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 2007年6月28日 シリーズ夏・その1 冷房設定温度

 何度も書いた記憶があるが、私は夏の暑さが大嫌いだ。

 冬の寒さなら、寒くなくなるまで服を着れば済む。それで足りなければカイロを使えば温かくなる。夕闇に包まれたら、鍋を囲んで熱燗を傾ける。体の芯から温まり、快適この上ない。

 だが、夏の暑さは何ともならない。暑いからと服を脱いでも、になるのが限度だ。裸になっても暑いのに変わりはない。おまけにそのまま外に出るわけにはいかない。一部には喜んでくれる人もいるかも知れないが、警察官に追い掛けられるのが関の山である。
 冬のカイロに代わる夏用グッズはいまだに開発されない。せいぜい扇子を持ち歩く程度だ。そんなもの、屁の突っ張りにもならない。研究者・開発者の怠慢はここに極まる。
 待ち遠しい夕闇はなかなか訪れず、暗くなったところで、飲めば涼しくなる酒、食べれば涼しくなる食料は、残念ながら世界中で発見されていない。探検家は何をしているのか!
 かくして、噴き出す汗を持てあましながら、夏の暑さを呪うばかりである。残念ながら、呪っても涼しくはならない。

 と泣き言を並べてみても、秋はなかなか近付いてきてくれない。嘆いてばかりでは気が滅入る。だったら、ひとつ、夏を弄んでやれ。
 というわけで、今回から「シリーズ夏」を始める。夏の暑さに打ち負かされない限りは、しばらく続くはずである。


 いま私は会社にいる。仕事の合間を見て、いや正確には、仕事よりホームページの更新を優先させて、簡単に言えば仕事をさぼって、この原稿を書いている。パソコンのモニター画面から視線を少しだけ上げる。温度計が目に入る。目盛りは28℃を指し示す。
 これって、変じゃないか?!

 仕事である以上、1日を快適に過ごせるなどということはない。嫌な上司もいる。やりたくない仕事もできる。その程度の常識は私もわきまえている。
 だが、少なくとも、快適になりうる環境を提供するのが会社の義務であるはずだ、という権利意識も身につけている。
 私は断言する。28℃は、快適に仕事をできる環境ではない。会社は義務を果たしていない!

 こんなことになったのは、地球環境問題とやらがクローズアップされたためである。大気中の二酸化炭素濃度を上げるな。エネルギー消費を控えよ。それが流行となった。会社は流行に弱い。おまけに、流行に乗った方がコストも削減できる。かくして、私は夏中、28℃の職場に身を置くことを余儀なくされた。

 そりゃあ私だって、地球の先行きが気にならないわけではない。なにしろ、二酸化炭素の排出量が増えていることが地球温暖化を招いているというのだから、暑さが嫌いな私は気にせざるを得ないのである。二酸化炭素の排出量と地球温暖化は無関係だという学説があることも知らないわけではない。だけど、二酸化炭素だけが増えて大気のバランスが壊れるのは好ましいことではないだろう。

 だが、なのである。二酸化炭素排出量を増やさないために冷房温度を28℃に設定するのはいかがなものか。

 私のいるビルは、1980年代の半ばにできた近代ビルだ。近代ビルの特徴は、エアーコンディショニングなしで人間が中で時を過ごすことが不可能なことである。ビルが高層化し、安全のため窓の開閉ができなくしたこと、エアーコンディショニングで快適な環境を提供することが近代化だと考えられたことに原因がある。

 そのようなビルで、すべての人が不快と感じる28℃に温度を設定するのは、どう考えても無理がある。これじゃ暑いと思っても、窓すら開けられないのである。

 ある会議で、

 「今年も、冷房温度は28℃ということにしました」

 と担当者が報告した。会社の理不尽な温度戦略にかねがね疑問を抱いていた私は、思わず発言した。

 「それって、変だよ」

 といっても、内務官僚である担当者はピンと来ない顔をしている。どうして変なのか、こいつにも分かるように説明する必要を感じた。

 「あなた、熱帯夜って知ってる? 最低気温が25℃以上の夜だよ。寝ようと思っても暑苦しくて寝られない。いいかい、ただ横になっているだけの人間でも25℃では暑苦しくて不快に感じる。ましてや、昼間の会社は寝に来るのではなく、働くために来る。28℃で働く気になると思う?」

 このように分かりやすい説明をしたにもかかわらず、担当者は理解ができなかったらしい。

 「いや、だからクールビズでノーネクタイでいいことにしたじゃありませんか」

 などととんちんかんな受け答えをした。
 こいつバカか。熱帯夜で寝苦しい思いをする時、誰がネクタイをしているか? 夏用のパジャマだけを身につけて、あるいはそれも我慢できずに裸になって汗をかいているのではないか? 
 それに、舐めてもらっては困る。私は誰にいわれるまでもなく、冬も原則ノーネクタイで出社する。冬でもクールビズを実行している男なのだ。28℃の環境で、律儀にネクタイを締めている、我が社にもたくさんいる変なサラリーマンではないのである。
 
 抵抗はした。だが、我が社の冷房温度は相変わらず28℃だ。力足らずである。

 だが……、暑い!

 

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