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 2011年5月11日 因果は巡る

 「事件らかす #3 安堂礼人、交通事故に遭う」

 をご記憶だろうか? ご記憶でない方は、是非再読していただきたい。
 無謀にも赤信号を無視して交差点に進入した車に、私の車がぶつかってしまった事故である。おかげで、あと1回ローンを支払えば完璧に私のものになっていた車が大破して走行不可能となり、廃車になった。


 「ごめんなさい。次の信号に気をとられて、この信号を見ていませんでした

 おいおい、そりゃあねえだろう


 
とは、その時書いたことである。

 が、である。因果は巡るというか、本日、私が

 「おい、そりゃあねえだろう」

 といわれる立場になってしまった。


 午後2時を少し回っていた。自宅を出た私は、目的地に向かって車を走らせていた。

 「こちらの方が近道では?」

 と思って進んでいたのだが、いつの間にか、これまで1回だけしか通ったことのない道に出た。

 「あれ、この道、どこに出るんだっけ? 真っ直ぐ行っていいんだっけ? 途中で右に曲がるんだっけ?」

 頭の中で、そんな問いが次々と産まれていた。その時、信号のない交差点にさしかかった。頭の中で沸き起こる問いに答えを見つけようと脳細胞を働かせていた私は、あろうことか、交差点の手前で一旦停止も減速もせず、そのまま進んでしまったのである。

 交差点に入ってすぐ、

 「いかん!」

 と思った。交差点では一旦停止をする。止まらないまでも、減速をして安全を確かめる。それはドライバーの務めである。
 その務めを怠ったことに、
怠った直後に気がついたのである。

 足を、ブレーキにかけたはずだ。その時、車に衝撃を感じた。
 ドン! という音とともに、車が勝手にUターンをした。ドリフト、といえば格好いいのかも知れないが、実態はそれほど格好いいものではない。私の車は、完全に180度回転して止まった。

 何事が起きたのか、は、賢明な読者にはすでにおわかりのはずである。不幸なことに、私の車が交差点を通り過ぎようとした瞬間を狙ったように、この交差点に入ってきた車があったのである。
 右手から来た軽自動車が、私の車の右後部ドアにぶつかった。

 そう、「事件らかす #3 安堂礼人、交通事故に遭う」を、
全く反対の立場で再現してしまったのである。不当に交差点に進入したのが私。不当に侵入した車に衝突させられたのが、可愛そうな軽自動車であった。

 私の車、と書いてきたが、実は私の車は車検中で、乗っていたのは、その工場から借りた代車だった。15、6年は断ったであろうというゴルフである。ひょっとしたら、私の注意力が散漫になったのは、乗り慣れない車のせいもあるのではないか、と考えないこともないが、それは弁解調が強すぎる。なんといっても、非は私にある。

 幸い、双方とも怪我はなかった。すぐに保険会社に連絡、その指示で警察にも電話をした。

 「事故を起こしちゃったんだけど」

 「ああ、そうですか。で、怪我は?」

 「双方ともないようです」

 「あ、そうですか。実はね、いま、みんな出払ってるんですよ。怪我がなかったら、警察まで来てくれますか?」

 「えっ、現場検証はしないの?」

 「いや、やってもいいんだけど、人がいなくてね。どうしても、っていうことなら、いま、事故現場に行っているものが帰ってきたらそちらに向かわせますが、いつになるか分かりませんが。まあ、こちらに来ていただければ10分ほどで終わりますから」


 いつになるか分からぬ事故処理班を待つほど時間が有り余っているわけでもない。

 「分かりました。うかがいます」

 事故処理は、本当に10分で終わった。警察はいま、恐らく行革で人手が慢性的に不足し、物損事故などに割く人員がいないのである。
 まあ、それで世の中が回っていくのなら、それはそれでよいことだ。

 あとの処理は保険会社に任せた。私が乗っていたゴルフの修理代も、保険金でまかなわれる。それでも、

 「申し訳ありません」

 と車検を頼んでいた工場に頭を下げたのはいうまでもない。


 一段落して、

 「でも、なぜ?」

 と考えてみた。
 車を運転しながら何かを考えるというのは、常日頃のことである。時には、誰もいないのをいいことに、CDにあわせて歌うことだってある。
 それでも、赤信号では止まり、信号のない交差点は注意しながら通り過ぎてきた。それなのに、今日に限って、なぜ?

 ねえ、考え事をしていたといっても、愛しい女の幻影を追いかけていたわけでもなければ、難しい仕事の打開策を探っていたわけでもない。この道、どこに出るんだっけ? と考えていただけなのだ。
 なのに、なぜ?


 
老化だよ。お前さんの頭は、もうマルチで情報を処理するほどの能力を失っているのだよ」

 と言う声が聞こえてきた。
 その声に向かって、

 「俺をなめてるのか? ふざけるんじゃない!」

 と一喝できない自分がもどかしいばかりである。

 明日は、朝から前橋に行く。
 安全運転を心がけねば。

 

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