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 2008年3月4日 自動車保険

 知は力なりという。実感では、知は金である。

 私の自動車保険の更改期は、毎年3月1日である。今年も、年が明けると間もなく更新申込書が送られてきた。車を所有し、日常の用に供している以上、保険に加入するのは世の常識である。備えあれば憂いなし。当然のことながら、更新はしなければならない。

 と思って、書類を見ていた。補償内容は車両保険が免責ゼロの365万円、対人・対物は無制限、搭乗者傷害は1000万円、入院保険は日額1万5000円、通院補償は1万円。中身は前年と全く同じである。
 さて、保険料はいくら下がったろう? と思って該当欄を見た。

 私の車については、昨年1月、次女が左後部ドアをこする事故を起こしたことはご報告済みだ。その際、30万円を超えるという修理費を保険でまかなった。おかげで、昨年3月からの契約では等級が下がり、最高の20等級だったのが17等級に落ちた。保険料もその分増えた。
 あれから1年。安全の上にも安全を心掛け、娘たちにも厳しく申し渡し、無事故で乗り切った。これで等級は上がる。契約内容が同じである以上、保険料は下がる。それが常識である。
 さて、いくら下がったろう?

 前年の支払額は、毎月9070円だった。等級が上がったのだから、新年度は8000円台になっているはずである。
 該当欄を見た。
 9390円
 なんと、上がっているではないか! おいおい、計算間違いをしたのか、東京海上日動火災保険?

 直ちに問い合わせをした。

 「それは料率クラスが変わりましたので……」

 何それ? 

 「いや、だから等級が上がったわけでしょ? 上がったら保険料は下がるはずじゃない」

 「等級とは別に、車種毎の料率クラスというのがありまして、お客様がお乗りの車の料率クラスが1つ悪くなったので保険料が上がったのでして……」

 彼の話を総合すると、こういうことらしい。
 私の車は、世に出てまだ2年足らずの新型車である。新型車の料率クラスは5から始まる。想定事故率は80数%で、同型車の事故率が20ポイント変動すると、料率がワンランク変わる。業界全体で統計を取っているのだそうだ。

 「お客様がお乗りの車の直近の事故率は100%を超えております。20ポイント以上悪くなったため、料率クラスが1つ悪い6になったということでございまして」
 
 話は分かった。が、分かることと納得することとは別の心理過程である。ふと思い出して、柴田さんにメールを入れた。フロントページからリンクを張っている「しばた新聞」をお読みいただいている方にはお分かりだろうが、柴田さんは保険屋さんなのである。納得いかないこことについては、専門家にセカンドオピニオンを求る。これも常識である。

 お返事をいただいて、これは受け入れざるを得ないと思うに至った。私にそう思わせるだけでも、さすが専門家である。だが、専門家とはセカンドオピニオンを述べるだけの存在ではない。新しい提案をするのも専門家の役割である。柴田さんはプロなのである。

 他者運転危険補償、はご存じですか?

 柴田さんのメールに、聞いたこともない日本語が登場した。私が理解した内容は次のようなものである。
 自動車保険には通常、他者運転危険補償がついている。これがついているから、例えば私が他人の車を運転して事故を起こした場合、私の保険で事故の補償ができる。
 言い換えれば、私の車を運転する人間が入っている自動車保険にこの項目があれば、私の保険は、私が運転した場合だけに制限することができる。事故が起きた場合は、運転者の保険でまかなえるからである。そうすれば、保険料はずっと安くなる。
 そうなのである。私の保険は、時折私の車を運転する2人の娘のために、夫婦限定にもしていない。年齢条件も26歳までカバーしている。その分割高なのである。
 そうか、そんないい制度がビルトインされているのか。これを活用すれば、保険料が下がるではないか! さすがだよ、柴田さん!!

 家を出た2人の娘に確認した。保険会社に問い合わせたところ、確かにそのような保証が付いているのだという。私は、東京海上日動火災保険を呼んだ。

 「という補償があるのだが、私はこれまで、1度も説明を受けた覚えがない。おかげで、結婚して家を出た娘が時折戻って運転するので、年齢条件もそれに合わせて26歳以上としてある。これを使えば、一番保険料の安い35歳以上にしていいんだね?」

 「いや、その、この補償は、例えば安堂さんがお友達の車を運転していて事故を起こされ、その車に着いている保険が使えない場合にのみ使うものでして、決して一般的な……」


 「だって、私の保険を35歳以上にすれば、もし私の車で娘が事故を起こした場合、私の保険は使えないのだから、娘たちの家庭で入っている保険で補償するんでしょ? そういうことだよね?」

 論理で相手の首根っこをぎゅっと掴み、押さえつける。知的生活をするものの醍醐味である。ああ、気持ちい〜い。
 脳内快感物質ドーパミンがどっと吹き出した。と同時に、ん? という疑問符が脳内に浮かんだ。ドーパミンは脳の活性を高める働きもするらしい。

 娘たちが入っている自動車保険は、それぞれに条件が違うはずだ。恐らく、私の入っている保険が補償内容は最も充実している。私の保険だと、車がパアなるような事故では365万円まで補償される。娘たちの保険では……。やばいか?!

