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 2010年1月19日 床暖房

 いま住んでいる桐生の家には、灯油式の床暖房が入っている。

 昨年、横浜の自宅をリフォームした際、電気式の床暖房を組み込んだ。床暖房はきわめて快適な暖房であるという話をいろいろな人から聞き、採用した。が、リフォームが完成したときにはすでに桐生におり、暖房が必要になる冬場も、もちろん桐生で過ごしている。こういう次第で、私が生まれて初めて体験した床暖房は、自分で金を払った電気式ではなく、灯油式となった。

 ひと言で言って、快適である。ストーブやエアコンなど、ほかの暖房器具は一切不要である。1階の床に組み込んである床暖房だけで、150平方mほどの家全体が、どこに行っても暖かい。こんなに快適な冬を過ごせるのなら、横浜の家にももっと早くから組み込んでおけば良かった、と後悔するほどだ。

 灯油式の欠点は、灯油切れが起きることである。この冬、2度起きた。

 給湯も灯油式のこの家で、湯船に湯を張っていたら、湯が突然出なくなった。初冬のことだ。給湯器の故障か? とあちこち点検して最後に気がついたのが灯油タンクである。見事に空っぽになっていた。燃料が切れれば、車は止まる。灯油がなくなれば、給湯器は動かない。実に論理的である。

 灯油も管理しているプロパンガス屋さんに電話をして、急遽灯油タンクを満タンにしてもらった。

 「あちこちのお宅の灯油タンクをコンピューターで管理して、灯油切れが起きないうちに継ぎ足すようにしているんですけどね」

 駆けつけたプロパンガス屋さんの言い訳である。

 「コンピューター管理?」

 えっ、オンラインで各家庭の灯油消費量を管理してるの? それって、地方都市のプロパンガス屋さんとしては画期的じゃない? 驚いて聞いてみたら、自宅のパソコンで、それぞれの顧客ごとに灯油をつぎ足した日、つぎ足した量を入力し、次の給油日を決めているのだという。オフラインであった。

 「ひょっとして、夏場の灯油消費量で管理していない? この家、床暖房が灯油式なので冬場は灯油の消費量が増えるんだよね」

 我が家の灯油切れは、管理の基礎になるデータの取り扱い方の問題だった。コンピューター管理と聞いたとたんに、プロパンガス屋さんが使っているWINDOWSパソコンの欠陥か、と疑った私を反省した。
 もっとも、このあともう一度、我が家では灯油切れが起きた。すでに床暖房を使用する冬場のデータも入力されたはずである。やっぱり、WINDOWSパソコンはやばい? 私は疑いを捨てきれないでいる。


 「君、寒いのか?」

 元日、息子夫婦が遊びに来ていた。夕食も終わり、食卓で酒を飲みながら雑談していたら、嫁が寒そうな顔をしている。

 「ええ、ちょっと」

 そうか、そういえば少し肌寒いかな。外が冷えると、床暖房だけでは足りないのか? 久々にエアコンを作動させた。補助暖房である。

 翌日、2人は帰った。夫婦2人の常態に戻ったが、この日も寒い。

 「おかしいな」

 床暖房の室内機を見た。スイッチは確かにONになり、点灯している。が、ほかのボタンは消えたままだ。

 「おい、ほかのボタンはこのままでいいのか?」

 家を管理するのは、妻の役目である。

 「知らないわよ、そんなの」

 管理者が知らなければ、私も知らない。

 「この『連続運転』というボタンは、OFFのままでいいのか?」

 知らぬ同士が問題を突き詰める。問題が多い行動だが、この家、借り受けたときから床暖房の説明書がない。それが混乱の原因であることは間違いないのだが、ないものはない。

 「とりあえず、押してみるぞ」

 連続運転のボタンをONにし、半日待った。灯油で水を温め、その湯を床下に巡らすことで部屋を暖める灯油式の床暖房は、暖房効果が出るまで時間がかかる。

 「暖かくなったな。やっぱり、あのボタンは押さなきゃいけなかったんだよ」

 そんな会話をしたのは、その日夜遅くなってからのことだ。

 以来、外気温が零下になる朝でも、居間の温度は20度前後を保つ。
 何度も書こう。
 正しく使う限り、床暖房は快適である。自宅のリフォームを計画されている方は、是非導入をご検討されるようお奨めする。

 が、だ。この家に限っては

 過ぎたるは及ばざるがごとし

 と断ぜざるを得ない点が、床暖房について、ある。
 事務所の隣、私が寝室に使っている和室にも床暖房が入っているのである。

 確かに、床暖房が入った和室は暖かい。それは間違いのない事実である。
 問題点は次の2点だ。

 畳が乾燥して縮む。おかげで畳と畳の間に隙間ができる。
 へーっ、畳って縮むんだ、という新しい発見を喜ぶのもいいが、敷き詰められた畳と畳の間に隙間があるのは、何となく異様なものである。

 風邪をひきやすい
 和室である。夜は畳の上に布団を敷き、休む。床暖房の熱は畳を通して敷き布団に伝わり、そこに横たわる私の体を温める。掛け布団1枚だけしかかけていないのに、パジャマをはだけたくなるほど暖かい。

 「それのどこがいけないのか? 実に贅沢な寝室ではないか?」

 実態を知らない人にはそう見える。当初、私もそう思った。考えを改めたのは、何度か夜中に寒さで目が覚め、蹴飛ばしていた掛け布団を引き寄せて暖を取ってからである。体は冷え切っている。

 「眠りにつく頃は汗ばむほど暖かかった。掛け布団をかけると暑苦しいほどだったではないか。床暖は入りっぱなしだ。なのに、夜中になると何故寒くなる?」

 寒さ震えながら目を覚ますたびに考えた。解答に行き着く前にいつも寝入った。

 「ひょっとしたら」

 解答らしきものにたどり着くのに、1ヶ月以上の時が過ぎ去っていた。

 「こら、サーモスタット、犯人はお前だな?」

 前にも書いたが、この家の床暖房は灯油を燃焼させて水を温め、床下を巡回させる方式である。であれば、サーモスタットを使って湯温を関知し、灯油の燃焼を制御しているのに違いない。
 たとえば、湯温を50度に設定する(室内機には50〜60度に設定せよ、とある)。湯温を常に50度に保つのは難しいので、おそらく一定の幅で管理しているはずだ。45度〜55度とすると、湯温が45度まで下がると灯油が燃焼し始め、55度まで上がると燃焼をやめる。つまり、床下を流れる湯の温度は上下10度の幅で上がったり下がったりしているはずだ。

 「布団にはいるとき湯温が55度で、暑くてパジャマをはだけ、掛け布団を蹴飛ばす。しばらくすると湯温が45度まで下がり、室温も下がる。裸同然で寝ている私は、こりゃ風邪ひくな」

 解答にたどり着いた。が、正解がわかっても事態の改善は図れないのが、この家の不条理である。
 床暖房は部屋ごとには管理できないのだ。床暖房をONにすれば、リビングもダイニングも事務所も、そして和室も、みんなひっくるめて暖かくなる。仲間はずれは許さない。

 今日は小春日和である。だが、まだ床暖房をOFFにできるほどの陽気ではない。特に朝晩は冷える。床暖房は入れっぱなしである。

 かくして今夜も、

 「風邪をひかないようにしなきゃ」

 と呪文を唱えて、暖かい布団に入る。 春先まで、そんな日が続くはずである。

 

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