすべて入っている。総量、約350ギガ。20時間ほどかけてコピーしたものである。
 それがすべてなくなる?
 が、この際、否も応もない。やるしかない。


 「おーっ、やった! 見えましたよ、NAS。クイックコンフィグレーションができますよ。うん、おお、できた、できた」

 こうやって、新しくやってきたQNAPは、やっと正常に動き始めた。時すでに午後5時近く。3時間の作業であった。
 その後、すべて空になったこのNASのハードディスクに、楽曲データをコピーし始めたのはいうまでもない。終わったのは、今朝の7時過ぎであった。

 まあ、強力な助っ人が来てくれるはずが、力量としては私とさほど替わらぬ若者が来たわけで、多少の混乱はした。
 だが、である。
 このような作業をするとき、同伴者がいるのは実に心強い。

 一人であれば、すべて一人で考え、検索し、決断し、作業を進めねばならない。しかし同伴者がいれば、不思議なことに心が落ち着く。判断の責任の一部を同伴者に丸投げして荷物が軽くなるためだろうか? 理由はよくわからないが、とにかく心強いのである。
 
 「私、やっぱり結婚したい」

 大好きな安堂さんを諦め、どっかの馬の骨との結婚に踏み切る女性の心理とは、このようなものななのか?

 加えて、彼は実質的に役立ってくれた。NASが認識されないときの対応策をネットで見つけ出してくれたのは彼である。私一人だったら、絶対にそのページに行き着くことはなかったはずである。

 ありがとう、K君!

 というわけで、夜は彼と鰻を食べに行った。
 当初は2人で行くはずだったが、午後3時頃、

 「安堂さん、今日、明日はお暇ですか?」

 という電話が来た。前橋にいる上司からである。上司が部下である私に敬語を使うのは変だが、この上司、私の長男とそれほど年齢は違わない。社内の序列とは別に、人生の序列、長幼の序というものをわきまえているのである。

 でも、上司から土曜日に電話? 暇だといったら何か仕事が振ってくる?
 と疑いはした。しかし、仕事なら断る言い訳はいくらでもある。

 「うん、とりあえず暇。いまは忙しくしてるけど、多分、夕方までには終わるから」

 「であれば、そのう、前々から課題になっていた、桐生に行って呑む、というのをやりたいんですが、どうでしょう?」

 はあ、そういう電話であったか。単身赴任の彼、一人で週末の休暇を過ごすのが寂しくなったか。

 「うん、やろう。今日は群馬大学の院生と酒を飲むんだけど、良かったら一緒に行かない?」

 というわけで、QNAPが無事に稼働を始めたことを確認し、3人で鰻の「こんどう」に出かけた。
 院生のK君は栃木の実家に戻るとのことで食事と酒だけでバイバイし、前橋の上司とはその後、我が家でネットワークオーディオを楽しみながら酒を飲んだ。


 今朝は、コピーが終わったQNAPをネットワークプレーヤのそばに運び、無線LANの子機に繋いだハブに接続した。前回は、ここで転けた。ここで転けたNASは、その後何としても回復しせずに返品扱いとなった。まさか今回も、とは考えないが、それでも緊張に一瞬である。
 その一瞬は、何のこともなく乗り越えた。iPadからの操作も受付、午前中ずっと音楽を再生してテストした。音の途切れはない。つまり、何の問題もなく稼働している。
 加えて、前回も書いたように、何となく音がふくよかになったような気がするが、これはきちんとQNAPBUFFALOで同じ音楽を再生して聞き比べねばならぬ。即断は禁物である。

 で、桐生市の元有力者、O氏から昨日、メールが来た。

 「プレーヤー購入いたしました。来週早々到着と思います。御教授よろしくお願い申しあげます」

 これ、準備できたから、早くBUFFALONASを寄越せということなのだろう。

 うん、明日以降、いつでも引き渡せます。ただその前に、QNAPBUFFALOを、2人で聞き比べてみない? 原理的には音質が変わるはずがないので、私の気の迷いだと思うけど、それを修正するには、1人より2人の方がいいから。

 終末は毎回多忙である。今回はいつにもまして多忙な終末であった。

 

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