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 とことん合理主義 - 桝谷英哉さんと私 私   番外編 II :パワーアンプの製作 2


  P35-III の製作記を書き始めて、桝谷さんが書かれた「組立要領」を読み返してみた。用意周到な方である。というより、多分、たくさんの被害に直面されたのであろう。
 という思いがしたのは、こんな文章にぶつかったからだ。

 「こんな理由から、クリスキットP35-III の製作に関する説明は、クリスキットMark8またはMark8-Dを組み立てられた方々には不要と思われる部分の説明は省略してあります」

 「こんな理由」とは、この文章に先立つ部分すべてを指すのだろう。
 非常に良くできた文章だから、全文書き写すことにする。

 「パーツセットを開けたら、組立にかかる前に必ず読んでください。そして、この文章の意味がお判りにならない場合は、自作を諦めてヘルパーにご相談ください。出鱈目配線によるトラブルは修理不可能になる場合がよくあります。私も実際に何人か、物ごとを丁寧にやらないくせのある方々に接したことがありますが、こんな方々には、P35-III の製作はお勧めしません。電話や手紙で片方音が出ないが、何処か間違っているのでしょうなんて尋ねられても、貴方が何処を間違ったのかは、霊感師でも判らないことなのですから。
 機会あるごとに述べていますが、オーディオの音質は80%プリアンプによって決まります。これは過去21年間クリスキットを動かしてきた実績から完全に裏付けされています。クリスキットMark8またはMark8-Dを初めて組み立てられたか、ヘルパーに依頼して出来上がった時に、従来から使っておられた市販のインテグレイテッドアンプのAUX.端子または、自作、市販のパワーアンプにつないだ時、100%の方々が目から鱗が落ちたような驚きを経験されたと、愛用者カードに書いてこられます。
  一方、高級機と呼ばれている非常に高価な市販プリアンプコンポまたは、雑誌に音質抜群と書かれた製作記事を参考に、高価なパーツを買い集めてお作りになったプリアンプに、クリスキットのP35-III をつないでみたが、高音、低音の伸びが良くなった程度で、そんなに感激されなかったという実例が殆どです。折角高価な部品を使ってプリアンプの製作記事参考による自作をしたのだから、手放せないので、クリスキットのP35-III からクリスキットを手掛けたいと言われる気持ちも判らないではありませんが、事実、そんな方々はそれらのアンプが出来上がって、それから出た音に疑問を持たれたので、クリスキットのP35-III でおぎなえるかもとお考えになって、私どものパーツセットに興味をお持ちになったようです。その証拠に、若しその自作アンプに満足しておられたら、同じ設計者のパワーアンプをお作りになった筈です」

 つまり、まずMark8-Dを手に入れてから、P35-III を手掛けよということである。
 特に、自分で組み立てる場合は、この順序を守らなければ失敗する確率が高いということでもある。
 ふーむ、だとすると、ここで「誰でも作れるかもしれないP35-III 」なんてものを書くのは、桝谷さんの意向に反するのかもしれない。

 と疑問を持ちつつ、乗りかかった船だから、こぎ続けるしかないと考えるアンドレでありました。

 工程13

 ここから配線作業が始まる。電源部の配線はかなりの苦労が伴う。覚悟を固めて始めてほしい。
 最初は、先ほど取り付けたばかりの電解コンデンサ周りの配線だ。
 まず、コンデンサの極性を確認しておこう。4つのコンデンサは、下の写真のように置いたときに、上がプラス(足の根本が白)、下がマイナス(足の根本が黒)になる。
 確認作業が済んだら、一緒に入っている配線図を見ながら、いよいよ配線だ。

 作業は上から進めていこう。
 上部にある電解コンデンサのプラス側の配線は、赤いコードで行う。いや、何色でもいいのだが、とりあえず、ここは私の好みに従ってもらう。

 必要なのは、
 2つのコンデンサの足をつなぐ長さのコード、
 右側のコンデンサの足から、後ほど取り付ける4端子整流器のプラスの足に伸ばすコード、
 左側のコンデンサの足から、後ほどシャーシの上側に取り付ける2枚の信号基板へ伸びるコード、
 それに104Kのフィルムコンデンサ
 だ。
 ここで、転ばぬ先の杖。
 この、信号基板へ伸びる2本のコードは、コンデンサの足にハンダ付けしない方、つまり信号基板にハンダ付けする方の端は、まだ被覆をむいてはいけない。何故かは、あとでわかる仕組みになっている。とにかく、ここではむいてはいけない。

