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 2010年10月20日 おいおい

 「安堂さん、お願いがあるんですが」

 同業他社の若い衆が、私の顔を見るなり、おずおずと切り出した。

 「ん? 俺にできることか?」

 ま、私にできないことなら頼みはしまい。

 「はい、僕たちも仕事をちゃんとやって行くには、何というか、女性を含めた同年配の人たちと意見交換をしなくちゃいけないなあ、と若い連中と意見が一致しまして」

 ま、それはそうだろう。人が成長するには、他人と話すか、本を読むか、しかないからなあ。世の中、男と女しかいない。異性と意見を交わすのも大事だ。

 「それで、先日、安堂さんと一緒だった催しで会った女性がいましたよねえ。あの人を中心に、私ら若い者と意見交換の場を作ってもらえるとありがたいのですが」

 その女性、私の知り合いである。こちらの知人と酒を酌み交わしたとき、その女性も同席して知り合った。こいつ、どうやら、彼女に関心があるらしい。要は、一緒に飲みたいということか。

 「俺は、必要な相手とは自分で酒を飲む。彼女とも飲む必要があれば、あるいは飲みたくなれば飲む。だけど、いまは関心がない。君が必要だと思うのなら、自分でやれば?」

 当然の反応である。欲しいものは自分で取りに行く。それが男の生きる道であろう。

 「いや、まあ、そうなんですが、なかなか自分ではできないんで、それで安堂さんにやってもらえるとありがたいなあ、と」

 ふーん、こいつの目には、私はすべての女性の関心を惹きつけ、否をいわせない超能力を持っているかのように見えているらしい。

 「ところで、ほかには誰がそうしたいといってるんだ?」

 「はい、私と、A社のB君、場合によってはC社のD君にも声をかけようと思っています」


 全員20代、独身である。普通なら、60歳を過ぎた私の年代の男を見ると、

 「ジジイ、引っ込んでろ!」

 と罵倒してもおかしくない。ところがこいつ、私に縋(すが)ってる。大丈夫か、若者よ?

 「聞いてみてやってもいいが、そういう趣旨ならそ、彼女以外は男でもいいんだな?」

 こんな質問が来るとは想定していなかったらしい。ギョッとした顔をして、次におずおずとしゃべった。

 「……、いや、できれば独身の女性が……」

 なんと、こいつ、俺に合コンの世話人をやれといっているらしい。
 
 「ということか?」

 私は、簡単明瞭を好む。遠回しにいわれるより、ダイレクトに表現された方が気持ちがいい。何が起きても自分は傷つかない安全地帯にとどまりながら、欲しいものが向こうからよってくるのを待つ卑怯さは嫌いである。
 おい、はっきり言えよ。

 「いや、あの、まあ、趣旨としては意見交換会ということで……」

 煮え切らないヤツだ。20代も残り少なくなりながら女の臭いが全くしないのも宜(むべ)なるかな。

 「分かったよ。やってやるよ。でも、どうして君は自分でできないんだ?」

 「いや、まあ、それはそうなんですけど、何かできなくて……。安堂さんに頼んだら大丈夫かな、と」

 おい、君、君は60過ぎても独身を通しているんじゃないか?

 すぐにその女性に連絡を取り、承諾を得た。

 だけど、君。私が同席して、すべての女性の関心が私に集まったらどうするつもりなんだ? そもそも、私の話を二つ返事で受ける女性だ。その可能性だって小さくはない。
 なあ、安堂さんをなめたら痛い目を見るぜヨ!

 ある女性にこの話をした。

 「ふーん、やっぱりいまの男の子って草食系なのかな」

 ということは、あれか。「意見交換会」の会場も、ベジタリアン・オンリーのレストランを選ばねばならないのか。そんなところ、桐生にあったかなあ?

 11月に実行の運びである。

 

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