 やばい時は、黙るに限る。調べて納得し、相手をねじ伏せる論理が見つかるまでは沈黙を決め込む。戦いの哲理である。

 一方の沈黙は、他方の饒舌を誘う。目の前に座る東京海上日動火災保険が、しゃべり始めた。

 「あのー、26歳以上に設定されているのは、結婚されて家を出られたお嬢さんが運転されるため、とおっしゃいましたね?」

 「はい、いいました。そうでなければ35歳以上にしています」

 「いや、家を出られたお子様たちが運転される場合は、年齢に関係なく補償するのですが」


 「えっ、どういうこと? 子どもたちは全員家を出ているけど、一番下がまだ27歳だから、26歳以上の保険にして、早く30歳になってくれないかと待っているんだけど。ま、その分、私も年を取ってしまうのが悔しいけどね」

 「私どもの保険では、同居されているご家族以外の方の事故は、年齢に関係なく補償することになっております」

 「ということは、娘の年齢は気にする必要がないってこと? 私の20歳の友達が私の車を運転して事故ってもいい、ってこと?」

 「はい」


 聞いてないよ、そんなこと!」

 直ちに年齢条件の引き上げを決断した。柴田さんにご教授頂いた他者運転危険補償については、娘たちの保険条件に不安があったため、今回は導入を見送った。
 月々の保険料は8340円に下がった。差額1050円。年額にすると1万2600円である。
 知は金である。

 同時に、大事なことに気が付いた。私はこれまで、保険料を払いすぎていた!

 「ってことになるよね。どうしてくれるの?」

 「いや、それは、お客様の方から、保険の条件に変更があった時はご申請頂くことになっておりますので」

 「だって、そんな制度のことを知らないのに、申請なんかするはずないじゃないの」

 「いや、重傷事項説明書には記載しておりますが」


 「あんなもの誰が読むのよ。それに、年齢条件の話をする時に、結婚して出て行った娘が26歳になったので、なんてはなしたはずだし、時々しか戻ってこない娘の運転のために、保険料が高くなるもの不合理だなんてことも言った記憶がある。でも、何も教えてもらえなかったよ。おかしいじゃないの」

 「はあ……」


 東京海上日動火災保険君は、会社に戻って協議する、と言い残して去った。告知義務を怠った。この1点で、保険会社は取りすぎ分を返してくれるはずである。連絡を待っている。顛末は、そのうち報告することになろう。
 念のためだが、コーヒー代は私が払った
 やはり、知は金でなのである。コーヒー代などものの数ではない。

 だが、である。保険会社とは、加入者に有利になること、保険料が安くなることについては積極的には説明してくれないものらしい。
 念のために「トータルアシスト パッとナットク」というガイドブックを開いてみた。
 あった、大きな見出しで「他人のお車を運転中は?」とあり、サブ見出しは「他者運転危険補償特約=自動セット」。「ご契約のトータルアシストから優先払いします」と説明がついている。
 おいおい、東京海上日動火災保険君は最後の切り札的な説明をしていたが、優先払い、我が社が率先して払います、ということになっているぞ! 君、君の商品のガイドブックぐらい読んでおきなさい!

 では、家を出た子どもの件は?
 何度もひっくり返してやっと見つけた。「年齢条件別契約方式」の項である。欄外に小さな文字で、
 「トータルアシストは、同居のご家族以外の方が運転される場合は、ご契約の年齢条件にかかわらず補償します」
 と書いてあった。

 ふむ、いくら小さな活字とはいえ、読まなかった私にも手落ちがあった、と反論されるかな? 
 念のために「ご契約内容の変更が必要な場合」のページを開いた。4つのケースが書いてある。

 ・お子様が免許を取ってご契約の車に乗るようになった。
 ・新しいお車に買い換えた。
 ・お車を他人に譲った(廃車した)。しばらくお車に乗る予定はない。
 ・お車の使用目的が変わった。


 敬語の使い方がでたらめだが、まあ、それは大目に見よう。でも、子どもが別居した場合、というケースはどこに書いてある? 
 やっぱり、私に落ち度はない。いや、例えここに書いてあったとしても、そもそも、こんな冊子、今回のようなケースがない限りは見るはずはないじゃないか!

 保険会社から身を守るためには、防衛をしなければならない。
 やはり
 知は力なり、知は金なり、なのである。

 皆様もご用心召されよ。

 

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