 茶色のフィルムコンデンサは、左の電解コンデンサのプラスとマイナスの足をブリッジするように設置する。つまり、2本あるリード線の1本を電解コンデンサのプラスに、もう一本をマイナスにハンダ付けするのである。ここはその準備作業だから、電解コンデンサの足にある穴に差し込んでおく。

 ということで、右と左のプラスの足を結ぶコードを渡し、右側の足からは整流器に伸びるコードが出る。左側の足からは、信号基板に伸びるコードが2本出る。

 写真で確認してほしいが、左側のプラスの足には、左側から2本、右側から1本の計3本のコードと、フィルムコンデンサのリード線をハンダ付けしなければならない。右側の足には、2本のコードをハンダ付けする。
 どちらの場合も、いわゆる天ぷらハンダになりやすい。特に左側が要注意だ。実に面倒なハンダ付けである。

 だから、ハンダ付けが終わったら、必ず全てのコード、コンデンサのリード線を引っ張ること。引っ張って確実にハンダ付けされていることを確認すること。この確認を怠ると、必ず泣きを見ることになる。

 終わったら、上の2つの電解コンデンサのマイナスの足の配線に進む。ここで使うコードは白が望ましい。 必要なのは、左右のマイナスの足を結ぶコード、右のマイナスの足から、ラグ端子に伸びるコード、右の足から、その下のコンデンサのプラスの足に伸びるコードだ。
 従って、左のコンデンサの足には、フィルムコンデンサのリード線と白いコードをハンダ付けする。右の足にはコード3本をハンダ付けする。ここも、終わったら引っ張ってハンダ付けを確認する。
 てな具合に、同梱されている配線図と下の写真を参考にして配線を進めていく。
 しつこいようだが、ハンダ付けが終わったら、必ずコード、リード線を力を込めて引っ張って、確実にハンダ付けされていることを確認すること。確認を怠ると、確実に泣きを見る。

 コンデンサ配線

 工程14

 電源スイッチの配線は、スイッチをシャーシに取り付ける前に済ませておかないと、大変苦労することになる。
 まずパイロットランプをシャーシに取り付ける。スイッチにハンダ付けしたあとでは、どんなに工夫してもシャーシには取り付けることはできない。  付属しているナットをゆるめてはずし、シャーシの穴を通して裏側からナットをはめて締め付ける。
 で、スイッチなのだが、4本の足が互い違いにはえている。このうち、まず端から近い2枚にまず配線する。  といってもわかりにくいかもしれない。スイッチを後ろから見ると長方形に見える。ここでは、その長方形の短い辺を「端」と呼んでいる。これでわかっていただけただろうか?

 ここにハンダ付けしなければならないのは、パイロットランプ、黄色いフィルムコンデンサ、そしてトランスとつなぐコードである。
 コードは実物にあたって長さを決め、両端の被覆を3mmほどむいておく。
 私は、スイッチの足にあいている穴に、まずコンデンサのリード線を差し込む。抜けないように差し込んだ先を曲げておくのはいうまでもない。
 次がパイロットランプのコードである。これも、1本ずつそれぞれの足の穴に差し込み、先を曲げる。
 最後にコードを差し込む。つまり、2本の足には、それぞれ3つのものが差し込まれた状態になる。この3つと足をハンダ付けして固定するわけだ。

 この作業も、一人ではなかなか難しい。ハンダごてをくっつけるとスイッチが逃げてしまい、悪くすると差し込んであったどれかが穴から抜け落ちる。もう一度やり直すと、次はまたどれかが抜け落ちるといった具合で、なかなかうまくいかない。
 誰かにスイッチをおさえてもらえれば簡単な作業なのだが、そうした助力が期待できない私は、すでに配線済みのコードにスイッチをひっかけるなどして、何とかこの作業を終えている。
 終わったら、引っ張ってちゃんと固定されているかどうかを確認するのは基本動作である。そのうえで、余分なコード、リード線はカットしておく。

 スイッチ配線

 次は、残った2本の足への配線である。足の1本からは、電源用ヒューズホルダーへ伸びるコードが出て行き、もう一方からはACアウトレットに伸びるコードが出る。それぞれの長さは、実物で測って欲しい。
 こちらは、1本の足に1本のコードをハンダ付けするのだから、先ほどよりも作業は簡単である。これも、作業終了後は必ずコードを引っ張ってハンダ付けがうまくいっていることを確認する。

 スイッチ配線2

 コードなどのハンダ付けが終わったら、電源スイッチをシャーシに取り付ける。
 電源スイッチの可動部分、つまりシーソーのように動くところを、シャーシにある電源スイッチ用の穴から外に出すのだが、ここにはスペーサーを噛ませなければならない。噛ませないと、スイッチが外に飛び出しすぎてみっともないことになる。
 電源スイッチ用の穴の横にあるネジ穴から長い方のビスを差し込み、シャーシの裏側部分では、まずこのビスにスペーサーを噛ませる。そのうえで、電源スイッチにあいているネジ止め用の穴にビスを通し、裏側からナットで止める。片方ずつやるとうまくいく。

