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 2009年5月20日 視線

 みどり市のレストランで昼食をとった。みどり市笠懸町にある市役所に、午後一で行く用件があったからだ。

 そのレストランは、市役所の近くにあった。真夏のような日差しが降り注ぐ中、

 「あーあ、また車体がちんちんに焼けてしまうな。乗り込んだとき、エアコンがしばらく効かないんだよな」

 と暑さの嫌いな私は嘆きながら駐車場に車を入れ、レストランのドアを前にした。張り紙があって、なんでもテレビに出たことがあるという。

 「ふーん、こんな所までクルーを送り込むなんて、テレビもネタ不足かね」

 と頭の中だけで毒舌を吐きながらガラス製のドアを押して中に入った。
 あれまあ、おっちゃんとおばちゃんばかりじゃないか。ざっと12、3人いるかか。平日の昼。ここは、人生から責任と義務がなくなったおっちゃん、おばちゃんの社交場か? あの6人組、おっちゃん1人が5人のおばちゃんの相手をしているぞ。もてもて男? でも、相手があの5人じゃ、羨ましくもないや。あれっ、一組だけ若いのがいるぞ。左側に座っている2人組の男たちだ。30代かなあ。

 まあ、客の品定め、それを通じて店の品定めをするのは、初めて訪れた店へのご挨拶である。

 その時だった。私は、感じてしまった。全身で感じてしまった。といっても、突然エクスタシーに襲われたわけではない。

 あいつら、見てる。私、見られてる。ジロジロ見られてる。穴があくほど見られてる。テーブルに座った客全員の視線が綿足に突き刺さっている。私を見てないのは、若いお兄ちゃんの2人組だけではないか?

 まあ、それも仕方がない。私は身長182cm、体重80kg(ひょっとしたら、それを下回っているかも知れない。桐生に来たら、働かざるを得ないせいか、ベルトが合わなくなっているのだ)の美丈夫なのだ。染めるのをやめた髪は前の方がかなり白くなっているが、それでも青春の輝きを放つ瞳は健在だ。このアンバランスが絶妙の魅力を醸し出す。一目見て、惹きつけられて、もっと見続けたいという気持ちもわからないではない。

 ということではなさそうなのだ。

 「あんた、だれ? どっから来たの? どうしてここにいるの?」

 私を見つめる20以上の瞳は、どうやらそんな光を発しているようなのだ。

 そうか、ま、確かにここでは、俺は異邦人だわな。服のセンスも違うし、瞳の輝きも違うし、ものごしも違うし、第一知性のきらめきが違う。まとっているオーラは、彼らには手が届かないだろう。

 という私の思いを無視するように、彼らは何度も何度も、私に視線をはわせる。

 「あんた、だれ? どっから来たの? どうしてここにいるの?」

 そんなこといわれたって……。

 
 しかし、見つめられるというのは快感である。多くの眼を独占するのは独特の心地よさである。私の肌に食い込む視線は、ゾクゾクするほどスリリングである。例え、相手がおっちゃん、おばちゃんだけであっても。
 ああ、そうか。芸能人を支えるのはこの快感か。

 おーい、どこかの芸能事務所、私を買いに来てくれない? 芸能人にしてくれない? 見つめられる快感、やみつきになりそうなんだ 四六時中感じていたいんだ!
 おーい、どこでもいいから芸能事務所、ねえ、声だけでもかけてくれないかなあ。

 どこらも声がかからなかったら、もう一度あのレストランに行こう。トンカツもそこそこ美味しかったし。

 

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