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 2007年9月27日 腫れ目

 6時15分に目覚めた。いつものように愛犬「リン」を連れて朝の散歩に出かけ、戻って朝食、続いてシャワーを浴びた。
 どこでもそうだろうが、我が家にも浴室には鏡がある。覗き込んだ。瞼が腫れぼったい。両の瞼がむくんで垂れ下がり、それでなくても小さな目をさらに小さくしている。
 いや、小さな目との付き合いは生まれてこの方のことだ。もうすっかり慣れた。というか、めた。

 しかし、腫れぼったい瞼をした鏡の中にある顔は、どう見ても悪人面である。こんな顔をした男とすれ違ったら、私は全身の筋肉を緊張させてまさかに備えるに違いない。さらに悪いことに、この顔は私の顔なのだ。

 腫れ目の原因ははっきりしている。寝過ぎ、である。なにしろ、昨夜は10時前に布団に入った。横になりながら本を読み始めたが、間もなく取り落としてしまった。眠りに引きずり込まれかけたのである。読書を諦めて枕元のライトを消した。気が付いたら朝だった。8時間15分の熟睡である。
 寝不足が美容の大敵であるのと同じように、寝過ぎも美容の大敵であるらしい。

 

 

(後日譚)
この本の続きを今朝読み始めた。話がつながらない。
「そうか、半分寝ながら呼んでいたからか」
前のページに戻った。理解できない。何とか話の筋を掴むまでに、8ページ戻った。何のことはない。昨夜布団で読んだと思った分は全く頭に残っていなかった。

 

 人前に悪人顔をさらすリスクを冒してまで、何故私は寝過ぎたのか? これも理由ははっきりしている。前日の寝不足だ。

 25日夕、少し確認したいことがあって先輩が務める銀座のオフィスに出向いた。悪い予感はあった。予感というより確信であった。

 「ああ、いいよ。ところで安堂君、今日は暇なのか?」

訪ねていってもよいか、という問い合わせの電話に、先輩がそう答えたのだ。今日は暇? 2つ3つ確認したいことがあるだけなのに、今日は暇?
 手に取るように先輩の思いが分かった。私と飲みたいのである。

 先方に着いたのは午後5時。蒸し暑い中を歩いたので全身から汗が噴き出していた。

 「どこか涼しい部屋はないですか?」

 思わず口にした言葉を、先輩が引き取った。

 「分かった。涼しいところに行こう。さあ、出かけるぞ」

 午後5時過ぎである。銀座のバーである。驚いたことに、先客がいた。カウンターに泊まってグラスを傾けているサラリーマン風の中年男性、バーのマダムらしき女性を引き連れ、この蒸し暑さの中で、いかにも金のかかった細身の洒落たスーツ、ネクタイ、それに恐らくイタリア製の靴で着飾り、カネの臭いをプンプンさせているバブル紳士。

 「おいおい、あんたら仕事はどうしたの? まだ5時過ぎだぜ。あんたの会社は大丈夫なのか?」

 という言葉が脳裏を駆けめぐった。
 待て、俺も彼らと同じだ、と気が付いて、駆けめぐっていた言葉を消しゴムで消した。
 生ビールを3杯飲んだ。

 「安堂君、少し食べに行くか」

 やはり、先輩はこれだけで解放する気はないらしい。銀座の路地裏にある小料理屋で、日本酒、焼酎と杯を重ねた。
 最近の私は、この店を出ればお開きである。2次会に足を向ける習慣はほとんど消え失せた。
 先輩からは消え失せていなかった。

 「是非、君に紹介したいいい店があるんだよ」

 近くのビルにあるクラブだった。ウイスキーの水割りを数杯飲んだ。

 「安堂君、もう1軒だけ付き合ってくれる?」

 5分ほど離れたビルの階段を上り、重いドアを押した。この店は知ってる。確か、この先輩に連れられてきた店だ。
 いつしか、ほかの客がすべて帰った。我々はまだ水割りを飲んでいた。こうなれば、毒を食らわば皿まで、である。もう歯止めはきかない。
 この店を出たのは何時だったろう? ほかの客の話に割り込み、進められるままにマイクを握った記憶はある。時計を見た記憶はない。

 店を出た。さあ、帰ろう。と先輩を見ると、ふらつきながら歩を進めている。

 「車を拾いましょうか?」

 「いいから、いいから」

 何がいいのかは不明であるに。だが、従う以外の選択肢はない。
 新橋駅近くのガード下に、ラーメンの屋台が見えた。

 「腹減ったなあ、安堂君」

 次に出てくる言葉は聞かなくても分かる。屋台のそばに置かれたテーブルに座った。先に女性が2人座っていた。

 「安堂君、分かる? こういう時はね、マナーがあるんだよ。彼女たちにビールをご馳走して我々が払う。おじさん、缶ビール4つ!」

 午後10時を過ぎての飲食はメタボリック症候群の原因になる。広く認められた理論である。だが、広く認められて理論がいつでも通用するとは限らない。
 もう焼け糞である。ビールを飲んだ。ラーメンを食った。ふらつく先輩を車に押し込んだ。その足で私も車に転がり込んだ。

 朦朧とした目で、茶の間の掛け時計を見上げた。2時半だった。すぐに布団に潜り込んだ。

 昨日、目が覚めると時計が7時を回ろうとしていた。ということは、睡眠時間4時間半。それに飲み過ぎの疲れが加わったのだろう。

 結論
 4時間半の睡眠時間は美容に悪い。
 8時間15分の睡眠時間も美容に悪い。


 とすると、最も美容にいい睡眠時間は、中を取った6時間22分30秒か?

 

 

 

(影の声)
最もよいのは飲み過ぎないことである。あ、これは陰の声ではなかった。の声であった。

 

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