#80 チャイナ・シンドローム ―巨大 システムの暴走

 気にはなっていた。なにしろ、米国・ペンシルバニア州のスリーマイル島原子力発電所事故を予言した映画なのだ。我が取り柄は野次馬根性なのである。気にならないわけがない。

 なのに、映画館には行かなかった。ビデオもDVDも借りなかった。公開は1979年だから、28年間も見なかった。28年間とは、オギャアと生まれた女の赤ん坊が、おしめも取れ、ニキビの思春期も過ぎて匂い立つ、ふるいつきたくなるにまで成長する時間である。すべての女性がそうなるかという根元的な問題は、この際無視する。
 理想的に育つ女性なら、熟成を待って味わうに越したことはない。だがこの映画には、「華氏911」と同じように旬があった。米国での公開直後に直後に起きた事故を予言したのだから。なのに、なぜ見なかったのか?

 胡散臭かった。予言というのは胡散臭い。1999年7月に恐怖の大王が来るというノストラダムスの大予言。六星占術なるものを振りかざして様々な予言を振りまいてくれる細木数子。どれもこれも胡散臭い。ましてや、予言が当たったとなると、もっと胡散臭い。
 私は、知性を持って世に対峙する。知性は胡散臭い代物は避けよ、と告げるのである。

 ところが、WOWOWがオンエアした。

 「あれ、やるの。せっかくだから録画しておくか」

 知性とは、その程度の力しか持たない。かくして私は、28年もたって「チャイナ・シンドローム」を見た。これまで見なかったことを悔やんだ。

 原子力発電は怖い。広島に、長崎に、そして第5福竜丸に、残虐な爪痕を残した核分裂反応が炉内で起きるのだ。
 怖いが、私たちの暮らしの中にどっかと居座っている。増え続けるエネルギー需要を満たす手段がほかにないからだ。現代文明に背を向け、薪とローソクの暮らしを選ぶ人がどれほどいるだろう? 
 だが、放射能の研究でノーベル賞を受けたキュリー夫人は、放射能の影響による白血病で命を落とした。人類は、核分裂反応を本当に使いこなすことができるのか?

 ロサンゼルス郊外にあるカリフォルニア電力・ベンタナ原子力発電所は運転開始から4年、順調な操業を続けてきた。
 ある日、この一帯を大きな地震が襲う。地震対策を施すのは原子力発電所建設のイロハのイである。想定通り制御室で警報ブザーが鳴り響き、警報ランプが明滅した。タービン、発電機は自動的に停止、原子炉も緊急停止した。緊急事態発生時のフェール・セーフ機構はすべて正常に働いた。問題はない。あとは原子力発電システムの各部所に損傷はないかを手順通り確認し、問題がなければ運転を再開する。それで一件落着だ。
 炉内の圧力は正常。冷却水の循環ポンプも大丈夫だ。注水量は毎時200t。すべて順調だ。さあ、運転再開……。

 その時だった。制御室に再び警報音が鳴り響いた。炉内の水位を示す記録計の針が上昇し始めたのだ。ぐんぐん上った針は、やがて上限付近に張り付く。いかん、冷却水がオーバーフローする。制御室長のジャック・ゴデルは命じた。放水だ、14と15のバルブを開け!
 放水を始めた。なのに記録計の針はピクリとも動かない。何故下がらない?
 ジャックは考えた。放水量が足りないのか? もっと放水しろと指令を出しかけた。その時、室員の1人が叫んだ。

   “Hey,Jack! Look at this water level indicator. Water level is low.”
    (ジャック、こっちの水位計を見てみろ。滅茶苦茶低いぜ)

 えっ? 記録計の針は上限ギリギリの高水位を示しているぞ! なのに、水位計は危険領域に近い低水位?
 ジャックは混乱した。炉内の水はいま、どうなってるんだ? それが分からなければ、打つ手が決められないではないか!