 工程15

 ここまで来たら、4端子整流器をシャーシに取り付ける。1つの角だけがカットされた黒い板から、4本の足が出ているのが4端子整流器だ。
 シャーシの上から中ぐらいの長さのビスを差し込み、シャーシの裏側で4端子整流器の真ん中にあいている穴を通す。そのうえで、ナットで締め付ける。
 4端子整流器でカットされた角に立っている足はプラスと覚えておく。その対角線上にある足はマイナスである。なぜそうなのかはいったん置いておき、プラスがスイッチに近い場所に来るように止めると、あとの作業がやりやすいし、仕上がりが綺麗になる。

 スイッチから出ている4本のコードを配線してしまおう。
 ネオンランプ、コンデンサと一緒にハンダ付けしたコード2本を撚り、電源トランスの「100V」と書いてある端子に1本ずつハンダづけする。ここは交流電流が流れるので、どちらがどちらでもよい。
 残りの2本も撚り、短い方は電源用ヒューズホルダーの端子にハンダづけする。
 ヒューズホルダーのもう一方の端子には、ACアウトレットに届くコードをハンダ付けしておく。
 電源トランスの端子のうち、まだ配線されていない端子の配線もここで済ませる。配線されていないのは、「22V」と書いてある端子だ。
 ここから出たコードは、4端子整流器のプラスでもマイナスでもない2本の足 = 交流入力端子に行き着く。そのつもりで長さを決める。

 まず、トランスの「22V」の端子2枚に、「224K」のフィルムコンデンサをブリッジする。要は、コンデンサから出ている2本の足を、1本ずつトランスの端子に差し込む。そのうえで、先ほど用意した2本のコードをそれぞれの端子に差し込み、ハンダ付けしてしまう。

 最後に、4端子整流器の配線である。
 アルミニウム電解コンデンサの電源スイッチに近いところから、赤いコードが1本出ているはずだ。これが、4端子整流器のプラスの足に行く。同じく、トランスに近いところから出ているコード(私は黒いコードを使う)は4端子整流器のマイナスに行く。これで、4端子整流器の4本の足がすべて埋まることになる。

 4端子整流器にハンダ付けするため、4本のコードの端を、やや長めにむいておく。整流器の足の根元に巻き付けるためである。
 それぞれ所定の足に巻き付けたらハンダ付け作業に入るのだが、ここが、なかなかハンダが流れてくれない。必要な温度にまで上がるのにずいぶん時間がかかる。
 私が、電解コンデンサを飛ばしてしまったのは、このうちの1本の足のハンダ付けがうまくいってなかったためだ。飛ばしたあとでコードを引っ張ってみたら、1つだけ足のまわりをくるくる回ってしまった。
 何度も言う。私の失敗を他山の石として欲しい。決して真似をしないで欲しい
 目で見てハンダ付けができているように見えても、必ずコードを力を込めて引っ張って欲しい。私の失敗を繰り返さないための唯一の方策である。
 ここまでの作業が終わると、写真のようになる。

 電源配線

 このままでは、ちと見た目が悪い。少し格好をつけましょうということで、私は次の写真のようにコードを整えることにしている。
 同時に、4端子整流器の足を短く切り取る。「もったいない」とそのままにしておくと、裏蓋をつけたときにこの裏蓋と接触してショートし、とんでもない事故につながる。
 心を鬼にして、ばっさりと切り取る。

 最後に電源コードの配線が残った。
 プリアンプと同じなのだが、電源コードをACアウトレットの横にある穴から差し込み、コードの先を2つに割って一度だけ縛る。
 コードの先の被覆をむき、1本は電源スイッチから伸びてきているコードと一緒に、もう1本はヒューズホルダーから伸びてきているコードと一緒に、ACアウトレットの2本の端子にハンダ付けする。

 電源配線2

 これで電源部の配線は終わった。
 ちょっと原理を考えてみよう。
 目で見てわかるように、電源コードを通じて入ってきた交流電流がヒューズを介してスイッチに行き、スイッチがONになると、そこから電源トランスに達する。ここで電圧を下げられ、4端子整流器の交流入力端子に入って直流に変わり、直流に変えられて整流器のプラス、マイナスの足から出ていく。
 こうして、整流器のプラス、マイナスの足が、電池のプラス極、マイナス極と同じ働きをすることになる。

