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 2006年10月4日 カルチェ・ラタン

 私には変な癖がある。
 常に10冊から20冊の未読本を手元に置いておかないと心が安まらない。
 なのに、手元にありながら、なかなか手をつけない本がある。好きな作家の本である。なんとなく、読んでしまうのがもったいなくて、ほかの本から先に読む。
 子供が、大好きな卵焼きを最後に食べるのと似ていないこともない。私の中に生き続ける幼児性なのだろうか。

 そんな本の1冊を読了した。佐藤賢一著、「カルチェ・ラタン」である。

 記憶によると、最初に読んだ佐藤賢一の本は「ジャガーになった男」だった。ん? と思い、「赤目のジャック」に手をつけたころには、かなりはまっていた。それから、「傭兵ピエール」「王妃の離婚」「カエサルを撃て」などを読破した。
 ヨーロッパの歴史を実に綿密に調べ、歴史的事実の中にフィクションを埋め込んでいく。衒学的ともいえる雰囲気の中で骨太のストーリーが展開し、読後感が実に清々しい。素晴らしい作家である。

 で、「カルチェ・ラタン」である。
 舞台は16世紀のパリ。イエズス会を創設したイニゴ・デ・ロヨラ、宗教改革の一方の雄であったジャン・カルヴァン、後に日本にやってくるフランシスコ・ザビエル、それにあのレオナルド・ダ・ヴィンチまで、世界史の教科書で出会った著名人が舞台の上で動き回る。それだけで、なんだか楽しくなる。
 主人公はパリ大学に通う学僧、ミシェル。トマス・アクィナスの再来といわれるほどの大天才である。30歳の男盛りで、見目は極めて麗しく、180cmの長身と相まってもてにもてる。そのためか、からきし女にだらしない。いや、本人によれば、極めた神学に従って選んだ生き方ということになる。南仏・コンドーム地方から伝わった豚の腸膜を使って子種をコントロール下に置き、まあ、安心して快楽を極める日々を続ける。男としては、殺したいほどに羨ましいヤツだ。
 そのミシェルの周囲で次々と殺人事件が続き、教え子でパリ夜警隊長のドニ・クルバンを助けながら解決していくのだが、事件の裏にはとんでもない淫祠邪教が潜んでいる。だから、事件を根底から解決するにあたって、なんだかよく分からない宗教論争まで登場し、まあ、波瀾万丈、面白いことこの上なしの作品に仕上がっている。

 その面白さはそれぞれ独自に味わって頂くとして、今回は、読み終えた方々の多くが

 「メモしておけばよかった」

  と後悔されるに違いない、この本の面白さの要因の1つを、私が成り代わってメモしておくことにした。

 マギステル・ミシェルの鉄則、その46:女には惚れるより、惚れさせろ。
 マギステル・ミシェルの鉄則、その37:独り暮らしの女を狙え
 マギステル・ミシェルの鉄則、その23:とにかく早く押し倒せ
 マギステル・ミシェルの鉄則、その58:女には仕事よりおまえの方が大事だといえ
 マギステル・ミシェルの鉄則、その42:それが不純な男でも女は経験者を好む
 マギステル・ミシェルの鉄則、その91:脱がせてみるまで、女の体を侮るな
 マギステル・ミシェルの鉄則、その62:努めて女の恋愛相談に乗れ
 マギステル・ミシェルの鉄則、その1:女は何度でも生まれ変われる


 さて、このマギステル・ミシェルの鉄則、登場順である。だからいくつまで続くのか分からない。1に始まって91はあるのだから、少なくとも91はあることになる。が、本に出てくるのは、上に書いた8つのみである。ひょっとしたら、見落としがあるかもしれないが……。

 荒唐無稽ともいえる。女の隙につけ込む卑劣なノウハウともいえる。だが、驚くべきは、「鉄則」1つずつに、ちゃんと納得できる理屈付けがされていることである。読み進むうちに、これほど深い真理があろうかとすら思えてくる。なるほど、なるほどとページをめくるうちに、物語はミシェルの快調な推理、論理、童貞であるクルバンの恋、初体験を交えながら快調なテンポで進む。こんな本が面白くないわけがない。

 「よし、今日から俺は、マギステル・ミシェルの鉄則を遵守する」

 この本を読み終えて、私は思いを固めた。今晩から、できることなら実践したい。特に、鉄則23あたりから……。この本を読まれた方の多くがそうであったと確信する。

 いかがですか? 集英社文庫で819円。あなたにも、1日も早くこの本をお読みいただいて、我々の仲間を増やしたいと願っております。よろしくお願いします。

 

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