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 2008年6月24日 バカ騒ぎ

 ダビング10が来月4日から実施されると、今朝の新聞が報じた。著作権団体と機器メーカーが対立し、すったもんだを繰り返し、そのたびに新聞が報じてきた問題が決着したわけである。これで、北京五輪の前に、デジタル録画機器の売り上げ増が望めるらしい。景気の減速が懸念されている折から、目出度いことである。

 が、本当に目出度いのか?

 これまでは、録画機器の内蔵ハードディスクに録画した番組は、DVD-Rやブルーレイに1回だけコピーできた。コピーが終わるとハードディスクからは番組が消え、番組はDVD-Rやブルーレイにしか残らない。さらに、このDVD-Rやブルーレイからはコピーが出来ないという仕組みだった。コピーワンス、通称コピワンの規格である。

 では、ダビング10になると何が変わるのか。
 ハードディスクに録画した番組は、DVD-Rやブルーレイ10枚にコピーできる。9枚目のコピーまではハードディスクに同じ番組が残り、10枚目をコピーした時に消える。それだけの変化である。こうして作ったDVD-Rやブルーレイからはコピーが出来ないのはこれまでと同じだ。

 これって、新聞が何度も報じるほど画期的な変化なのか? 
 ユーザーの側に立って考えてみよう。

 ダビング10が始まると、番組を1つ録画すると、10枚のDVD-Rやブルーレイを作ることが出来るようになる。よし、10枚作ってやれ! と作ってみたところで、中身はまったく同じDVD-Rやブルーレイだ。一体何に使うのだろう? 
 10台のプレーヤーを買ってきて再生したところで、10のディスプレーに同じ番組が 映し出されるだけである。どんな使い道がある?

 これまで目にした中で唯一納得できたのは、コピー途中の事故対策である。現在のコピーワンスでは、コピー中に機器やディスクが原因で不具合が起きた場合、ハードディスクの番組は消えるし、ディスクも出来損ないとなる。つまり保存したかった番組が保存できないという事故になる。ダビング10になれば、そんな不具合が起きてもハードディスクに番組は残っているから、確実に番組を保存できる、というものだ。

 合理的ではある。機器やディスクに不具合はつきものだからだ。でも、たったそれだけのことでこれだけ大騒ぎをしなければならないのか? それだけのことなら、ダビング2、せいぜいダビング3にしておけばことは済む。

 たったそれだけのことがいつ実施されるかをメディアは追い掛け続けた。ご苦労さんである。でも、ダビング10が実施されるかされないかを彼らが追い続け、著作権団体と機器メーカーの対立を報じることに集中しすぎたため、見えなくなった物がある。
 ダビング10って、ユーザーの役に立つのか? 
 という本質的な問題である。

 私はDVDレコーダー、ブルーレイレコーダーの所有者だ。所有者として最も困るのは、録画済みのDVD-Rやブルーレイからは一切のコピーが出来ないことである。

 別に、何枚もコピーして他人に売り、金儲けをしようというのではない。
 まず、ディスクの経年劣化がある。DVD-Rは何年持つのか? ブルーレイディスクは何年間読み取れるのか? 4、5年ということはないだろう。10年も大丈夫かも知れない。だが、劣化は確実に進む。15年、20年、30年、と時間が経過すれば、いつかは記録面が剥離したり、保護膜が濁ったりする劣化は必ず起きる。読み取りが不可能になれば、そこに記録した番組は永久に失われる。だから、読み取れなくなる前に新しいディスクにコピーしておかないと、せっかく保存してきた番組を永久に失うことになる。
 ところが、ダビング10の規格では、DVD-Rやブルーレイからは一切のコピーが出来ない。保存したくて録画した番組は、いずれ必ず失われてしまうのである。
 理不尽だ。

 さらに。
 記録媒体が時代とともに変わることは、我々が体験してきたことだ。ビデオテープに始まり、いつしかDVD-Rが主流となった。デジタルハイビジョン放送の開始とともに、デジタルビデオテープが生まれ、いまやすべてがブルーレイに変わろうとしている。とすれば、ブルーレイも、いずれは新しい記録媒体に取って代わられるはずである。その時、ブルーレイで保存している番組を、どうやって新しい媒体に移行したらいいのか? 私が、デジタルビデオテープからブルーレイへの移行に困っているのと同じことが、ブルーレイから次の媒体への移行段階で発生するのは火を見るより明らかなことなのだ。そして、保存していた番組は失われてしまう。

 断言する。ダビング10が始まっても、ユーザーのメリットは皆無である。

 ユーザーのメリットが皆無なのに、ダビング10の導入はどうしてこんな大騒ぎになったのか?
 以下は邪推である。

 著作権団体は、とにかく金の亡者だ。取れるところからはどこからでも金を取る。ダビング10? コピーワンスの10倍のディスクが出来るんだから、10倍の金をもらうのは当たり前じゃないの! 払うもの払わなきゃ、ダビング10なんて認められないわ!
 著作権保護の行きすぎは文化を潰す、などという発想のない人たちの集まりである。

 機器メーカーは、とにかく、評判の悪いコピーワンスを何とかしたかった。えっ、本質的な解決になっていない? いいんだよ、とにかく10倍になるんだから。それに、放送毎に同じ中身のブルーレイが10枚出来る。どう考えても、9枚は人様にあげるしか使い道はない。そうか、ブルーレイレコーダーが1台売れれば、これから売り出すブルーレイプレーヤーが9台売れなきゃコピーしたディスクの行き先がないわけだ。これって、プレーヤーの最高の販促になる……。

 騒ぎ回ったメディアは?
 いいんだよ、本質なんか考えなくても。とにかく世の中に波風が立つ。風が吹いた、波が立ったと騒ぎ回っていれば日々平穏に暮らして給料をもらえるんだから。下手に本質を考えたりすると、いっぱい敵を作りかねなからなぁ。

 本質を考えず、表面的なことに浮かれて騒ぎ回ることをバカ騒ぎという。

 だけどねえ、こんなことに血道を上げるって、ホントにバカだよね。世の中は
 求めよ さらば与えられん
 であって、ニーズのあるところ、必ずサービスが生まれるんだから。
 アナログ放送のコピーガードを外したいというニーズがあったから、「画像安定装置」という名のコピーキャンセラーが売られていて、我が家では必需品になっている。当然、ブルーレイをコピーしたいというニーズもあるから、6月5日の日誌で書いたような機器が市場に登場しているのだ。まだちょいと高いが、これが3万円から5万円にまで下がったら、確実にユーザーを掴む。
 
 所詮、技術ってのは、そんないたちごっこなのだ。それを知ってか知らずか、関係者の皆さん、利害が対立してまとまらんと騒ぎながら、でも何とかしなきゃ、ってんでダビング10の規格をおまとめになった。

 彼らは何のために騒いだのか? こういうのも、バカ騒ぎと呼んでいいんだろうな、きっと。

 

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