 工程16

 これは簡単な作業である。
 まず、スピーカーターミナルから始めよう。
 スピーカーターミナルは、外側の2つ、つまり赤いプラスチックが付いている方がプラス、内側の2つ、黒いプラスチックが付いているところがマイナスである。
 まずプラスから始めよう。必要なのは、ヒューズホルダーの上に出ている端子からターミナルまでのコード、ホルダーのお尻から出ている端子から、すぐ上にあるゴムブッシュのはまった穴を通って信号基板のSP+端子まで伸びるコードだ。信号基板にハンダづけするとき少したるませた方が見た目がいいので、その分長くしておく。もちろん左右の信号を扱うので2組必要だ。
 そのコードの用意ができたら、ハンダ付け→コードを引っ張って確認、である。
 マイナスは、スピーカー端子から同じ穴を通って直接信号基板のSP−端子まで伸びる。これもたるみの分を見込んで長めに。そしてハンダ付け→確認。

 入力配線1

 ここまで作業が進むと、次の写真のようになる。

 入力配線2

 次は信号入力ラインを配線しよう。
 これには、少し準備がいる。
 入力ラインは、ピンジャックから、シャーシのフロント(電源スイッチのある方)寄りにあるゴムブッシュをはめた穴を経てシャーシの上部に出て、信号基板の所定の場所まで伸びる。実物にあたって、この長さに合わせてコードを切る。アースラインも必要なので、同じ長さのアース用コード(白を使って欲しい)も用意する。
 実物にあたってもらえればお判りだが、右用と左用では長さが違う。それで全くかまわないのである。

 入力配線3

 コードが用意できたら、これに熱収縮チューブをかぶせなければならない。上の写真の下側にあるのがそのチューブだ。両端はコードが外に出なければならないことを計算して、チューブはコードより幾分短く切っておく。
 次は、2本のコードをチューブの中にくぐらせなければならない。結構コードが長いので、なかなかうまくいかない作業だ。
 私は、2本のコードを一緒に差し込んでどんどん中の方に送り込むのだが、必ず途中でどこかが引っかかり、送り込めなくなる。その際は、どちらか1本を何とか先に進め、それが止まったらもう1本を先に進め、と苦闘することになる。
 ま、こうして何とか収縮チューブをくぐったコードの先がチューブの外に出てきたらしめたものだ。
 次は、2本のコードの先端を揃え、信号基板に取り付ける側は1cmほど外に出す。そして、チューブを加熱する。すると、下の写真のようにチューブが収縮し始め、中に入った2本のコードを締め付ける。熱収縮チューブは、全部を収縮させた方が美しい。
 チューブを加熱するのに私が使うのは、使い捨てのライターだ。が、これはしばらく加熱していると、ライターの金属部分が手で持てないほど熱くなる。私は、3個ほどのライターを用意し、取り替えながら加熱する。
 私のように、喫煙という悪習となかなか縁が切れない意志の弱い男の、ほとんど唯一の取り柄が、自宅に複数の使い捨てライターを保管していることなのである。

 入力配線4

 ライターの火で熱している写真を撮りたかったが、どう考えても、一人で作業をするのは不可能である。私の左手はいま、被写体になっている。右手は当然ながらカメラを持っている。ライターを持つ手が、どう探してもないのである。神は、何故に人間を2本しか手のない生き物としてお造りになったのであろうか……。

 こうして入力用のコードの準備ができたら、ピンジャックにハンダ付けする。作業はホットピン(真ん中から出ているピン)から先にした方が楽である。その作業が終わったら、アースラインをアース端子にハンダづけする。当然、終わったら引っ張ってハンダ付けが完了したことを確認する。
 左右の配線が終わると、次の写真のようになる。

 入力配線5

 シャーシの裏側での配線作業の最後は、信号基板のアース端子に伸びるアースラインだ。見にくいかもしれないが、下の写真でいうと、上部の真ん中あたりに取り付けておいたラグ端子があるはずだ。ここに2本のアースラインをハンダ付けする。このコードはゴムブッシュのはまった穴からシャーシの上に出て、信号基板のGND端子につながる。そのつもりで長さを決めて欲しい。
 これも2本のコードの長さが異なるが、全く気にしなくていい。

 入力配線6

 工程17

 電源部の配線が終わっているので、ここで配線が完全だったかどうかを通電して点検する。最初の緊張の瞬間である。
 作業に入る前に、確認しておかなければならないことが2つある。
 1つ目は、アルミニウム電解コンデンサの極性が間違っていないかどうかを確かめることだ。桝谷さんによると、
 「(極性が)間違っていると、大爆発を起こします」
 幸いなことに、私はまだ大爆発に遭遇したことはない。
 2つ目は、ハンダ付けの確認である。すべてのポイントで、不完全なハンダ付けはないか? 不完全なところがあると、私のように、コンデンサを飛ばしてしまう恐れがある。

 さて、確認作業は済んだだろうか?

