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 2008年10月8日 代替物

 我が家のキッチンの天井に取り付けられていた蛍光灯が、ほとんど一握の砂と化したことは、9月30日の日誌に記した。今日は、その取り替え工事を行った。

 誠に不便なことではあるが、老朽化した蛍光灯を取り替えるには、新しい蛍光灯が必要となる。老朽化したものに特定の薬液を振りかければ新品同様になるなどという技術はまだ開発されていないからだ。科学はなかなか進歩しない。

 というわけで、川崎のヤマダ電機に出かけた。いや、その前に川崎のさいか屋に寄ったのだが、それはこの際どうでもいい。

 我が家のキッチンに取り付けられた蛍光灯は、長方形であった。出かける前に概ねの採寸をした。長辺が70cm、短辺が23cmというところである。これと似通ったサイズのものを購入すればいい。
 店に着くなり、照明器具のコーナーに走った。展示してある照明器具を見る。ん? ない。丸いヤツはいっぱい展示してあるが、長方形の天井灯がない

 いやいや、よく見たら1つだけあった。何とも美しくない蛍光灯だった。あとは、すべて丸い。いまは丸形が主流なのか?

 店員を呼んだ。展示してあるのではない長方形の天井灯が欲しいというと、取り寄せになるという。残念ながら、それを待つゆとりはない。なにせ、我が家の天井灯は一握の砂に変わりつつあるのだ。

 仕方なく、丸形を選ぶことにした。

 「で、いまの天井灯は、屋内配線を直接取り付けるタイプなんだけど、そんなのある?」

 店員がギョッとした顔をした。

 「いや、いまは天井にローゼットを取り付けて、それに照明器具を取り付けるタイプしかないのですが……。直付けの器具なんてあったかなあ?」

 なるほど、24年という歳月はそのようなもらしい。いや、ちょっと待てよ、我が家にもローゼットタイプはある。というこはあれか。施工業者がコストをケチって、キッチンには安い蛍光灯を使ったか。そういえば、ずいぶん値切ったもんなあ……。

 「で、これを買うとローゼットもついてるの?」

 「いえ、別売りですが」

 「じゃあ、それもちょうだい」


 ということで、丸形の天井灯とローゼットを購入することになった。店員がいった。

 「あのー、一応、ローゼットの工事は専門の業者さんしかやってはいけないことになっているのですが……」

 買ったローゼットの注意書きではこうなる。

 「電気工事士法により、この器具の施工は電気工事士でなければできません」

 そうかそうか。そのような制約があるのか。まあ、電気器具を安全に使うには必要な規制ではあろう。だが、私には通用しない。
 でも、専門家しか取り扱えない器具を、どうしてヤマダ電機で売ってるのかなあ……。

 「あ、専門業者より俺の方が上手いから大丈夫だよ」

 これがつまずきのもとになるとは知るはずもない私だった。

 家に戻り、昼食を済ませて作業に取りかかった。
 まず、買ってきた器具の取り付け具合を調べなければならない。順序はローゼットからである。
 袋から取り出した。蛍光灯とのかみ合わせを調べる。上手くかみ合うようだ。これは大丈夫、と。
 さて、屋内配線は交流だから、2本のコードがある。それをどこに差し込むのだろう? あれっ、それと思しき穴が4つもあいてるぞ! 常識的に考えれば、両側に2つずつ穴があるから、片側の穴は同じ系統だと思うが……。説明書もついてないし、ここは慎重を期してテスターで調べるか。

 クリスキット製作でさんざん使ったテスターを取り出し、それぞれの穴の導電性を調べにかかった。

 

 

(お断り)
ここまでは
5日に書いたものである。夕食後書き始め、書きながら疲れるとゲーム(最近、フリーセル、というヤツをやったりしております)に興じたり、チビチビ、いやぐいぐいと焼酎を飲んだりしていたら、夜が遅くなったこともあり、力尽きました。
6日、7日は書く暇なし。ということで、ここからは今日8日に書き継ぎます。

