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 2008年2月27日 指名手配

 指名手配を受けた。昨夜のことである。

 昨夜は「小菊」に出かけた。職場が原宿ではなくなったため、かつてのような頻度では顔を出さなくなったが、良き友と酒を飲むには「小菊」に限る。現代社会の常識を、私はいまでも墨守する。
 連れは、デジキャス時代の同僚で、「らかす」にも数回登場したH、それにIT関係の会社を経営するS。3人連れである。途中から、某国営放送に勤務するY氏も乱入した。Y氏は、デジキャス時代の取引先であった。

 気の合う仲間が、美味い魚を頬張りながら、美味い酒「湊屋藤助」をグビグビ行く。楽しくないわけがない。
 確か10時頃にお開きになった。コートを羽織り、カバンを肩に提げて出た。雨だった。
 新橋に戻るS氏は自分で車を拾い、車中の人となった。Y氏も、記憶ははっきりしないが自ら帰途についた。私はH氏と車に乗った。H氏の自宅は「小菊」から近い。東京の環状線の中で1戸建ての家に住むという反人民的な暮らしを楽しむ。そこまで彼を送り、私はそのまま帰る。反人民的な暮らしをしている男を、何故私がお送りしなければならないのかは不明だが、デジキャス時代からの習慣である。革命が起きれば、反人民分子として粛正の対象になるはずである。

 タクシーが首都高速に乗り、霞ヶ関を過ぎたあたりにだった。携帯電話が鳴った。ディスプレーの表示を見るとと息子からである。こんな時間に電話をしてくるとは、珍しいこともあるものだ。また何かトラブルか? こいつ、トラブルメーカーだからなあ。今度は何だ? が、こんな時間に電話をかけてくるほどの緊急事態か?

 「お父さん、『小菊』でカバン間違えなかった? いま女将さんから俺に電話があってさ」

 カバン? 私のカバンは、いま、このタクシーの後部座席に私とともにある。黒い、布製の、肩掛けカバンである。毎日使っている。見慣れた古カバンである。これが、私のではない? そんなバカな。

 念のために手に取った。言われてみれば、いつもより膨らんでいるように見える。あ、そうだ。小菊で手に取った時、いつもより膨らんでいるなあと思ったんだ。でも、今日は文庫本を4冊買って中に入れたから膨らんでいてもおかしくないか、と思い直したんだ。これが、私のカバンではない?
 酔眼で、もう一度見直した。言われてみれば、横にチャックで開閉するポケットがある。確か、私のカバンにはない……。

 「わかった。これから『小菊』に戻る」

 トラブルメーカーは私であった。

 「小菊」に電話をして、直ちに引き返すことを告げた。ついでに、カバンが無くて途方に暮れている被害者には、私のコストで酒を出すように頼んだ。

 電話を切ってすぐだった。また電話が鳴る。妻である。何の用だ?

 「カバン間違えたんだって? 『小菊』の女将さんから電話があったわよ。何してんの? 飲み過ぎたんじゃない? それとも惚けてきた? お客さんが困ってるんだって」

 このような時の我妻は情け容赦がない。日頃の鬱憤をこの一瞬に解消しようと、機銃弾を撃ちまくる。私には身を守る術がない。

 「いま、『小菊』に向かっているところだ」

 短く答えて電話を切った。
 私は指名手配されていたのである。

 『小菊』に着いた。丁重に謝罪をしてカバンをお渡ししたのは言うまでもない。再び飲みながら、しばらく雑談して帰途についた。

 帰宅すると、珍しく妻が起きて待っていた。指名手配に係わったことで興奮したらしい。興奮ついでに、またぐだぐだ言い始めた。幸い、私は酔いが回っていた。右から左に話を聞き流し、布団に入った。すぐに寝入った。
 そのころには、妻も眠りについていたはずである。
 指名手配犯が逃げ回るテレビドラマ、リチャード・キンブルの「逃亡者」の夢でも見たのではなかろうか……。

 今日は、新しいことを試みる。1日分の日誌をテーマ毎に書き分けるのである。それだけ話題が多岐にわたり、分け書きした方が読みやすいだろうと考えてのことである。
 ここまでお読み頂いた方は、必ず下の「次の日誌を読む」ボタンをクリックして頂きたい。私は、その価値があると信ずる。
 当てがはずれたら、ごめんなさい、と先に書いておこうかな?

 

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