 ジャックはハムレットだ。注水か、排水か。一刻を争う。だが、皆目見当がつかない。間違えれば、彼の生き甲斐であるベンタナ原子力発電所は多くの人の命を奪い、付近一帯に放射能をばらまき、数世代にわたって居住不可能な危険地帯にする。益獣が獰猛な怪獣に変身する。だが、どちらを選べば? 何かヒントはないか……。

 必死で考えた。考えを巡らすうちに、ふと思いついた。ひょっとして、この記録計……。
 記録計の窓を軽くコンコンと叩いてみた。針がスーッと下落した。ほんのちょっとしたバリが針に残っていたのか。それが計器のどこかに引っかっていた。思わず口走った。

   “Jesus Christ! ”
    (クソッ!)

 ジャックは神を罵った。水位は危険領域ギリギリの低さだ。これ以上下がれば炉心が剥き出しになる。剥き出しになれば核反応が暴走し、大量の熱が発生して炉を溶かし……。

   “ This is Jack Godell. We have a serious condition. Get everybody into the safety area and make sure that they stay there! ”
    (ジャック・ゴデルだ。緊急事態が発生した。全員を安全地帯に非難させてくれ)

 電話でそれだけ伝えると、注水を始めた。間に合ってくれ! 一度は罵った神に、今度は祈った。だが、水位は一向に上向かない。炉内の蒸気圧が高くて注水を妨げているのに違いない。炉内の蒸気を放出しろ! 微量の放射能が外部に出る危険は承知の上だ。炉心が剥き出しになるよりましだろう。ジャックは記録計の針を見つめ続けた……。

 映画はここまで20分ほど。全体から見ればプレリュードでしかない。だが、「チャイナ・シンドローム」のエッセンスはこの20分にある。

 原発には多くの人が危惧を持つ。だが、危惧しながらも、漠然とした信頼感を持っていないか? 原発は危険と隣り合わせであることは周知の事実である。だからこそ安全である、と我々は考えているのではないか?
 設計・製作をする重電機メーカー、施設を建設する建設会社、運用する電力会社、そこにいる専門家は、最先端の技術を注ぎ込み、通常の何倍もの神経を使って設計、製造、運用をしているに違いない。重大事故が起きれば、多大な被害をもたらす。何よりも、彼らは職を失ってしまう。だから、必死に安全確保策を講じているはずだ。そうだよ、人間は猿より進化している。衆知を集めれば、核分裂なんて制御できるさ……。

 私の中にもあった、そんな漠然とした安全神話が、この20分を見て吹っ飛んだ。

 記録計の針が引っかかった。恐らく数万点、いや数十万点ある原子力発電設備の部品の、たった1つの製造過程に、普通なら問題にならない手抜かりがあった。厳しいチェックにも引っかからない程度の傷だった。それが、まさかの時に、信じられない現象を引き起こし、原子炉内がブラックボックスと化す。炉心溶融が目の前に迫る。
 そうか。重大事故というのは、そんなちっぽけなことで起きるのか。
 
 思い起こせば、我々の日常には同じような危険が散在する。以下は私の体験だ。

  交差点で愛車のエンジンが突然止まった。キーをひねっても反応しない。買ってまだ4年目、走行距離は2万5000km あまり。ディーラーを呼んだ。プラグの不良だった。高速道路で起きてたら? ヤマの中だったら? 

 それから1ヶ月。今度は自宅近くの踏切の手前だった。一旦停止をした。左右を確認してアクセルを踏み込んだ。エンジンの回転が上がらない。クソッ、またかよ! 仕方なくそのままブレーキを離し、自宅までノロノロ走った。今度はアクセルセンサーが壊れていた。ノロノロ運転で踏切を横切っているところに電車が来ていたら? 

 いずれも小さな部品の不具合である。私は体験していないが、突然発火するテレビがあった。突然ブレーキがきかなくなる車もあった。複雑な機械群の中で生きる我々は、いつも危険のお隣さんなのだ。

 ヒトは道具を使う生き物として産声を上げた。厳しい生存競争の中で生き残る秘訣は強みを伸ばすことだ。ヒトは一貫してより便利な道具、より力強い道具、より多くのエネルギーを生み出す道具を作り出してきた。道具は機械となり、より複雑になった。
 原子力発電施設は、現代機械文明の頂点の1つだ。それが、ちっぽけな針一本で大事故に瀕する。複雑化したシステムは、世の中に多大な恩恵を与える。だが同時に、避けがたく脆弱さを併せ持つ。
 たった1本の針で、私は背筋が寒くなった。 その針は、我々の周りにいくらでもある。もちろん、稼働中の原子力発電所にもあるはずだからである。