 

 テスターというやつをご覧になったことはあるだろうか? こいつには、本体から必ず2本のリード線が出ている。私が知っている限り、+は赤、−は黒で、「音らかす 番外編 II :パワーアンプの製作 3」の写真でご確認頂ける。
 このリード線の先っぽには、金属製の棒が付いている。この棒を測定するものに押し当て、抵抗値や電流、電圧を測定するのがテスターの役割である。

 で、ローゼットに空いている4つの穴が電気的にどこに通じているかを調べるには、テスターを抵抗値測定にセットしたうえで、このテスターのリード線のどちらか一方の先っぽの棒を、この穴に差し込まねばならない。これは疑いようなのない真実である。
 私は、赤いリード線の先っぽを穴に差し込んだ。
 カチッ、という音がしたような気がした。まあ、いい。黒いリード線を別の箇所にあてる。そうか、この穴とこの箇所は電気的につながっているのか。そしてこちらは、うん、つながってない。分かった、分かった。

 さて、次の穴を調べなければならない。赤いリード線を穴から抜こうとした。ん? 抜けない。おいおい、抜けてくれなきゃ困るんだけど。力が足りないか? じゃあ、もっと力を入れて……。
 何で抜けないんだ? と考え初めて、合理的な解を見出した。そうか、この穴は、屋内配線用の銅線を差し込むところだ。差し込んだ銅線がわずかな力で抜けるようなことがあれば、そのたびに蛍光灯は消え、銅線を差し込み直さなければならない。だから、差し込まれた銅線をくわえて離さないような構造になっているのではないか?
 大変だ。テスターのリード線の先っぽの棒がくわえ込まれた。

 力まかせに引っ張った。スポッと抜けた。ああ、よかった、とリード線を見ると、先っぽの棒がない! ローゼットを見る。穴から棒が立っている!!

 困ったことが2つある。
 このままではテスターが使えない。ほだからかの穴を調べることが出来ない。1つの穴を調べて推測は付いたが、やはり配線前に調べるにこしたことはない。
 もっと困ったのは、このままではローゼットが使えないことである。1つの穴から突っ立った棒がつっかえて、天井に取り付けることが出来ないのである。
 さて、どうする?

 ここはローゼットを大事にするしかない。我が家として優先させなければならないのは、キッチンの天井の明かりを確保することなのだ。それに、テスターのリード線は買い直してもたいした金額ではないはずだからだ。

 ニッパを取り出した。この刃でで突っ立った棒を挟み、力任せに引き抜こうという作戦である。どうしても抜けなかったら、棒を根本で切る。そうして、使えるローゼットにする。
 棒に傷が付くのは覚悟の上である。なにしろ、最終的には根本で切断することまで覚悟しているのだ。傷や変形などは気にするところではない。
 挟み、力一杯に引っ張った。何度繰り返したことだろうか? やっと抜けてくれた。ホットした。やっと抜けてくれた棒が傷だらけだったのはいうまでもない。

 四苦八苦の末、何とかローゼットの調べが終わった。次は、これをキッチンの天井に取り付けねばならない。
 取り付ける? そういえばこのローゼット、木ねじなんて付いてなかったぞ! 何を使って取り付けろっていうんだ?
 仕方ない。我が家にも木ねじぐらい転がっている。でも、どれくらいの長さがあったらいいのかなあ? 定規を取り出して測ってみる。32mmではやや短い。少なくとも38mmは必要だ。確かあったよなあ……。

 先日本棚を作った3階の部屋に行き、ゴソゴソと引っかき回して38mmの木ねじを見つけ出した。これで大丈夫、と2階に戻り、ローゼットのねじ穴に差し込もうとした。ところが、ねじ穴が小さくて入らない!
 天井灯の取り替えは、単純な作業である。なのに、どうしてこれだけの困難に逢着してしまうのか? 私の日ごろの行いは、それほど神の怒りを呼んでいるのか?
 えーい、怒るなら怒れ! 私は負けない!!

