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 2009年3月5日 群馬県桐生市

 突然だが、4月から群馬県桐生市に住む。いまは引っ越しの準備中である。
 桐生市に別荘を買ったわけではない。不始末をしでかして横浜市に住めなくなったわけでもない。
 単なる転勤である。

 私はこの5月で60歳になる。還暦である。が、それはどうでもいい。暮らしに響くのは、定年を迎えることである。

 頭の方は不確かだが、幸い、体は今のところ元気だ。定年を迎えたからといってブラブラしていては、ボケ予備軍に自ら登録、入隊するようなものである。 元気なうちは働く。それが元気のもとだ。
 いや、もう35年も働いたのだから、これ以上働きたくないという気もないわけではない。だが、我が家の経済情勢はそれを許さない。

 まず、妻が持病を持つ。昨年は1度入院し、支払った医療費の合計は40万円を超した。年齢を重ねれば、医療費がさらにかさむ恐れは充分にある。
 いや、妻だけではない。自分の顔を鏡で見ているだけでは自分の年齢が分からない、同い年の他人の顔を見て初めて、俺もこんな歳になっちゃったのかと傲然とする、と豪語する私ではあるが、恐らく90歳ぐらいまでは元気でいるのではないかと信じて疑わない私ではあるが、それでも、衰えの年代に入ったことは疑いない。私の医療費だって急速に増える恐れは充分にある。

 我が家は建てて25年たった。躯体は重量鉄骨で作ったからビクともしていないが、流石に水回りは痛みが目立つ。かつてはシステムキッチンであったはずのものは、すでに多くの扉がなくなり、蛇口からは水漏れがする。トイレは洗浄能力が落ちた。おかげで

 「お父さん、また汚しっぱなしにして!」

 と怒られるのは私である。便器にこびりつき、水と友に流れてくれないものが残ることがあるのだ。
 風呂場も、25年たつとツヤがなくなる。水はけもいまいちだ。タイルの目地もカビの侵入を許して黒ずんでいる。
 リフォームの時期を迎えたのである。

 たぶん、私の存命中に、もう1回ぐらいを買い換えなくてはならない。

 長女の長男啓樹、次女の長男瑛汰には、そこそこいい顔をし続けたい。いや、長男のところにも子どもができるであろうし、長女も次女も2人目、3人目に挑むかもしれない。
 ボス役を演じ切るには、それなりに金がかかる。
 
 我が家はそのような状態にあり、そして我が家で金を稼ぐのは私だけである。60歳を迎えるからといって、楽隠居を決め込むことは許されない。

 というわけで、60歳からの進路を考えてきた。最終的に、勤め先の再雇用制度を使うことにした。ちゃんと働けば5年間、うまくすれば7年間働ける。年収は現在の3分の1以下。年金と合わせて何とか暮らせるレベルである。だが、ほかに選択肢はなかった。

 昨年末に、再雇用制度を使いたいと申告、先日、勤務地が決まった。それが群馬県桐生市である。5月の定年を待たず、4月1日付で異動する。

 私には縁もゆかりもない土地だ。足を踏み入れたこともない。まったく知らぬ土地である。だが、まんざら縁がないわけではない。妻の両親は群馬県の生まれである。2人が渡橋に出てきて妻を産んだ。それに、長女の旦那も群馬県の出だ。
 私が任地ととして希望したのは

 1)横浜の自宅から車で2時間〜3時間の距離
 2)できれば温暖な土地
 3)大きな病院が近くにある


 の3点である。寒さが敵である膠原病を持病とし、1人では長距離の異動ができない妻の体を考慮しての条件だった。
 つまり、桐生という勤務地は私が選んだのではない。不思議な縁というしかない。


 「おい、桐生に決まったぞ」

 妻に告げたのは10日ほど前のことだ。すると妻がいった。

 「あ〜ぁ、この年になって都落ちするのね」

 私は思わず怒鳴りつけた。

 「嫌なら来なくていい!」

 私は九州の山猿である。だからかも知れないが、首都圏、特に東京出身者の思い上がりは神経に障る。
 都落ち? 落ちるのか? 東京は日本で一番高いところにある都市なのか? 東京は格別な都市なのか? 東京にたまたま生まれ落ちると、人間としての格が上になるのか? そもそも、東京以外の土地に住む人々に失礼とは思わないか?
 様々な重いが、瞬間的に頭の中で膨れあがったのである。

 日本語には素晴らしい言葉がある。
 住めば都
 私は、都落ちより、こちらの言葉を採用する。
 4月から当面の間、桐生が私の都になる。

 我々夫婦は3月末に荷物を送り出し、桐生に移り住む。空き家となる我が家は、4月1日からリフォーム工事が始まる。工期は約1ヶ月。5月の連休前には完成する。
 快適さを増すに違いない横浜の我が家には、連休中に次女夫婦が賃貸マンションを出て移り住む。
 
 というわけで、しばらく転勤がらみのレポートが続くはずである。

 

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