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 2012年6月14日 決断

 桐生市で、いちばん有名な女性市議が、とうとう首を切られるらしい。
 あの、

 「献血の車が止まっているけど、放射能汚染地域に住む人の血って、ほしいですか? 」

 
というツイッターへの書き込みで、市議会に批判が殺到した。

 「こんなとんでもない市議がいるのに、市議会は何もできないのか!」

 というお叱りの声である。前々から、この女性市議を苦々しく思っていたほかの議員さんたちは、全国からの声に尻を押されるようにして決起した。その結果が、

 「庭山由紀議員に対する除名を求める懲罰動議」

 である。この動議が議会で可決されれば、庭山議員は議員資格を失う。ま、失業するわけである。で、可決に必要な票数は、定数が22の桐生市議会では、16。動議に署名した議員が17人いるとのことだから、どう見ても庭山議員は首を切られる。早ければ20日のことだそうだ。

 で、新聞をよく読んだり、知人に話を聞いたりして調べてみた。
 何でも、、庭山議員が責任を問われるのは、大きく見て2つある。

 一つは、とある農協の組合長をとらまえて、

 「犯罪者」

 と決めつけてツイッターで発信した。議会運営委員会で、そのような発言をしたことを認めたそうだ。
 この農協の組合長さんは、地元の農産物から国の基準を上回る放射線量出ちゃって出荷ができなかったとき、

 「どうせ売れないんだから、欲しい人はただでもって行っていいよ」

 って、農産物を配ったのだそうである。これが、庭山おばさんにかかると、毒物を人の口に入れたのだから犯罪者だということになる。

 2つ目は、黒保根地区でできる農産物を

 「毒物」

 とネット上で決めつけ、議会運営委員会の席上でも同様の発言をしたことだ。放射性物質が付着した農産物は毒物である、というのが庭山おばさんの論理である。

 以上2点が、議会の品位を甚だしく傷つけた、のだそうだ。そういえば、そもそも議会に品位なんてあったんだっけ、という問題には、テレビも新聞も触れていなかった。全員がスーツとネクタイで議論するからって、お役人が書いてくれた原稿を棒読みするからって品位があることにはならないと思うのだが。


 2つとも、確かに穏やかな表現ではない。国の基準を多少上回る農産物を、欲しい人にあげちゃったのが犯罪なのか。どっちみち、人間は7000ベクレル前後の放射性物質を、いつも体の中に持っている。毎日食べる食事の中には必ず放射性物質が入っているのである。つまり、我々は毎日、幾ばくかのの放射性物質を口から取り入れている生きものである。ある日、普段よりやや多めの放射性物質を食べたら、懸念しなければならないほど健康障害の恐れがあるのか。
 私はないと思う。だって、毎日ただでもらった農産物を食べ続けるはずはないのだから。

 放射性物質が付着した農産物は毒物か。これも同じ論理で疑わしいところである。

 確かに、福島原発の事故で、我々が浴びる放射線量は増した。誰しも、多少は薄気味悪く思い、できるだけ放射性物質がくっついたものを避けたいとは思う。
 だが、だからといって、「犯罪者」「毒物」という表現が相応しいかとなると、首をひねってしまう。自らの主張をより印象づけるため、激しい言葉を使ってしまったのだろうとは思うが、それでも、公にたいして発信する場合は、一定の制約があるはずだ。しかも、市会議員という公職にあればなおさらのことである。

 庭山おばさんはやり過ぎた、と私は思う。で、庭山おばさんが市議の座を失うことには、心から賛成である。


 と書きながら、でも、もう一方では

 「でも、除名か?」

 と考え込んでしまう自分もいる。
 問題にされているのは、彼女の発言である。その発言を捕らえて、

 「議会の品位を汚した」

 と議員さんだけで決めていいものなのか。
 
 私は言葉狩りが嫌いである。めくら蛇に怖じず、片手落ち、などの表現は、障害者に対する差別として、現在は使用禁止状態である。でも、言葉を禁ずることで実態がよくなるのか? むしろ、言葉を刈ることは、現実にある差別を隠蔽するだけのことではないか?
 同じようなことを、桐生市議会の今回の騒動に感じる。
 
 それに、庭山の首を取るって意気盛んな市議連中だって、一人一人見回せばろくな議員はいないでないか。そんな人たちに、一人の議員を血祭りに上げる権限を与えていいのか?

 
 庭山おばさんが市議でなくなることには賛成なのに、議会が首を切ることには抵抗があるとすれば、では、どうすればよかったのか?

 リコール運動を起こして欲しかった。有権者全体に、庭山おばさんが市議として相応しいかどうかを問いかけて欲しかった。
 5年前の初当選し、一貫してお騒がせ議員であり続けた庭山おばさんを、市民は

 「ま、それでもほかの議員よりまし」

 と昨春の選挙でも当選させた。が、最近の言動については

 「いくら何でも」

 と眉をしかめる人が多い。であれば、この機を捕らえて、有権者全体に、

 「庭山おばさんを市議にしといていいの?」

 と問いかけるべきであった。

 リコールが成立するには、有権者の3分の1の署名がいる。桐生市では約3万5000人である。これだけの署名を集めるのは難事業だ。が、議員の資格を有権者に問いかけるのは、民主主義の原則であるはずだ。

 議会内で首を切ればいいと考えた市議諸君が、3万5000人の署名を集める汗を流す努力をサボったのではないか? 安易な手段を執ることで、禍根を将来に残したのではないか?

 除名が決まれば、庭山おばさんは恐らく、裁判に訴えるのだろう。
 いずれにしても、しばらくの間、桐生は全国民の注目を集めることになる。

 

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