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 2013年3月18日 悪貨は良貨を

 駆逐する

 とは、古人の教えである。
 もともとは、浪費、乱費を尽くした権力者が金に困り、金の含有量を減らした新しい貨幣、つまり金の含有量が少ない悪貨を流通させると、庶民はしたたかである。金がたっぷり含まれたそれまでの貨幣、つまり良貨をタンスにしまい込んでしまう。かくして、世には悪貨しか残らないことを言い表したものである。
 それが転じて、つまらないものがいいものを市場から駆逐してしまう現象を指すようになった。

 ビデオデッキの世界で、誰がどう見ても、画質も機能も優れていたベータが、遥かに画質の劣るVHSに敗退し、市場からなくなったようなものだ。

 亡くなった桝谷英哉さん(ご存じない方は、「音らかす」をお読みください)がこんなことを言ったことがある。

 「安堂さん、どっちがいいかなんて、簡単に見分けつきますんや。ベータとVHSのテープを2本ずつ用意しなはれ。まず、1本目のテープに何かを録画しま。ほいで、その1本目のテープから2本目のテープにダビングしますんや。ほれがすんだら、2本目から今度は1本目にダビングしま。ほないして、何回目のダビングで画像が崩れてくるかを見るんや。VHSは5、6回で、ボケボケになりま。ほやけど、ベータやったら、10回ダビングを繰り返しても、最初の画像とほとんど見分けがつきまへんわ。性能はベータのほうが遥かによかったのに、なんでベータが負けるんでっしゃろ。世の中、アホばっかしですわ」

 ちなみに、本当かどうかは不明だが、VHSがベータに勝ったのは、家電販売店がVHSデッキを買った客にポルノビデオをプレゼントしたからだといわれる。
 ああ、目先の、触りもできない裸に狂う男ども。買うビデオデッキの機能も画質も無視して、他人が行うイレポンダシポンに狂う。そんなもん、自分でやらなきゃ、いいも悪いもわからないのに。
 日本の、世界の、哀しい現実である。

 デッキはいい物を買って、ソフトは別に買う、ぐらいの知恵はなかったのか?
 確かに、ポルノビデオを買うのは勇気がいる行為かもしれないが……。

 あのとき、勝ち組はビクターであり、松下(現パナソニック)であり、負け組はソニーであった。
 今度は、そのパナソニックが負け組になった。

 「パナソニック、プラズマテレビから撤退」

 と朝刊で報じたのは日本経済新聞である。ほかの新聞は夕刊で追いかけた。

 いまや、プラズマテレビを作り続けているのはパナソニックだけである。その市場占有率は10%前後らしい。液晶テレビに圧倒されている。
 
 我が家のテレビはパナソニックのプラズマである。家電販売店の店頭で見ていただきたい。どこからどう見ても画質はプラズマのほうが遥かに上である。動きへの追随生だけではない。発色、黒の沈み方、くっきりしながら目が疲れない映像。
 それまでのソニー製のテレビが寿命を迎えたとき、私は迷わずパナソニックのプラズマテレビを購入した。

 無論、プラズマも万能ではない。電気代が割高、最初は慎重に使わないと、画面に焼き付きができる、など、欠点の指摘はあり、十分に承知している。しかし、映画をこよなく愛する私にしてみれば、プラズマの画質は、そんな欠陥を補って余りあるものであった。
 それが、なくなる。どうする?

 といっても、我が家のテレビは、まだ買って2、3年である。最新機種に買い換える時期ではない。しかし、買い換え時期が来ると、もうプラズマテレビは市場にない……。どうする?

 さて、プラズマは液晶の何に負けたのか。やっぱり、価格競争か? 
 
 悪貨が良貨を駆逐する、とまではいいたくないが、何とも哀しいプラズマの末期ではある。


 朝、横浜の瑛汰から電話があった。

 「ボス、いまから卒園式だからね」

 今日、瑛汰が幼稚園を卒業した。あとで、卒園式の写真も、私のiPhoneに送られてきた。来月からはピッカピカの小学1年生である。
 
 そうか、瑛汰は幼稚園を卒業したか。瑛汰がそんなになる年齢に、私はなったか

 23日土曜日、瑛汰、璃子、それに2人の母親である私の次女が、我が家に来る。瑛汰は、ドラえもんを見に、映画館に行きたいそうだ。璃子も連れて行こうと思うが、静かに映画を見ていられるかな?

 

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