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 2013年6月18日 金の亡者

 「安愚楽(あぐら)牧場」の元経営者らが逮捕された。和牛の繁殖事業に出資しませんか? 利回りは高いでっせ、との触れ込みで4200億円を集め、破綻した会社であることは、ほとんどのメディアが取り上げているので御存知であると思う。

 一種の詐欺商法である。詐欺を働いた連中がお縄につくのは当然のことだ。
 しかし、だ。垂れ流されるニュースを目にしていて、強烈な違和感を覚えた。メディアはこぞって、この詐欺にひっかかった連中を「被害者」として取り上げたのである。堂々とテレビに登場し、

 「3200万円投資して、2200万円が戻ってきてないんですよね」(数字はいずれもいい加減)
 
 とほざくおばちゃんもいた。こいつらが被害者。

 そうかあ?

 まあ、いい。主観的には、確かに被害者なのだろう。

 だが、客観的に見れば、彼らは被害者ではない。欲に目がくらんでドツボに落ちただけの連中である。

 簡単な話である。
 私が、和牛の繁殖は利益が大きいと事業化したとする。見込み通り、やればやるほど儲かる。その時、私は出資者を募るか?
 出資してもらえば、当然のことながらお返しせねばならぬ。有利な投資だと誘ったのなら、銀行金利、株式の投資利回りを上回る利息を投資者に渡さねばならぬ。

 有能な経営者である私は、当然考える。

 「さて、事業を拡大すれば利益がうなぎ登りになるのは目に見えている。事業拡大に必要な資金をどこから調達しよう?」

 最初に考えるのは、銀行だろう。銀行から融資を受ける。約束した金利さえ払えば、あとの利益は自分のものである。
 なるほど、出資を募る手法もある。だが、必要な資金を銀行から借り入れるか、出資でまかなうかの判断は、どちらがコストが低いかである。

 「この投資は儲かりまっせ!」

 と煽って出資を募るとしても、出資者に支払わなければならない年々の利回りが、銀行金利以上であれば、私は銀行から融資を受け、儲けを独り占めする。何故に、見ず知らずの他人に、自分の事業から上がる利益を分けてやらねばならない?
 それが、資本主義のルールである。

 さて、出資者、今や被害者と自認していらっしゃる方々は、これほど自明な資本主義のルールをちらっとでも意識されたのかどうか。銀行に預けるより、株に投資するより遥かに高い利回りを約束してくれる投資、という誘い文句に、金銭欲が刺激されただけではないか?

 いや、私が出資者を募るとしたら、もうひとつのケースがある。
 銀行が貸してくれない場合だ。

 いまや銀行のステイタスもかなり落ちぶれたが、まあ、彼らもそれなりのプロである。融資した金が利益を生まない、戻ってこない、という危険があると判断すれば、融資を断る。

 断られた私はどうするか。このままでは資金繰りが行き詰まる。ここ半年を乗り越えられれば、何とかなるのに。よし、出資を募ろう。高い利回りを約束すれば、金なんていくらでも集まるはずだ。

 だが、プロである銀行がやばいと判断した事業である。私がどれほど頑張ろうと、やばいものはやばい。出資者に約束した利回りを実行するために、さらに金がいる。もう一回出資を募るか。

 こうして、泥沼への道を進む。「安愚楽(あぐら)牧場」はそうやって破綻したのであろう。

 さて、この構造に巻き込まれた連中を「被害者」と呼ぶべきか。

 普通の人は、濡れ手で粟の話が世の中に存在するとは思わない。金が欲しければ、額に汗して働くか、リスクを覚悟で一発勝負に出るか、どちらかしかない、という健康な判断力を持っている。エアコンの効いた部屋で、電話一本で金が儲かるなんて、誰も信じていない。
 「安愚楽(あぐら)牧場」に投資した方々は、そうした健康な判断力を金銭欲のためになくしてしまった方々である。
 それって、我々が「被害者」と認定しなければならない人々なのか?

 NHKのニュースを見ていて唖然とした。
 どっかの弁護士が中心になって被害者連盟みたいなものをがあるらしい。そこまではいい。「安愚楽(あぐら)牧場」に被害の補填を求めるのも、理の当然である。が、この弁護士さんはおっしゃった。

 「野放しにした国の責任も追及したい」

 ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ。もし、国に責任があるとしたら、それは金銭で賠償されることになるが、その時使われる「国の金」というのは、我々納税者が納めた税金だぞ!

 欲の皮が突っ張った連中が、資本主義のルールを無視した儲け話に飛び乗ってドツボに落ちた。奴らをドツボから引き上げるのに、俺たちの税金を使う?

 それって、当代最高のジョークじゃない?
 うん、弁護士なんてろくな連中ではない。金の臭い、名声の臭いをかぎつけてしゃしゃり出てくる世間知らずである。
 多分、そうでない弁護士さんもいらっしゃる、いや、いていただきたいと思うが。


 四日市の啓樹からハガキが来た。

 ボスへ
 このあいだは、来てくれて、ありがとう。短い時間だったけど。とっても楽しかったよ。ひ行きも、うまくとべるといいです。
 電子回路をつくるのも、たのしみです。夏休みに会うのがたのしみです。だから、それまでに体に気をつけて、お仕事がんばってね。ぼくもべん強をがんばります。


 いい手紙である。すぐに、私も返書をしたためたのはいうまでもない。

 啓樹、夏休みにじっくり遊ぼうな。

 

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