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 2008年7月5日 KDDI

 我が家の光回線が、今日換わった。
 「らかす」を始めるとき、それまでのADSLから光回線に換えた。なにしろ、自分でホームページを運営するのだ。大量のファイルをやりとりする必要が生じる、と思ったからである。
 だが、「らかす」程度のホームページでは、たいした量のファイルをやりとりするわけではない、という事実に開設してから気がついた。光回線にせずとも、ADSLで十分だった、というのはあと知恵である。まあ、確かに回線スピードが上がり、ほかのホームページのブラウジングが快適になったからよしとしよう。

 加入したのは、TEPCOひかり、だった。東京電力が運営するものである。確か、NTTの光回線網は、まだ我が家まで到達していたかった記憶がある。

 そのセールスマンが我が家を訪れたのは、3ヶ月も前だったろうか。私の不在時に、「KDDIのひかりONE」に換えるよう妻に言い置いて帰ったらしい。らしいというのは、私は妻から話を聞かされただけだからである。妻の話は不得要領のものが多いことは何度も書いたが、彼女には絶対に理解できないネットワークの話を私にするのだから、不得要領の度合いはいつにも増してひどかった。聴いても分からない話なので、放っておいた。

 1ヶ月ほど前、土曜日に同じセールスマンが訪ねてきた。私が対応した。
 彼の話によると、KDDITEPCOひかりを買収した。よって、契約先をKDDIに変えないと、今後のサポートができなくなるという。乗り換えるについては、屋内に設置する機器を取り替えなければならないという。

 「新手の詐欺か?」

 と疑いもした。しかし、すべて無料であるという。となれば、乗るしかない。
 その後、屋内機器だけでなく、屋外・屋内回線も張り替えねばならないという連絡が来た。その工事も無料である。こうして今日を迎えた。今日は、KDDI指定の工事日だった。

 工事業者さんがやってきたのは午後1時40分を過ぎた頃だった。まず屋外配線から始め、それを我が家の中に引き込んだ。光ケーブルを剥き、ONU(Optical Network Unit ) という小さな機器につなぐ。で、信号の通り具合を調べる。彼らの役割はここまでである。
 だが、それだけでパソコンに接続できるわけではない。ONU(Optical Network Unit )とホームゲートウェイと彼らがいう機器をLANケーブルでつなぎ、そのゲートウェイとパソコンをLANケーブルでつなぐ。こうして初めて、我がパソコンがネットワークにつながるのである。

 工事業者さんの受け持ち作業は終わった。だが、日本人は親切である。

 「はい、私たちの作業は終わりましたから」

 といって去ることはない。ホームゲートウェイを接続し、パソコンとLANケーブルでつなぐ。とにかく、客のパソコンがネットにつながるのを見て去りたい。こんな出過ぎた思いやりが日本経済を支えるのでる。

 「安堂さん、すいませんがネットに接続してみてくれますか?」

 言われた私はFirefoxを立ち上げた。Firefoxのホームページに設定しているのは、asahi.comである。いつものように、フロントページが出てくるはずだった。
 出てこない。

 
サーバが見つかりませんでした
 www.asahi.com という名前のサーバが見つかりませんでした。
 * www.example.com を間違えて ww.example.com と入力するなど、アドレスを間違って入力していないか確認してください。 
 * 他のサイトも表示できない場合、コンピュータのネットワーク接続を確認してください。 * ファイアーウォールやプロキシでネットワークが保護されている場合、Firefox による Web アクセスが許可されているか確認してください。

 という訳の分からないメッセージが表示される。訳は分からないが、ネットにつながっていないらしいことだけは分かる。

 おいおい、待てよ、何でつながらないわけ?
 と思いながら、何度もやってみる。ダメ。
 Safariでやってみる。ダメ。
 嫌いだが、こうなれば仕方がない。Internet Exsplorerでやってみる。ダメ。
 メールは? Entourageを立ち上げる。ダメ。
 おいおい、俺のパソコン、ネットにつながってないよ!

 こうして混乱が始まった。

 「つながらないよ。どうしてくれる?」

 詰め寄る私に、工事業者さんは身構えた。

 「私どもの仕事は光回線を引いてONUが作動することを確認することまででして、それから先のことは……」

 一理ある話である。彼らは、回線の引き直しを請け負っている人々だ。だが、私としてはそれでは困る。

 「それはそうだろうけど、今朝まで使えていたインターネットが、工事をやってもらった結果使えなくなった。これは何とかしてもらわないと、私としては工事をやり直して元に戻してもらうしかない」

 これも至極まっとうな主張のはずである。それとも私は、たちの悪いクレーマーだろうか?
 私の勢いが勝った。いや、勝ったのは私の「客」という身分かも知れない。工事業者さんは、ONUとホームゲートウェイを再起動したり、何とか私のパソコンをネットに接続すべく努力を始めた。

 「ほかではこんなことはなかったのですけどねえ……」

 ぼやくな、おじさん。ほかでなくても、ここでは起きているんだ。現実に対処するしかないではないか!

