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 2011年10月28日 ふと

 思い立って、事務室の模様替えをした。
 いや、ふと思い立たされた、と表現するほうが正確である。

 事務所に設置してたあったファックス・コピー・プリンター複合機を入れ替える、と会社の担当者が連絡してきたのは、かれこれ1ヶ月ほど前のことだ。より小さい複合機にするという。小さくなるだけではなく、新しい機械は、送られてきたファックスをPDFファイルにし、パソコンあてにメールする。パソコンに来たメールは携帯電話に転送するように設定してあるから、いつでもどこでも、送られてきたファックスを読むことができる。1人職場を支える、というのが会社の主張である。
 
 えーっ、そんなにファックス読みたくないよ。たいした情報は来ないし。無駄、無駄。と私は思うのだが、会社に巣くう官僚どもはそうは思わないらしい。

 それって、経費削減の一環じゃない? 大きくて威風堂々としたこれまでの複合機より、きっとランニング後ストが安いんだろ、きっと。

 と私は推測したが、やっぱりそうだった。これまでの複合機はレーザーだったが、新しいのはインクジェットである。カラー印刷ができるからまあいいか、と思っていたら、会社の方針でカラー印刷は認めないらしい。黒のインクは会社の経費で落ちるが、カラーインクは落ちないのだそうだ。
 せこい

 カラー印刷をさせないのなら、最初からモノクロ機を入れればいいと思うのだが、このご時世、モノクロ機なんてどこにもない。
 我が社は世の流れに逆らうのである。

 まあ、いまの経営者、その顔色をうかがう内務官僚の発想とはその程度のものだとはつとに理解している。したがって、それに声を大にして異を唱える気力は、私にはない。

 これをきっかけに、事務室の模様替えを思い立った。原因は2つである。

 ひとつは、複合機が小さくなったことだ。大きい複合機は、そこにデンと鎮座しいてればよかった。ところが、小さくなった複合機はそうはいかない。身の丈は、従来の7分の1ほどである。床にそのまま置いたのでは、はなはだ作業がしにくい。

 「置き台はないの?」

 会社の担当者に聞いた。

 「そちらで買ってください」

 と返事が来た。その返事には、新しく来るチビ複合機のサイズは何も書いてなかった。おいおい、どんなサイズの置き台を買えばいいんだ? それにね、こっちは田舎で、ちゃんとフィットした置き台がどこで売ってるか、よく判らんのだわ。

 仕方なく、チビ複合機が来るのを待った。やってきたのは、先週末である。

 大きな複合機が運び出され、小さな複合機が運び込まれた。ブラザー製である。床に置くわけにも行かないので、とりあえずスチール製の棚の上に置いた。それはいい。

 やってきたお兄ちゃんが電話線とつなぎ、とりあえずファックスとして正常に作動することを確認した。次はプリンターとしての動作確認である。

 USB接続で使っていただきますので」

 まあ、USB接続であろうと、LAN接続であろうと、動いてくれれば私はどうでもいい。

 「では、申し訳ありませんが、何かプリントしていただけますか?」

 いわれたことには唯々諾々と従うのは私の常である。私は生来、素直ないい子ちゃんなのだ。メールを開いてプリントボタンを押した。
 待った。さらに、待った。待てども待てども、このチビ複合機はうんともすんとも言わなかった。

 「出てこないね」

 「おかしいな」


 兄ちゃんは、接続を確認した。

 「もう一度お願いします」

 チビ君は、やっぱりサボり続けた。チビって、怠け者なのか? と、身長181.5cmの私が言えば嫌みになることは重々承知しながら、やっぱりそういってしまう。

 あれこれ試していた兄ちゃんがいった。

 「USBケーブルが短いと、ちゃんとプリントできます。この部屋、ケーブルを引き回してあるので長すぎるんだと思います」

 おいおい、それはないだろ?
 まず、これまでの大型複合機では何の問題もなくプリントできた。
 長すぎるって、ケーブルを継ぎ足しているわけではない。せいぜい5mぐらいのケーブルなのだ。