 スリーマイル島の原子力発電所事故もほぼこの通りの手順で起きた。この原稿を書くためにウィキペディアで調べてみて知った。

 「初め二次冷却水の給水ポンプが故障で停まり蒸気発生器への二次冷却水の供給が滞ったため除熱が出来ないことになり、一次冷却系を含む炉心の圧力が上昇し加圧器逃し安全弁が開いた。このとき弁が開いたまま固着し圧力が下がってもなお弁が開いたままとなり、蒸気の形で大量の原子炉冷却材が失われていった。原子炉は自動的にスクラム(緊急時に制御棒を炉心に全部入れ、核反応を停止させる)し非常用炉心冷却装置(ECCS)が動作したが、すでに原子炉内の圧力が低下していて冷却水が沸騰しておりボイド(蒸気泡)が水位計に流入して水位を押し上げたため加圧器水位計が正しい水位を示さなかった。このため運転員が冷却水過剰と勘違いし、ECCSは手動で停止されてしまう。このあと一次系の給水ポンプも停止されてしまったため、結局2時間20分も開きっぱなしになっていた安全弁から500トンの冷却水が流出し、炉心上部3分の2が蒸気中にむき出しとなり、崩壊熱によって燃料棒が破損した」

 あらまあ。何と、私の背筋を寒くした「チャイナ・シンドローム」のプレリュード部分と同じではないか。制作陣が、原発の危険性を浮き上がらせるための、単なるプレリュードとしか考えなかったシーンが、現実を正確に予言した。こんなことは絶対に起きないよな、と考えたことが起きた。来るはずがないと思いながら、付き合いで1枚だけ買った馬券が万馬券に化けたようなものだ。

 違いといえば、現実の方が遙かに悲惨なことである。映画では、炉心溶融は一歩手前で食い止められた。ところがスリーマイル島では炉心が剥き出しになり、溶融した。いまでも62t の燃料が原子炉圧力容器の底にたまり、原子炉内には広島型原爆数百個分のストロンチウム、セシウムが残るそうである。

 後に続く後半部は通俗的だ。良心的技術者・ジャックが、安全よりカネを優先する電力会社の幹部どもと戦端を開き、思いも寄らない手で良心を貫き通す英雄物語である、

 緊急事態は去った。だがジャック頭にこびりついたものがある。揺れ、である。地震が治まって15秒後、制御卓に置いたマグカップの水面にさざ波が立っていたのだ。地震は終わっていた。では、何故揺れた?

 設備のどこかに不具合があるはずだ。ジャックは溶接部をチェックしたX線写真に不正があることを発見した。冷却水を循環させるポンプを覆うカバー部である。
 このままでの操業再開は危険だ。X線写真を撮り直す必要がある。だが、電力会社の幹部はジャックの訴えに一顧だにしない。
 写真を撮り直すには1500万ドルから2000万ドルかかる。それだけじゃない。その間、原子力発電所が止まる。1日あたり50万ドルの損失だ。それになあ、数週間後に新しい原子力発電所の建設に認可が降りる運びなんだよ。いま、既設の原発の安全性に危惧を持たれてみろ。認可が延びる。認可が1日遅れると49万ドルの損失だ。
 カネ、カネ、カネなのだ。

 真面目な技術者ジャックは、ここからスーパーマンになる。原発の安全は俺が守る。1人だけの戦いだ。ジャックは建設会社でX線写真を担当したロイスに会いに出かけ、言を左右にして逃げるロイスを追い詰める。

 

Jack:
Listen to me, Royce. We may have a serious problem and I don’t have time to go every one of those god-damned X-rays. I get a straight answer out oh you or else now. How many and which ones?
(いいか、ロイス。俺たちはひどくやっかいな立場にいる。そして俺には、あのくそったれ写真を全部点検している時間がない。あんたからか、ほかの誰かからか、正直な答えがいるんだ。ちゃんとチェックしたのは何カ所だ? それはどことどこだ?)
Royce:

I don’t remember.
(覚えてないよ)

 

 ジャックは決意を固めた。原子力規制委員会(NRC=Nuclear Regulatory Commission)に訴えてでも、発電所の操業を止める! 止めなければ危険なのだ!!
 だが、その時からジャックに尾行がつく。電力会社と建設会社にとって、ジャックはいまや危険分子なのだ。ジャックのBMW2002は追尾され、自宅も監視下に置かれた。

 あの地震の時、テレビ局の記者キンバリーと、フリーのカメラマン、リチャードがたまたま発電所を取材中だった。2人はプロである。ガラス越しに繰り広げられる制御室の騒ぎはただものではないと思った。一部始終を隠し撮りした。事故一歩手前の原子力発電所制御室の映像は大スクープだ。2人の意気は上がった。だが、その貴重なフィルムはお蔵入りとなる。電力会社の圧力だ。
 リチャードは怒り心頭に発した。テレビ局からフィルムを盗み出すと、NRCの公聴会場で専門家に見せた。フィルムが原発事故一歩手前を撮ったものだとの裏付けをとって圧力をぶち破るためである。

 原子力の技師がいった。

   “They might have close to exposing the core.”
    (炉心が露出しかかったんだ)

 物理学者ローウェルがつぶやく。

   “If that’s true, then we came very close to the china syndrome.”
    (それが本当なら、チャイナ・シンドローム一歩手前だった)

 2人はジャックの家に駆けつけた。あんたは嘘をついた。我々の取材に、たいしたことじゃなかったと答えてだました。現実は、炉心が剥き出しになる一歩手前だったじゃないか。

 

Jack:
We almost uncoverd the core. But we didn't uncover it. That's not the problem.
(確かに炉心は露出し賭けた。だが、防いだんだ。それは問題じゃない)
Richard:
If that's not the problem, what the hell is?
(だったら、何が問題なんだ?)
Jack:
I love the plant. That's my whole life.
(私は発電所を愛している。発電所は私の人生のすべてなんだ)
Richard:
What is the problem?
(何が問題なんだ?)
Jack:

The shadder. The vibration that I felt during the turbine trip. That bothered me.
(振動だ。タービン停止中に感じた揺れだよ。あいつが悩みの元なんだ)

 

 会社の監視で動けなくなったジャックは、原発の危険性を暴こうという2人のジャーナリストに賭けた。私には監視が着いている。君たちの手で、問題のX線写真を公聴会で公開してくれ。 原発の操業再開を先送りするんだ! 新しい原発から手抜き工事をなくすんだ!

 だが、敵はプロだった。X線写真を公聴会場まで運ぼうとしたリチャードの助手、ヘクターは途中で襲われ、写真を持ち去られる。
 ジャックは追い込まれた。こうなれば、自ら公聴会で証言するしかない。意を決して家を出たジャックは、だが執拗に尾行され、とうとうベンタナ原子力発電所に逃げ込まざるを得なくなった。もう公聴会には間に合わない。さて、どうする?

 これしか手がなかった。ジャックは制御室に入り、ガードマンの拳銃を奪って立てこもった。原発ジャック、である。そして、要求を出した。
 キンバリーとリチャードを呼べ。公聴会でするはずだった証言をここで実行する。ここからテレビで生中継するのだ。私が、直接世論に訴えかける。させなければ、バルブを開けて放射能を外に出す。そうすれば、この原発は土に埋めるしかなくなるぞ。

 事実を視聴者に知られては困る。ジャックを止めろ。会社はSWAT(特別機動隊)チームの出動まで要請する。SWATチームが一歩一歩制御室に迫る中、ジャックはテレビカメラの前で話し始めた。

   “I want you to know one thing. I don't want to hurt anybody. I'm not gonna try to contaminate the state of California. I just want you to……”
   (私は1つの事実を皆さんに知って頂きたいだけです。誰も傷つけるつもりはありません。放射能をカリフォルニア州に撒き散らすつもりもありません。私は……)