 工事業者さんのチーフと思しきひとの携帯電話が鳴った。どうやら、我が家の次に工事をする予定だった家庭から、まだ来ないとクレームが入ったらしい。だが、私としては、ここで逃亡を許すわけにはいかない。日本刀の鞘を払ってでも引き止めなければならない。
 その気配を察したのであろう。工事業者さんは踏みとどまった。

 が、踏みとどまっても、つながらないものはつながらないのだ。

 「ねえ、あなた方の仕事の先はKDDIになるんですよね。だったら、KDDIに電話を入れましょうよ」

 私が提案した。私が電話をした。

 「はい、KDDIブロードバンド開通センターでございます」

 女性の声が流れてきた。聴いただけで絶望的になった。これは、世上よくある、マニュアル馬鹿の声である。すべてがマニュアル。それ以外の対応はできない。
 この闘いは長引くぞ。
 私はふんどしのひもを締め直した。

 「あのさ、今日TEPCOひかりからの回線の引き直し作業をやってもらってるんだけど、パソコンがネットにつながらなくなってさ」

 「はい、まずお客様のお電話番号をおっしゃっていただけますか?」

 「ああ、電話番号? 045-502-○○○○だよ」

 「はい、安藤様でございますね。どのようなお問い合わせでございますか?」

 「だからさ、さっきも言ったように、お宅の回線に換えたら、突然ネットにつながらなくなったの。何とかしてもらわなくちゃ困るんだわ」

 「はい、しばらくお待ち下さい。技術の者と代わりますので」


 待った。技術の者が受話器の向こうに登場した。

 「はい、お電話代わりました。どのような案件でしょうか」

 同じ説明を繰り返した。

 「申し訳ございませんが、いくつかお試しいただきたいことがございます。まず……」

 LANケーブルの両端を、ホームゲートウェイのLAN端子に突っ込んだ。
 ネットワークユーティリティを立ち上げて、Pingコマンドを送信した。
 Pingコマンドの送信先ネットワークアドレスを変更した。
 パソコンのネットワーク設定で、DNSサーバのアドレスを入れ替えた。
 パソコンを再起動した。

 つながらない。

 「申し訳ございません。上の者と検討してもう一度お電話を差し上げますので、申し訳ありませんが、お電話番号をお教えいただけますでしょうか?」

 教えて待った。

 話は変わる。今日は夏日だった。一連の作業を続けているうちに、全身から汗がにじみ出した。

 「暑いな。エアコンを入れるしかないか」

 エアコンのリモコンを探し出し、スイッチを入れた。何も起きない。エアコンは、昨年秋から続けている睡眠を継続するだけである。
 
 「おかしいな。何で動かないの?」

 そうか、プラグが抜いてある。妻が口やかましく節電を唱えるものだから、エアコンを使わない季節に待機電力を浪費するのも無駄だと判断してプラグを抜いていたんだっけ。
 プラグを差し込んだ。リモコンのスイッチを押した。これで涼しくなるだろう。涼しくならない。頼りのエアコンは相変わらず眠り込んでいる。

 「おい、エアコンが動かない。去年買ったばかりなのに、もう壊れたのか?」

 茶の間で、愛犬「リン」を押さえている妻に声をかけた。リンは、見知らぬ人間が家に入ってくるのが大嫌いである。押さえておかないと、飛び回って吠えかかる。押さえていても、うなり声を上げ、吠える。

 「えーっ、パソコンだけじゃなくてエアコンもおかしいの!」

 と妻に同意されたところで、エアコンが動き出すわけではない。パソコンがネットにつながるわけではない。エアコンのメーカー、シャープに電話を入れようと思うが、この電話、いつKDDIからかかってくるか分からない。今日の優先項目はネットワークである。

 エアコンのない部屋で、電話を待った。かかってきた。

 KDDIブロードバンド開通センターの○○と申します。そちら、安堂様のお宅でしょうか? お待たせして申し訳ございません。あのう、それでですね、いくつかやっていただきたいことがあるのですが」

 「まだ、なんかやるの?」

 「はい、原因を追い込まなくてはいけないものですから」

 「それは分かるけどさ、プロバイダーを変えないんだったら、回線を弾き直して室内機を変えるだけで同じように使えると言われたから変えたんだけど、ちっともつながらないじゃない。これまでに、どれだけの時間と手間がかかってるか分かってるの?」

 「はい、申し訳ございません」

 「あのさ、とにかくつなげて欲しいのよ。ネットを使ってやらなきゃいけないことが、土日はたくさんあるの。何とかしてよ!」

 彼女の言う手順を、エアコンもない部屋で実行した。つながらない。

 「申し訳ございません。もう一度検討して、お電話を差し上げますので。ところで、こうじg 「申し訳ございません。もう一度検討して、お電話を差し上げますので。ところで、工事業者はまだそちらにおりますでしょうか? おりましたら、次の工事現場に行くように言っていただきたいのですが」

