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 2006年4月2日 池波正太郎の映画日記(講談社文庫)

 作家って、映画をどんな風に書くのだろう? そりゃあ、池波正太郎という人は、私は1冊も読んだ記憶がない作家だが、多くの人に評価されたから仕事を続けることができたはずだ。だとしたら、私が「らかす」で続けている「シネマらかす」の参考になりはしないか? 
 そんなスケベ心もあって買った本だ。
 結論から言おう。

 「???」

 これじゃあ、映画を書く参考どころか、映画を見る手引きにもなりはしない。そうか、いったん作家になっちまえば、これでも本になるわけね、今の世の中。

 例えばこんな具合だ。

 小品ながら、何ともいえぬ魅力をたたえた逸品だった。(中略)
 ジョージ・バーンズが演じる老人(神)が振り撒く笑いには高度のスピリットが躍動しており、老優バーンズの妙演は、この映画のテーマをビビッドに表現する。
 ゴッドに目をつけられたスーパー・マーケットの店員(カントリー・ウエスタン歌手のジョン・デンバー扮演)と、その家族の描写も面白い。

 「オー、ゴッド」という映画の紹介は、ほぼこれで尽きる。
 「何ともいえぬ魅力」、って、その魅力を何とかして伝えるのがライターじゃないの? それを何ともいえぬ、といわれたら、読んでる私はどうしたらいいのさ。
 「逸品」「高度のスピリットが躍動」「妙演」「ビビッドに表現」。こんなおどろおどろしい表現が連なり、最後に「面白い」。っていわれてもさあ……。ついて行けないんだよね。

 「シーウルフ」の紹介も似たような物だ。

 イギリス・ムード濃厚なサスペンスで、マクラグレン監督は悠々と、中老年のユーモアとペイソスを交えながら、手落ちなくストーリーを運ぶ。その描写に隙がなく、実に丹念な演出なのだが、こうした映画のおもしろさ、たのしさが、いまは次第にわからなくなってきつつあるのではないだろうか。
 G・ペック、デヴィッド・ニーヴン、トレバー・ハワードなどの老優たちを配してのサスペンスは、なかなか味わいが深いのだ。
 私はすっかり楽しんでしまった。

 まあ、楽しむのはかってだけどさ……。

 「ニューヨーク1997」では。

 架空のサスペンスながら、十六年後のニューヨークは、ほんとうに(こうなっているかもしれない……)という、われわれの予感が、さらに迫力を生むことになる。

 いったい、ニューヨークがどうなるという予感を「われわれ」が持っていたのかな。我々の中に、私は入っているんだろうか、いないんだろうか。私はいまだに、10年後のニューヨークはこうなるだろうという予感など持ち合わせてはいないのだが。

 と、まあ、全編こんな感じで映画を見たレポートが綴られる。足繁く「試写会」(当然、無料ですよね)に足を運んで映画を楽しんでいる作者の姿は、何となくわかるのだが、

 「そうか、よし、私もこの映画を見てみよう」

 という気には最後までならなかった。
 読者に何も伝えられないライターって、何? あ、そうか。これは「日記」だから、他の人が読むことはないという前提で、自分の備忘録として書かれた文なのか?

 読み終えて。
  ああ、無駄な時間を過ごしてしまった。
 買い物に行ったスーパーで古書市をやっていて、「映画日記」というタイトルに目がとまって、350円で買った本だから、まあ、いいか。

 

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