 「あなたの話、私には理解できないんだけど。おたくの機械、おかしくない?」

 すったもんだの末、LAN接続で動かすことにした。我が家には光回線は入っておらず、ADSLでネットにつないでいる。その際、セキュリティを確保するとのお題目で、VPN接続を使う。お兄ちゃんは

 「VPNだと、うまくプリントできるかどうか判らないんですよね。うまくいかなかったら、VPNを切っていただけますか。そうすればプリントは確実にできますから」

 とバカなことをいう。プリントするためにVPNを切り、プリントが終わったら再びVPN接続する。そんな面倒臭いことを私がやるとでも思っているのか? 君は、人を見る目が甘いなあ。

 といいながらプリントすると、今度は上手くいった。

 「ご苦労さん」

 と、その日は土産を持たせて送り出した。
 
 ところが、なのだ。数日してプリントすると、パソコンから送り出されたプリントデータが、途中までしかプリンターに届いていないという事故が起きた。VPN接続を切ってやると、正常にプリントする。これでは使えない。
 となると、USB接続で動かすしかない。
 となると、パソコンとチビ複合機を近づけなければならない。近づけるには、机とプリンターの設置場所を見直さなければならない。

 という次第が2つ目の理由である。別に、今日でなければならない理由は何一つなかったが、何故か今日、ふとその気になってしまった。


 これまで、四角い部屋の真ん中に机が向かい合って設置されていた。非常に効率の悪い設置法である、とは、ずいぶん前から考えていた。なにしろ、歩くスペースがない。椅子をどけないと目的地にたどり着かない。

 机は西側の窓に向けて2つ並べる。それが今回の基本構想である。そうすれば、あちこちに散らばっていた空間がひとつにまとまり、部屋が広く使える。

 ということで、朝から行動を開始した。
 太田市のジョイフルホンダまで出かけて、チビ複合機の置き台を探した。2万円ほどで手に入った。ついでに、6口のテーブルタップを3つ、配線を隠すカバーなどを購入した。

 子供のころであれば、部屋の模様替えは机の位置を変え、本棚を別の場所に移せばそれですんだ。ところが、ハイテク時代の現代の模様替えはケーブルとの戦いである。
 便利になったのかどうか。

 電話回線、ADSLのライン、モデムとの接続、モデムとパソコンの接続、パソコンとLANの接続……。数限りなくコードが登場する。

 「あれ、電話線が短すぎるよ。USBケーブルも、もう少し長くないと使えない」

 作業の途中で気がつく。電気店まで車を走らせる。戻って接続を終え、動作を確認し……。

 「電話の子機がない。どこに行った?」

 探しても探しても出てこない。メーカーのサービスセンターに電話をし、行方不明の子機の探し方を教わる。それを実行する。どこかで子機が声を上げた。どこだ? 俺は右の耳が難聴だから、音で場所を割り出すのは苦手なんだよ……。

 「なんで、こんなところに?」

 子機が、エレキギターのケースのポケットから見つかる。

 「こっちの電話、おかしいんだけど」

 別回線の電話がつながらない。発信はできない。受信もしない。電源オフにしていたからどこか狂ったか?
 調べること10数分。

 「判った。配線するのを忘れていた

 ドジも、ここまで来ると何やら可愛らしい。
 作業が一段落したのは午後6時過ぎ。長い1日で、腰が微妙に危険信号を送ってくる。

 やばいか?

 遅くなったこともあり、今日はギター練習なし体力トレーニングも取りやめた。会社の内務官僚の思いつきから始まった複合機の入れ替え。被害は甚大である。
 ま、メリットがないわけではない。ギターを練習するスペースが広がった。これで、家具にMartinをぶつける心配をせずにギターが弾ける!

 明日は、チビ複合機をLANにつないでやらねばならない。つながないとPDFファイルをメール送信できないらしく、先ほどから間欠的に悲鳴をあげている。

 チビ複合機よ、一晩ぐらい悲鳴をあげ続ければいい。明日は助けてやるから。
 実情を明かせば、体力も気力も今日の分は使い果たし、助けたくても助けられないのだ。

 叫び続けよ、チビ!

 

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