 「あのね、私にとっては、ネットにつながることが最優先事項なの。このままつながらなかったら、工事をやり直して元に戻してもらいたいの。今朝まではネットにつながっていたんだから。だから、つながるかどうかはっきりするまで業者さんにはいていただくつもりなの」


 電話が切れた。待ち時間である。今日の私は忙しい。待ち時間ができたらやることがある。エアコンである。

 再びリモコンを取り出し、スイッチボタンを押す。リモコンの液晶画面には、設定温度、風向、風量などが表示される。だが、本体はがんとして動かない。

 「へん、お前のパソコン、ネットにつながらなくて使い物にならないんだろう。何で俺だけが働かなきゃならないの?」

 とからかわれている。
 まさか、と思った。念のために試してみるか、と考えた。リモコンの電池を入れ替えたのである。リモコンの液晶画面はくっきりと表示されている。電池がなくなっているはずはない。それが常識が。だが、時には常識を裏切ってくれる機械もある。
 単4電池を2本、新しいのと取り替えた。リモコンをエアコンに向け、こんなことで動いたら漫画だよな、と思いながらスイッチを押した。
 動いた。どうやら、世の中は漫画らしい。いや、漫画なのはシャープのエアコンだけか?

 「安堂様でしょうか?」

 また電話がかかってきた。

 「申し訳ございません。あといくつかお試しいただきたいことがありまして」

 KDDIという企業は、私が女に弱いことを知り抜いているのであろうか。またしても、声の主は女性である。
 だが、今の気分は、女だから許すという、常日頃の私の美学からはほど遠い。

 「あのさ、俺に何時間作業させるのよ。こんなトラブルが起きたら、あなたのところから誰かがすっ飛んできて、ホームゲートウェイを交換してみたり、とにかく一刻も早く私のパソコンがネットにつながるようにするのが企業としての責任なんじゃない? これで今日つながらなかったらとうするの? 明日もつながらなかったらどんな責任をとるの? いい加減にしないと、ネットが使えなくなった時間を毛算して賠償を請求するぜ!」

 思わず声が荒くなる。私の勢いにビビッたのであろうか。電話の向こうの女性は、今日初めてまともな話をした。

 「あのう、システム環境設定からネットワークを開いていただきたいのですが」

 「えっ、だって、プロバイダーを変えない限り、ネットワークの設定は変えなくていいんじゃなかったっけ?」


 「はい、そのようにご案内しているのですが、念のためでして」

 言われるがままに、ネットワーク環境を「自動」にし、表示を「内蔵Ethernt」とする。IPv4の設定を「DHCPサーバを参照」にして「今すぐ適用」ボタンを押した。
 背景にあったFireFoxasahi.comが現れた。

 「つながったよ、つながった」

 電話の向こうの女性が言った。

 「ああ、それは……。ありがとうございました」

 「ということは、新たな設定不要というのは嘘だったってことだね?」

 「そのようです。申し訳ありませんでした」

 言いたいことは山ほどあった。だが、それ以上の追及はしなかった。とにかく、ネットに接続できたのである。それまでに4時間近い時間を浪費したが、まあ、その間、動かなかったエアコンも動き出したことだし、いいか、という気分になった。
 今時業者さんには直ちにお引き取り願った。

 「お引き留めして、お仕事のおじゃまをして申し訳なかった。責任は挙げてKDDIにありますが、私のわがままにお付き合いいただいてありがとうございました」

 と申し添えた。あなた達は、対KDDI交渉のための人質でした、という真実を伝えることは怠った。

 でもさあ、KDDIさん。仕事の仕方はもう少し考えた方がいいぞ。
 恐らく、今回の混乱は、私がMacを使っていたことにある。あんた方、ウインドウズには慣れているかも知れないが、Macの世界には不慣れだったんだよね? それが原因の大半なんだよね。Macユーザーを馬鹿にするんじゃない!

 それに。
 同時にひかり電話を申し込んだのだが、開通にはしばらく時間がかかるという。では、いつ開通するかを知らせて欲しいと言ったが、どうやら知らせてくれないらしい。ホームゲートウェイの電話のランプがついたら開通した証なので、電話をつなぎ変えろという。これから毎日、ホームゲートウェイを監視しなければならない。
 おい、これから毎月お金をいただこうというお客様に、そこまで負担をかけるのかよ! 

 老婆心ながら申し上げる。確かに、そうすれば通信費はいらない。コストは減る。だけど、そんな態度でサービス業が続けられるか?

 KDDIさま、心からお願いします。回線の乗り換えで、今回は苦労させられました。だから思うのです。あと数年したら光回線をNTTに変えなければネット接続ができなくなる、という事態だけは避けていただきたい、と。だって、今の世の中は優勝劣敗。「劣」は市場から退場しなければならなくなるんだよね、いずれ。

 フレー! フレー! KDDI!!

 

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