 リーマーを取り出した。リーマーとは、金属にあいた穴を押し広げるための器具である。こいつの先っぽを穴に差し込み、ぐるぐると回す。すると、側面にある刃が金属を削り、穴を大きくしてくれる。

 グリグリやっているうちに木ねじが通るまでに穴は大きくなった。さて、これでいい。次は、キッチンの天井の古い蛍光灯を取り外す番だ。

 これは簡単である。いずれにしても廃棄する器具である。抵抗するようならぶっ壊せばすむ。そして椅子に載り、実際にぶっ壊した……。
 私の目前に、ぽっかりと穴が登場した。そこから、屋内配線のケーブルが出ている。このケーブルをローゼットに差し込み、ローゼットを天井にねじ止めすれば作業の90%は完成である。
 ん? いかん。この天井、ベニヤ板ではない。耐火ボードだ! そうか、火を扱うところだから木は使ってないのか。それは納得できるが、弱った。耐火ボードは脆い。木ねじをねじ込むと、その穴の周りがボロボロと崩れてしまう。木ねじ2本で天井から何かをぶら下げるなんて無理中の無理だ! 耐火ボード用の特殊なねじを買い求めに出かけなけれなならないのか?
 天井の穴から手を差し込み、周囲を探った。よかった! 木の枠が走っている。ということは、木枠で天井を作り、そこに耐火ボードを貼り付けてあるらしい。よし、この木製の枠に木ねじが届けば大丈夫ということだ。
 メジャーで測る。うん、38mmあればいける。

 そこまで確認して、ローゼットを取り付け位置にあててみる。ありゃ、天井の穴がやや小さい。ローゼットには少し突出した部分があり、それが穴より大きくて入らないのだ。天井の穴を少し大きくしなければ。
 ドライバーで耐火ボードを押す。その部分がボロボロと崩れて床に落ちる。ま、これも一握の砂だな、と思いながら視線を下に落とした。ありゃ! 昼食のラーメンにトッピングしたワカメコーンが、ラッピングをしないまま流しの横に置いてあるぞ!

 「おーい、天井で作業するというのに、どうして食べ物をむき出しのままこんなところに置いておくんだ? 耐火ボードのクズがふりかけになっちゃったじゃないか。もう食えないぞ。なんてもったいないことをするんだ!」

 私は小言幸兵衛の子孫かも知れない。

 穴は広がった。ローゼットは無事、木ねじでしっかりと天井に取り付けられた。蛍光灯を取り付ける。カバーをかぶせ、スイッチを入れる。明るい光がキッチンを包んだ。
 以上、作業終了! 所要時間は1時間程度か?

 それですべてが済んだはずだった。
 夕刻、瑛汰を連れて犬の散歩に出かけ、自宅に戻って瑛汰と風呂。「笑点」、「篤姫」を見ながらノンアルコールの夕食。次女と瑛汰を車で送り、戻ってビールを1本抜く。ホットするひとときである。
 その時、妻の声がした。

 「ちょっと。戸が開かないんだけど」

 キッチンに足を運んだ。流しの上にある収納家具の戸が、15cmほど開いた状態だった。それ以上は開かない。私が心血を注いで取り付けた丸形天井灯にぶつかっているのである。
 そうか、だから長方形の天井灯が取り付けてあったのか……。

 「……………………」

 プロとアマの違いは何か?
 プロは同種の作業を繰り返すことで、事前のチェックポイントを知る。
 アマは数十年に一度の作業に取り組む。幅広い常識で出来るだけ事前チェックをするが、悲しいかな、実戦の積み重ねが皆無のため、チェック漏れが出てくる。
 そんな事実を思い知っても、もう遅い。

  「……………………」

 我が家のキッチンでは、今朝も丸形天井灯が明かりを放っていた。開かずのドアもそのままである。あ〜あ。
 ま、明かりが戻っただけで良しとしよう! この丸形天井灯だって24年もすれば一握の砂になるさ。そん時に長方形の天井灯にすればいいじゃないか……。

 

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