 これから通電に入る。
 先ほど、プラス30Vとマイナス30Vを基板に供給するコード(私の色の選択に従えば、赤と黒のコード)の先の被覆は、まだむいてはいけない、と書いた。それは、この確認作業があるためだ。
 通電すれば、当然、このコードにも電気が流れる。ひょっとして、裸になったコードがシャーシに触れるかもしれない。そうなると、何が起きるか?
 ショートである。電源スイッチを入れた瞬間に、本来は流れてはいけないルートで電気が流れる。これがショートである。
 そして、部品が壊れる。
 取り返しが付かない。

 これで理解していただけたと思う。
 そこで、念には念を入れて、絶対にショートという事故を起こさない態勢をとろう。
 赤と黒のコードの先を、ビニールテープで覆うのである。
 言うまでもないことだが、コードの被覆をむかなくても、芯線の一部は外に顔を出している。そう、切り口だ。
 ありそうにないことだが、この切り口に顔を覗かせている芯線が、何かのはずみでシャーシに触れないとも限らない。安全対策は2重、3重に施した方がよい。ビニールテープを使おう。

 すんだら、電源用のヒューズホルダーに2Aのヒューズを入れ、電源コードを近くにあるコンセントに差し込む。この時、アンプの電源スイッチは必ずオフにしておかねばならない。

 ここまで準備ができたらテスターを取り出していただこう。そして、DCV(直流電圧)を計れるようにする。  テスターのリード線に鰐口クリップをつけて、マイナスをシャーシのどこかに、プラスを4端子整流器のプラス端子につけてアンプの電源を入れる。
 テスターが30Vあたりを示したら合格。次にテスターのプラスのリード線を整流器のマイナス端子に付け、マイナス30Vになっていることを確認する。
 私がやる点検作業はこの程度なのだが、桝谷さんは、さらに6800μFコンデンサの電圧も測るよう勧めておられる。

 通電テスト

 すべてOKだったら、アンプの電源を落とす。しかし、それで終わりにしてはいけない。コンデンサには電気がたまっているので、この電気を抜いてやらないと、どこかでショートして部品を壊してしまう恐れがある。

 電気を抜くのは簡単だ。どこにも使わなかった2W20Ωのセメント抵抗があるはずだ。これで整流器のプラス端子とマイナス端子をつなぐ。自分の指を使って、セメント抵抗のリード線を押しつけるのである。
 テスターをつなぎっぱなしにしていると、30Vから徐々に電圧が下がり始め、やがて0Vになるのが目で確認できる。

 点検作業で30Vが出なかったら?
 あわてて電源を落とす。これが最初の行動だ。
 原因は?
 あなたは、どこかで配線間違いをしている。必ず間違っている。すでに部品を壊してしまったかもしれない。いずれにしても、何とかして間違っているところを発見するしかない。
 時間と根気が必要だろう。でも原因を作ったのはあなたなので、誰を恨むわけにもいかないのである。

 工程18

 信号基板からは、パワートランジスタのベース、エミッタ、コレクタにつながるコードと、温度補償ダイオードと結ぶコードが出ていく。それぞれの長さは、自分で現物にあたって欲しい。1枚の基板に8本のコードを埋め込む。
 プリアンプのときと同じ作業だ。従って、一人で作業をしなければならない場合は、次の写真のようなアクロバチックな工夫が必要となる。

 信号基板1

 すべてのコードを埋め込み終わると、次の写真のようになる。これで基板は完成した。

 信号基板2

 工程19

 長い方のビスを、基板の4隅にある穴の上から差し、スペーサーを噛ませてシャーシの穴に入れる。そしてシャーシの裏側からナットで止める。
 と書くと簡単なようだが、一人でやるとこれもやっかいな作業だ。
 私は、まず基板の同じ側にある2つの穴にビスを差し、ビスが横向きになるように基板を持ってスペーサーを噛ませ、シャーシも横に倒して、この2本のビスを何とかシャーシの穴に通してしまう。そのうえで、裏側からナットをはめ、はずれない程度に締めておく。
 次にシャーシを起こし、基板の残った2つの穴に上からビスを通し、シャーシと基板の間になんとかスペーサーを差し込む。あとは裏側からナットをはめ、先の2本と合わせてきっちり締め付ける。
 さあ、完成も近い。

 ほぼ完成

【初出2003年2月28
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