 後半部は、ドラマとしては確かに盛り上がる。でも、なかった方が良かった、と私は思う。悪の構図が、あまりにも図式的すぎる。

 原発の工事に手抜きがある。原発を運用する電力会社の幹部はカネの亡者だ。場合によっては暴力も使う。テレビ局は、大スポンサーからの圧力にはからっきし弱い。彼らは原発で事故が起き、放射能が広く飛散することなど意に介さない。倫理観も責任感もない虫けら以下の者どもである。
 ヒーローは、幹部に逆らってまで原発の安全を確保しようと苦悩するまじめな技術者。原発の危険性を世に訴えようとする良心的ジャーナリストがそれを助ける。 ヒーローは命を奪われるが、電力会社、建設会社の悪は万人の知るところとなる……。
 これって、

 「ふっふっふ、越後屋、おぬしも悪よのう」

 の世界である。あまりにも使い古された手法で、説得力に欠けるとは思いませんか?。

 ねえ、サラリーマンのあなた。あなたはカネの奴隷ですか? あなたの会社の幹部はカネの奴隷ですか? カネのためなら世の中に迷惑をかけるのもかまわず、おかしな業務命令を次々と出してきますか?

 私の会社の幹部には、

 馬鹿がいる。
 本当は馬鹿なのに、自分は頭がいいと誤解している哀れな人間がいる。
 経営とは何かがわかっていないのに、いっぱしの経営者であると思いこんでいる迷惑な人間がいる。
 判断ができず、仕事を渋滞させる人間がいる。
 上にごまをすることが仕事だと思いこんでいる人間がいる。

 実に様々な人間がいる。だが、カネに魂を売り渡してしまった人間に出会う機会は、それほど多くない。だから世の中は、おおむね大過なく動く。
 「チャイナ・シンドローム」の後半、あるいは本編は、あまりにも企業性悪のドグマにはまりすぎている。

 だから、怖くない。原発事故の原因が悪い人間の欲にあるとしたら、いつかは露見する。壁に耳あり、障子に目あり、なのだ。警察がある。検察がある。新聞やテレビもある。野党も、政権政党を攻撃するために様々な事実を摘発する。
 こうした社会的フェイルセーフ機能に、最近心強い新顔が登場した。内部告発である。牛肉ミンチ偽装のミートホープ、賞味期限改ざんなどの不二家、白い恋人、赤福、耐火ボードの耐火性能をごまかしたニチアス。どれもこれも、きっかけは内部告発だった。
 正義の人は、まだまだいるのである。
 世の中は良くできたもので、組織は必然的に不満分子を生む。不満分子は内部告発の温床である。
 これから、内部告発はますます増えるであろう。企業ができる悪には限りがあるのだ。
 
 だが、原因がシステム内部に潜在しているとしたら? 
 人間は必ずミスをする。だから、システムが複雑になればなるほど、2重、3重のフェイルセーフ機能を組み込んで安全を確保する。だが、どれほど知恵を絞ってフェイルセーフを作り上げても、事故はそれああざ笑うように起きる。
 2重、3重のフェイルセーフの網をかいくぐり、想定もしなかったわずかなミスが原因で巨大なシステムが暴走し始める。その方がはるかに現実的であり、根元的に恐ろしい。ちっぽけな針はどこにでもあるのだから。
 我々は、いやでも巨大システムと付き合わざるを得ない現代社会に生きているのである。

 「チャイナ・シンドローム」の制作陣は、どうしてプレリュードで描いた部分を主題に据えなかったのだろう?

 企業性悪説が世を席巻していたからか?
 経営者の悪をドラマに仕立て上げるのは簡単で、複雑な機械文明をドラマ化するのが難しいからか?

 いずれにしても、惜しい!
 と思う。

 

 【メモ】
チャイナ・シンドローム(THE CHINA SYNDROME)
 1979年制作、122分

監督:ジェームズ・ブリッジス James Bridges 
出演:ジェーン・フォンダ Jane Fonda=キンバリー・ウェルズ
   ジャック・レモン Jack Lemmon=ジャック・ゴデル
   マイケル・ダグラス Michael Douglas=リチャード・アダムス
   スコット・ブラディ Scott Brady=ハーマン・デ・ヤング
   ジェームズ・ハンプトン James Hampton=ビル・ギブソン


【初出2007年11月21日】
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