●日誌一覧

シネマらかす

グルメらかす

音らかす

旅らかす

スキーらかす

事件らかす

 2008年7月13日 やっぱり

 「おかしいわね。まだ話し中だわ」

 朝から妻の素っ頓狂な声がした。電話の子機を握りしめている。相手は次女らしい。

 「今日は何時頃迎えに行こうか?」

 そんな話をしたいらしい。休日のいつもの一コマである。
 車のハンドルを握って迎えに行くのは私なのだが、彼女にとっては私はお抱えの運転手と同じらしい。私の都合など尋ねもせず、一顧だにせずに、送り迎えの時間を娘と2人だけで決める。夫婦も長くやっていると空気のようなものになるというが、我が家での私の立場は空気以下である。
 いや、それは今日の話の本筋ではない。

 最初に電話をしたのは30分ほど前らしい。話し中だった。再び電話をしてみたら、やっぱり話し中だった。こんな朝っぱらから誰と長電話をしているのか? 何と長電話の好きな娘であることか? 社会人としての常識を伝え損ねたらしい。妻の脳裏にはそんな思いが駆けめぐっていたのに違いない。
 このような際、自分がしょっちゅう長電話をすることを完璧に忘れ得るのは、妻の特技である。私にいわせれば、次女が長電話をしていても、単なる遺伝に過ぎないのだが。

 「携帯電話にかけてみろよ。向こうの受話器がはずれているのかも知れないから」

 私は至極まともな提案をした。そのつもりだった。

 「だって、○○○(娘の名前)はいま電話してるんだから、携帯にかけたって出られるわけないじゃない」

 ここに妻の思考パターンの典型がある。いったん思いこんだら、ほかの可能性は、右の耳で聞いて直ちに左の耳から出ていく。つまり、脳内にとどまる時間がない。が、それはこの際問わない。

 「だから、受話器がはずれているんなら○○○は電話をしていないんだろ? それを確かめるために、携帯に電話をしろ、といってるんだ」

 やっと理解できたらしい。彼女は固定電話を手放し、自分の携帯電話を取り出すと、娘にかけた。
 不思議な行動である。手に、固定電話の子機を持っているのなら、その子機から娘の携帯に電話をすればいい。私はそう考える。妻はそう考えない。携帯には携帯からかけるものと決めてあるらしい。いや、現実は、彼女の携帯に娘の携帯の番号が登録されているだけかも知れないが。
 が、結果的には、彼女は正しい行動をしたことになる。それはおいおいご理解いただけるはずである。

 「えーっ、別に受話器はずれてないよ」

 携帯電話に出た娘は、そんな反応をしたらしい。らしいというのは、私が直接話したのではないからである。

 「おかしいわね。だったら、あなたのところの電話、故障してない?」

 そんなやりとりを聴きながら、電話機が正常に働かないケースを考えた。
 受話器がはずれる。その確率が最も大きいが、そうではないという。
 プラグがコンセントから抜ける。でも、受信はできるはずだ。
 機器の故障? つい先ほどまで正常に働いていたものが、突然故障するか?
 わからん。

 「じゃあさ、あなたの方から電話してみてよ」

 という妻の声で、我が家は電話待ちの態勢に入った。突然かかってくるのが電話である。必ずすぐにかかってくる電話を待つという体験は、一生のうちでもそれほどあるものではない。
 すぐに我が家の電話が鳴り出すはずだった。が、ウンともスンとも言わない。娘がさぼっているのか?

 「ねえ、電話かけてるの? かかってこないわよ」

 妻が携帯電話で娘と話し始めた。

 「えっ、かけてるけどかからない?」

 そこまで聴いて、ふと思いついた。
 犯人はKDDIではないか?
 
 我が家の光回線がKDDIに換わったことは、「2008年7月5日 KDDI」でご報告した。その中で、電話がひかり電話になることにも触れた。それを思い出したのである。
 私はこう書いていた。

 「同時にひかり電話を申し込んだのだが、開通にはしばらく時間がかかるという。では、いつ開通するかを知らせて欲しいと言ったが、どうやら知らせてくれないらしい。ホームゲートウェイの電話のランプがついたら開通した証なので、電話をつなぎ変えろという。これから毎日、ホームゲートウェイを監視しなければならない。
 おい、これから毎月お金をいただこうというお客様に、そこまで負担をかけるのかよ!」


 NTTの回線が切られ、光回線に切り替えられたのではないか?
 そう思いついた私は、ホームゲートウェイを見に行った。確かに、「電話」のランプがついている。ひかり電話が開通しているのである。ということは、自動的にNTTの回線は閉鎖されている。
 電話の具合が悪かったのは娘の家ではなく、我が家だったのである。

 電話をホームゲートウェイにつなぎ換えた。私の携帯電話から電話をかけてみる。受信音が鳴り響いた。

 「おい、電話が正常に戻った。○○○に電話をして、向こうから電話をかけさせてみろ」

 再び受信音が鳴り響いた。我が家はNTTとの契約をなくし、ひかり電話を活用する先進家庭になった。それはそれで時代の流れなのだが……。

 なあ、KDDIさんよ。私が心配した通りのことが起きてしまったではないか。NTTからひかり電話に切り替えられたあと、私がその事実に気がつくまでに大切な電話が入っていたらどうしてくれる?
 いつ切り替えるかは、事前に分かっているはずである。であれば、コストがかかるから封書で知らせろとまでは求めない。せめてメールで知らせるだけのサービスもできないのかね? 携帯電話純増数最下位に低迷して長いKDDIの問題点はそのあたりにあるのではないか、と嫌みの1つも言いたくなる私である。

 にしても、だ。すでに接続が切れている我が家の電話から次女の家に電話をして、

 「話し中」

 と判断した我が妻の耳はどうなっているのだろう?
 話し中の場合は、耳慣れた断続音が受話器から聞こえてくる。すでに回線から切り離された電話から同じ音が聞こえてくるはずがない。

 我が妻の耳、恐るべし。

 

前の日誌                 next
無断  メール