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 2013年8月22日 魅せられた夏

 群馬県代表、前橋育英高校が、甲子園で全国一に輝いた。
 おめでとう。
 明るい話題が少ない最近の群馬県で、久々に胸のすく思いがした。
 ありがとう。
 ともいいたい。

 恐らく、誰も想像すらしなかった優勝である。選手も、監督も、いまでも夢のような心地がしているのではないか。それほど目立たない代表校だった。
 2011年の選抜に出場した。1回戦で負けた。その程度のチームだと思われても仕方がない。それが、今年の夏の代表校になった。

 「あ、そう? ま、群馬だからね」

 私も、その程度の思いしかなかった。
 
 「それに、何よ、あの『攻撃的守備』って?」


 その思いが変わったのは、さて、甲子園でのどの試合だったろう。

 敵の打球が二遊間に転がった。二塁手が飛びついて捕球したが、体は一塁に背中を向けている。

 「振り向いて投げたら体制は崩れるし、これは間に合わない。セーフだな」

 と思った瞬間、彼は走り込んできた遊撃手にグラブトスし、遊撃手が一塁に矢のような送球をしてアウトを取った。

 「何、これ? こんな守備、見たことない。スッゲー!」

 私は、「攻撃的守備」に魅せられた。

 が、どれほど守りが堅かろうと、群馬の代表校である。3回戦の相手は横浜。

 「よくやったが、ここまでだろう」

 と高をくくっていた。ところが、7−1での勝利。

 「いくら何でも常総学院には勝てないよな」

 2点を追いかけたその試合、9回裏2死走者なしまで追いつめられながらまず、相手の失策からたちまち同点に追いついた。その勢いは衰えず、次の10回には逆転してしまった。
 神がかり的な勝利とは、こういう勝ち方をいう。
 
 「これは、優勝しちゃうんじゃないか?」

 あの勝ち方を見れば、多くの人がそう思ったに違いない。
 甲子園とは、全国の強豪校が覇を競う場である。実力が伯仲しているから、ただ強いだけではなかなか勝ち進めない。不断の努力に加えて、甲子園の炎天下で「何か」に微笑まれたチームが、実力以上の力を出して勝つ。
 今年の前橋育英は、唯一微笑みかけられたチームだった。

 おかげで私は、仕事そっちのけでテレビに釘付けになった。今日も正午前に自宅に戻り、50インチのテレビの前に座り込んだ。

 「仕事は?」

 とは、妻女殿ののご下問である。

 「何をいうか。今日のこの試合は、地元群馬にとってのビッグイベントである。これを目にせずに、客との話ができるわけがないだろう。これは、仕事を進めるために、人知れず行う努力なのである」

 人知れず行われる努力が本当に仕事に生きるのかどうか。そこに対しては責任を負うものではないことを、この場では付け加えておく。


 しかし、である。
 私、たまたま会社の意向で群馬県桐生市に住む者であるが、さて、そうでなければ今年の高校野球はどう見えたであろうか?
 生まれ故郷の福岡代表は早々と負けた。自宅のある神奈川代表、横浜高校も前橋育英に敗退した。このあたりで関心をなくしていたはずである。ましてや、前橋育英の試合に見入ることもなかったであろうし、その優勝に快哉を叫ぶこともありえなかった。

 人間とは、いまの暮らしの場に徹底的に影響される生きものであることを思い知った。

 
 優勝旗を手にした前橋育英ナインは明日夕、故郷に凱旋する予定と聞く。天気予報は雨。彼らが母校に着くころには激しい雷雨になっているかも知れない。
 しかし、どんな雨も雷も、彼らの栄光を奪い去ることはできない。

 前橋育英、本当によく闘った。

 

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